スペシャライズドが誇るE-MTB、Levo SL(リーヴォ SL)が第二世代へとフルモデルチェンジ。激しく移り変わるMTBスタンダードに対応したジオメトリー、パワフルな新型モーター、一新したサスペンション。小田原で開催された発表会の模様を通し、新型Levo SLを紹介します。



第二世代にモデルチェンジしたLevo SL(リーヴォ SL)。写真は「Turbo Levo SL Carbon」 photo:So Isobe

2019年のデビューから4年の時を経て、スペシャライズドが誇る軽量E-MTB「Levo SL(リーヴォ SL)」の次世代モデルがベールを脱いだ。公開に先駆け、4月半ばに神奈川県小田原市のMTBパークで行われた発表試乗会には、前々日に山梨を舞台にした「ソイルサーチング」に参加したマット・ハンターとそのクルーも合流。新型を華麗に乗りこなす彼らと共に走る、とても豪華な内容だ。

第二世代となるLevo SL。モデルチェンジにあたってありとあらゆる部分がリニューアルされているが、スペシャライズド曰く最も進んだのがジオメトリーだ。フロントセンターが長く、ヘッドアングルを寝かせた「スラック」ジオメトリーを投入し、それに伴いサスペンションなどを煮詰め「2023年のトレイルバイク」にふさわしい動きを叶えたという。

ジオメトリーにおける大きな変更点の一つとして、フロントホイール29インチ+リアホイール27.5インチの「マレット」仕様を前提としていることが挙げられる。大径フロントホイールで乗り越え性能を高め、小径リアホイールで機敏な動きを実現するシステムだが、Levo SLではパワフルなモーターアシストと組み合わせることで、先代以上に「よりスムーズに、よりたくさん下りを遊べる」トレイルE-MTBに生まれ変わった。

ヘッドアングルは63、64.25、65.5度と3種類に調整可能で、安定感を好むライダーに向けてリアはリアピボットのフリップチップ調整によって29erホイールも装着可能だ。

27.5インチのリアホイールを基準にしたリアユニット。トラベル量は150mm photo:So Isobe
フロントホイールは29インチ。トラベル量は160mmだ photo:So Isobe


ジオメトリーにはトレイルバイクの最新トレンドが詰め込まれた photo:So Isobe

さらに前後サスペンションも大きく変化した。160mmトラベルのフロントと組み合わせる、150mmトラベルのリアユニットはリザーバータンクを搭載する大型のものへと進化。リンケージもレバレッジレシオ(リアサスペンションの圧縮がリンケージを介すことで、どのくらいリアアクスルを上下させるかの比率)を低くすることで、今まで以上にサスペンションの動きを予測しやすく、高い推進力を生み出すことに成功しているという。

小型軽量を誇るスペシャライズド自慢のパワーユニットも進化した。先代「1.1」からのバージョンアップモデルとなる「Turbo SL1.2モーター」はトルク43%、パワーも33%アップと大幅な増強を達成。320Whの内蔵バッテリー自体は先代と共通だが、心配される容量不足に対してはモーター出力の微調整を可能にする「MicroTune」など独自の省エネ機能を投入し、エコモード使用時で最長5時間の航続可能時間をマーク。「ニーズの多い出力帯において、より長い航続可能距離を可能にしました」とスペシャライズドのプレスリリースには綴られている。160Whのレンジエクステンダーバッテリーをボトルケージに取り付ければ航続可能距離を50%延ばすことも可能だ。

大きな進化を遂げたモーターユニット。スペシャライズド・ジャパンの下松氏がプレゼンを進める photo:So Isobe
Turbo SL1.2モーターが搭載されるボトムブラケット部分。限りなくコンパクトだ photo:So Isobe


トルク43%、パワー33%アップを果たしたTurbo SL1.2モーター photo:So Isobe

アップデートが施された「MasterMind TCU」。1%刻みでのアシスト量調整が可能に photo:So Isobe

アシストコントロールの要となるヘッドチューブ内蔵式のディスプレイも「MasterMind TCU」へとアップデート。昨年夏にTurbo Kenevo SLに搭載されたJump Statsを採用し、ライド中や累積の「エアタイム(ジャンプでの滞空時間)」の把握と分析も可能になった。

Mission Controlアプリではアシストパワーやピークパワー、その他のチューニング機能でモーター特性のカスタマイズが可能で、モーターの出力とバッテリーの使用量を調節するSmart Control、システム全体を無効化してバイク盗難から守るTurbo System Lockなども投入されている。

発売されるのはハイエンドパーツを存分に投入した最高峰モデルのS-Works完成車2モデル(S-Works Turbo Levo SL LTD:198万円、S-Works Turbo Levo SL:192.5万円)と、「Turbo Levo SL Carbon(99万円)」の合計3モデル。

来日したマット・ハンター(左)と、クルーたち。全員がS-WORKSモデルのLevo SLに乗る photo:So Isobe

今回の発表会ではずらりと「Turbo Levo SL Carbon」試乗車が用意され、マットたちの美しい走りにため息をつきながら、各メディアスタッフは思い思いにフォレストバイクのコースを走ることができた。

新型Levo SLの重量は公表されなかったものの、スタッフに聞けば先代モデルとほぼ同じ。つまりCarbonグレードの完成車で18kg台とのことだが、ジオメトリーやサスペンション、重心バランスが煮詰められているせいか、コース上の凹凸を少し走っただけですぐに違いを感じることができた。とにかく走りが軽く、まるでアシスト無しのトレイルバイクに乗っているかのようなフィーリングなのだ。

激しめの凹凸もスルッと走りぬけ、連続コーナーの切り返しも早く、プッシュプルの動作に対しても格段に動きがいい。ジャンプした時に(MTB慣れしていない自分は少し飛ぶだけだけれど)ようやく滞空時間の短さで「あ、これE-MTBだったんだ」とようやく現実に戻れるくらい。もともとスペシャライズドのE-BIKEは軽さに定評があったものの、実際の重量はそのままに走りをここまで変えてきたことに、大いに驚かされた。

バンクを攻めるマット。最高のコースとバイクの走りに思わず笑顔 photo:So Isobe

大きなジャンプを決めるクルー。「E-BIKEだと意識せずにE-BIKEに乗れる」と言う photo:So Isobe

高さ2,3mもあるようなビッグジャンプを決めていたマット・ハンターに話を聞いたところ、やはり気に入ったのはサスペンションだったという。開発段階のテストバイクを受け取り、あえて説明を受けずに乗ったところ、激しめのトレイルでのスムーズな走りに大変驚かされたとのこと。

「とにかくラフな場面での安定感がお気に入りなんだ。モーターもずっと静かだし、STUMPJUMPER EVOのようなモダンなジオメトリー、それにマレット。E-BIKEだと意識せずにE-BIKEに乗れるのは、登りでも下りでも、あらゆる面で大きなメリットがあるよ。ジオメトリーもいろいろと調整ができるけど、僕はリアをショートにして乗るのが好みだね」

「モーターのパワーが上がったのはもちろん歓迎だけど、そもそも他のE-BIKEと比べて車重が軽いので、10%もアシストがあれば十分楽しめる。その上で1%刻みでアシスト調整ができるMicroTuneが入ったのはすごく良かった。今までは決まった数パターンしかなかったけれど、これならあらゆる乗り方や、路面に合わせてカスタマイズできるからね」。

E-BIKEというとついつい最大パワーで登りを楽しんでしまいがちだが、自分のスキルやトレイル状況に応じてアシスト量を細かくいじってみると「美味しいところ」が徐々に見えてくるもの。そして、ただでさえ走りが良い新型Levo SLであれば、マットたちが言うように+10%くらいのアシスト量でも登りの段差でつっかえることがなく、超スムーズな走りを楽しむことができたのだ。

ずらりと揃えられたTurbo Levo SL Carbon。この後全国の試乗会を回るという photo:So Isobe

新型Levo SLは、おそらく今現在最も「E-MTBだと意識せずに乗れるE-MTB」と言って過言ではないし、謳い文句の「究極のトレイルバイク」も言い過ぎではないと思う。登りの体力消費を気にすることなく一日中トレイルで遊べるのがE-MTB最大の長所だが、新型Levo SLならメンタル的にもフリーダムなライディングを楽しむことができるのだ。

メディア試乗会の翌日にはショップスタッフ向けの試乗会が開催され、聞くところによるとその走りに惚れ込んだ方々が(ショップ在庫ではなく)マイバイクとして購入を決めてしまったそう。その走りが気になる方は、その走りを体感したスタッフが在籍する全国の取り扱いショップに足を運んだり、今後予定されている試乗会に足を運ぶと良いだろう。きっと、この記事では書ききれないたくさんの魅力を話してくれる、あるいは体感できるだろうから。



S-Works Turbo Levo SL LTD
価格:¥1,980,000 (税込)
カラー:1色(Black Carbon / Smoke)
サイズ:S2、S3、S4
電動ワイヤレスで制御するRockshox Flight Attendant サスペンション搭載モデル
URL:https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/g/g96822-0202/

S-Works Turbo Levo SL
価格:¥1,925,000 (税込)
カラー(サイズ):3色:Gloss Rusted Red / Redwood / White Mountains(S2、S3、S4)、Gloss White Mountains / Gunmetal / Silver Dust /Satin Gunmetal / White Mountains(S2、S3)、Satin Carbon / Brushed Black Chrome Foil / Silver Dust(S2、S3、S4)
URL:https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/g/g96823-0002/

Turbo Levo SL Carbon
価格:¥990,000 (税込)
カラー(サイズ):3色:Gloss Blaze / Black / Silverdust(S1、S2、S3、S4、S5)、Satin Mystic Blue / Mystic Blue Metallic / Silver Dust(S1、S2、S3、S4)、Satin Doppio / Sand / Silver Dust(S1、S2、S3、S4、S5)
URL:https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/g/g96822-5201/