ホイールブランドの雄として高い知名度を誇るフレンチブランドのマヴィックから、ついにリリースされたフラッグシップ級のCOSMIC CARBON ULTIMATEをテスト。リム、スポーク、ハブシェルを全てカーボン素材とした究極のホイールの実力に迫る。



マヴィック COSMIC ULTIMATE 45 UST DISC

ホイールの歴史に名を刻む名品や、独創性に富むテクノロジーを数々開発し、リーディングカンパニーとして確かな地位を築いたマヴィック。数々のレーシングホイールを用意してきた中で、他に並ぶもののないフラッグシップモデルとしてラインアップしたモデルがCOSMIC CARBON ULTIMATEだ。

リムにとどまらず、スポーク、ハブシェルまでカーボン製とする究極のホイールは、プロ選手でもここぞという時に使用するスペシャルな決戦用ホイールとしてレーサーに愛されてきた。しかし、マヴィックが2021年にホイールラインアップを一新するタイミングでカタログからその姿を消し、コアなファンたちは新たなテクノロジーを採用した"ULTIMATE"が登場するのを心待ちにしてきた。

そして、2023年待望のCOSMIC ULTIMATEがラインアップに復活。もちろんリム、スポーク、ハブシェル全てがカーボン製で、ディスクブレーキやチューブレスタイヤに適合する現代のホイールとしてブラッシュアップが行われ、45mmハイトのリムで1,255gという軽量性を手に入れた。

空気を切り裂くような形状のカーボンスポーク

ハブシェルもカーボンとされている

ULTIMATE PERFECTIONをコンセプトに掲げる今作は軽量性と相反する剛性、強度、耐久性をも高いレベルで追求。5種類のカーボン素材を使うだけではなく、それぞれの素材に適した配置とレイアップを行うことで、UCIが定める基準より150%も過酷なテストに耐える強度を実現しているという。

NACAプロファイルに設計されたリムは風洞実験を経て生み出されている。さらにスポーク自体も特許を取得した楕円形とされているほか、フランジもフラットに作ることで風の流れを整え、エアロダイナミクスを向上させている。

一本一本手作業で製作されるワンピースのカーボンスポークも高い性能に貢献する。2本使えば自動車を持ち上げることのできる強度を持つスポークは、リムからハブフランジを経由し、反対側のリムまで到達する作り(R2Rテクノロジー)とされており、スポークテンションを150Nmに揃えることが可能となっている。ホイールアライメントを完璧に調整することができ、かつ素材や構造によるパワー伝達効率のアドバンテージは一般的な金属スポークをはるかに上回るという。

エアロダイナミクスを考慮したリムシェイプ

インナーニップルのFOREカーボンテクノロジーはエアロにも貢献する

リムにはFOREカーボンテクノロジーが採用されており、CNC加工と熱処理を施したアルミインサートを通じてスポークがリムへ固定される。FOREの特徴はスポークホールが存在しないリムを実現できることで、リムテープを使わずにチューブレスタイヤを運用することが可能になることと、それによってテープ分(60g相当)の軽量化につながること。1,255gという軽量ホイールにおいて60gの差は大きなアドバンテージだ。

究極のパーツで構成されるCOSMIC ULTIMATE 45を製作するために、マヴィックは特別な生産ラインを本社のラボに開設し、専門的な技術を持つ10名の職人の手によってハンドメイドされている。そして、1本を製作するのに8時間を要するのだとか。設計や素材だけでなく、製造工程すらも特別な究極なCOSMIC ULTIMATE 45をテストする。価格は572,000円(税込)。

–編集部インプレッション

非常に優れた剛性を備えている

剛性が高く、一言で表すならレーサー向けのホイールだ。車輪の軽さに起因するゼロスタートやスプリント時の加速のスムーズさや、優れたエアロダイナミクスによる巡航性の高さは万人が感じられる素晴らしさがありつつも、高い速度域からのダッシュなどで最も気持ちよく進ませるために必要なパワー領域が高めであることが、レーシングホイールという印象を際立たせる。

このホイールを加速させるスイートスポットのパワー領域を出すことができれば、ゼロスタートなどで見せた加速感とは異なる感触でスピードが伸びていく。その領域は体重60kgのライダーであれば、300W以上のパワーを出した時。その踏み込んだ状態では各社のフラッグシップモデルにはない加速感を与えてくる唯一無二のホイールという印象だ。

鋭い加速感が特徴的なCosmic Ultimate 45

剛性感はフルカーボンスポークという設計が大きな影響を与えている。バイクが左右に振れないようにペダリングを行うと非常に剛性が高いように感じるのだが、スプリントなどでホイールが左右に捩れるように走らせ、かつ先述のハイパワーを出すと一瞬だけしなやかさが顔を出す。そのわずかなしなりが特別な走行感を生み出しているようだ。

いずれの走らせ方でもペダリングパワーがロスすることなく推進力に変換されているため、ひと踏みごとに加速してくれるレスポンスの良さを感じられる。一方でソリッドな硬さがあり、ライドのペース配分を考慮せずに加速させ続けてしまうと、それなりに体力を消耗させてしまいそうだ。エアロを生かし、パワーをセーブする一定強度の踏み方を織り交ぜながら走らせると、レースの最終盤でも武器となってくれる。

また、内幅が19mmという設計も20〜24mmのワイドリムが多くなった現代においては若干狭め。ホイールの挙動も19Cのチューブラー対応ホイールのようにクイックで、コーナリングの侵入は非常にシャープなラインを描ける。わずかなハンドルや体重の掛け方を変えるだけで、ホイールが機敏に応えてくれるため、コーナー中にさらに切り込む動作も行える。

クイックなハンドリングが特徴的なCOSMIC ULTIMATE 45

加えて剛性が高いおかげで車輪がコーナー中にブレることなく、一枚板のような状態が保たれ、ライダーが思うラインをずっとトレースし続けられる。このホイールに適した走行ラインを習得でき、信頼できるタイヤを装着しておけばダウンヒルでもアドバンテージを得ることができるだろう。

エアロダイナミクス面も優れていると感じており、軽いホイールや40mm程度のリムハイトモデルでは失速感があるものも存在しているが、COSMICの場合はスピードが落ちにくく平地でも踏み直すことは少なかった。集団内にいれば尚更のことで巡航中に足を止めていてもついていける上に、スピードの上げ下げが発生したとしても持ち前の加速感でわずかに踏たすだけで集団内で力を使わずにポジショニングを行える。

超ド平坦のレースではこれ以上にリムハイトが高いモデルを選びたくなるかもしれないが、起伏があるコースであれば、ありとあらゆる状況に応えてくれるCOSMIC ULTIMATEの一択。自宅から街中を抜けて山岳地帯を攻めるコースを毎週末ライドする方にもおすすめだ。

様々なフラッグシップホイールをテストしてきた高木三千成がCOSMIC ULTIMATE 45 UST DISCを試す

インプレッション:高木三千成



マヴィック COSMIC ULTIMATE 45 UST DISC
リム高:45mm
素材:UD2カーボンファイバー100%
内幅:19mm
ETRTO:622×19TC
UST:フルカーボンテープレスチューブレス
Discブレーキ専用
スポーク素材:UDカーボンファイバー(ユニディレクショナルカーボンファイバー)
フロント&リア:R2R 10本(20アイレット)2クロス組
スポークテンション:150Nm
ハブボディー素材:2014アルミニウム&カーボンラミネート(フロント、リア)
アクスル:アルミニウム
フロント:クイックリリースと12mmx100mm
リア:クイックリリース、12mmx142mm及び12x135mmに対応
フリーホイール:インスタントドライブ360
ベアリング(F/R):QRMオート
重量:1,255g
価格:572,000円(税込)※専用ホイールバッグ付属
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