最大勾配15.6%の登りが勝負を分けたサントス・ツアー・ダウンアンダー第2ステージ。強豪クライマーで形成された小集団に食らいついたローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)が、地元アデレードで勝利を掴み取った。



スタート前にインタビューを受けるカレブ・ユアン(オーストラリアナショナルチーム) photo:CorVos

サントス・ツアー・ダウンアンダー2023第2ステージ image:Santos Tour Down Under
海辺の街ブライトンから沿岸と丘陵地帯を越え、南のヴィクターハーバーを目指すサントス・ツアー・ダウンアンダー第2ステージ。今大会最長距離である154.8kmコースには中盤に一つ、後半に一つの急勾配な登りがあるため獲得標高差は2,400mを上回る。真夏のオーストラリアにしては低めの気温17度と強風が予想されるなか、前日のステージで落車から集団復帰する際にチームカーを風よけに利用したとして失格処分が下ったジェームス・ノックス(イギリス、スーダル・クイックステップ)を除く、132名の選手がスタートを切った。

最初の中間スプリントをマルク・ブルステンガ(スペイン、トレック・セガフレード)が先頭通過した集団からは、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)とヨハン・ヤコブス(スイス、モビスター)が飛び出す。その2人を見送ったプロトンでは直後に横風による集団分断が発生。その結果マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)など有力選手を中心とする約30名の集団が形成された。

ジェイコやUAEチームエミレーツが牽引した先鋭集団は逃げを吸収しながら順調に突き進んだものの、残り80km過ぎで後方集団が追いつきプロトンは再び大きなひと塊へ。直後に36歳のベテラン、ドミトリー・グルズジェフ(カザフスタン、アスタナ・カザフスタン)が一人で逃げを試みるも成功せず、イネオス・グレナディアーズの牽引でこの日最後の登り「ネトル・ヒル(距離2.5km/平均勾配6.8%)」に突入した。

逃げを打ったマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)たち photo:CorVos

最大勾配15.6%の登りでは徐々に選手が脱落していくなか、優勝候補であるマシューズがメカトラでストップ。「良い位置にいたのだが、リスペクトを欠いた選手たちにあらゆる方向からぶつけられ、チェーンがフレームとフロントディレイラーの間に落ちてしまった」と憤りを顕にしたマシューズはプロトンから脱落し、ジェイコはサイモン・イェーツ(イギリス)に勝利を託すことになった。

この日最大の優勝候補が去ったメイン集団からは、勾配が最も厳しくなった区間でジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)がアタック。ストラバをキッカケにプロキャリアを築くヴァインの加速には、イェーツやローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)、ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)などが追従し、強力な5名が先頭集団を形成した。

一方リーダージャージを着るアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)が左太腿の痙攣のため遅れ、また各チームのエースが入った先頭集団をAG2Rシトロエンを除き積極的に追うチームは現れなかったため、勝負は先頭のイェーツたちに絞られた。

ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)のアタックをキッカケに形成された5名の集団 photo:CorVos

地元アデレードで勝利を挙げたローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

残り800mの右コーナーで最初に仕掛けたのは昨年のジロ・デ・イタリア覇者ヒンドレー。だが集団最後尾で脚を溜めていたデニスがその動きに反応し、残り300mからスプリントをかけ後方とギャップを生み出すことに成功する。そしてTT世界王者に2度輝く独走力を発揮したデニスが、そのまま地元アデレードで勝利を掴み取った。

「最終山岳でイェーツやヴァインを捉え、小集団のままフィニッシュラインにたどり着くとは思っていなかった。良い協力関係を築くことができ、最後は先頭でフィニッシュするチャンスを掴み取った。これ以上嬉しいことはない」とデニスは勝利を喜ぶ。初日プロローグは15位(17秒遅れ)と振るわなかったデニスだが、10秒のボーナスタイムを獲得したことにより総合首位に浮上。「僕はこのレースのおかげでプロになった。このあと何が起こる分からないが、このレースに恩返しをするために頑張りたい」と、2015年大会以来2度目の総合優勝に向けて意気込みを語った。

翌日の第3ステージはノーウッドからキャンベルタウンを目指す117km。スタート直後から平均9.2%のアシュトンを登り、フィニッシュ手前9kmからはタイトコーナーが連続するコークスクリュー(距離2.3km/平均9.2%/最大24.4%)が登場するため、総合優勝の行方に大きく左右するクイーンステージとなっている。

リーダージャージに袖を通したローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

サントス・ツアー・ダウンアンダー2023第2ステージ結果
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ) 4:00:40
2位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) +0:02
3位 マウロ・シュミット(スイス、スーダル・クイックステップ)
4位 サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)
5位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:05
6位 カレブ・ユアン(オーストラリアナショナルチーム) +0:11
7位 エミルス・リエピンシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
8位 コービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)
9位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
10位 ポール・ペンウェット(フランス、グルパマFDJ)
個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ) 7:44:41
2位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) +0:03
3位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) +0:12
4位 マウロ・シュミット(スイス、スーダル・クイックステップ) +0:13
5位 コービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック) +0:14
6位 ユーゴ・パージュ(フランス、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
7位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:15
8位 マリウス・マイヤーホーファー(ドイツ、チームDSM) +0:17
9位 ニキアス・アルント(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:19
10位 マイルズ・スコットソン(オーストラリア、グルパマFDJ) +0:20
その他の特別賞
ポイント賞 カレブ・ユアン(オーストラリアナショナルチーム)
山岳賞 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)
ヤングライダー賞 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)
チーム総合成績 アルペシン・ドゥクーニンク
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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