現役ラストイヤーのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)のロード世界選手権出場が危ぶまれている。ワールドチーム残留を争う所属チームによる、UCIポイント獲得を優先するための策が理由だ。



現在ブエルタ・ア・エスパーニャに出場しているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)現在ブエルタ・ア・エスパーニャに出場しているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:VueltaBurgos
これまで何度もロード世界選手権で表彰台を射止めたスペイン艦隊が、脆弱化の危機を帯びている。

ナショナルチームの監督であるパスクアル・モンパルレール氏が地元スペインメディアのインタビューに答え、メンバー入りを打診した選手のうち、2名(フアン・アユソとマルク・ソレル)からしか参加承諾を得られていないことを訴えた。2018年覇者アレハンドロ・バルベルデやエンリク・マス、アレクサンデル・アランブルといった、モビスターに所属する主力選手たちを招聘できないのだという。

モビスターが世界選手権への選手派遣に難色を示す理由は、現在チームが置かれたUCIワールドランキングにある。2020年から2022年までチームが獲得したUCIポイントの累計により、上位18位までのチームにワールドチームのライセンスが与えられるこの施策。現在モビスターは残留圏内の18位にいるものの、19位のロット・スーダルとの差は僅かだ。

つまり、モビスターはナショナルチームにメンバーを送って世界選手権を戦わせることよりも、同時期に欧州で開催されるレースでのポイント獲得を優先しようとしている。同様の理由でアルケア・サムシックが出場権のあったジロ・デ・イタリアの出場を回避した先例もある。また降格圏の20位にいるイスラエル・プレミアテックは、UCIポイント獲得のためにシーズン途中にバーレーン・ヴィクトリアスからディラン・トゥーンス(ベルギー)を獲得している。

UCIワールドランキング(2020〜2022.9.6)
17位 バイクエクスチェンジ・ジェイコ 14348
18位 モビスター 14215
19位 ロット・スーダル 13880
20位 イスラエル・プレミアテック 13298


オランダはファンデルプールを中心に豪華メンバーが集結

ツール後に出場したベルギーのワンデーレースで優勝したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)ツール後に出場したベルギーのワンデーレースで優勝したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:Makoto AYANO
一方オランダ自転車競技連合は9月5日、ロード世界選手権に出場する男子メンバーを各国に先んじて発表し、エースとしてツール・ド・フランスを途中棄権したマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)の出場を明らかにした。ナショナルチームの監督であるコース・ムレンハウト氏は「マチュー・ファンデルプールと、昨年2位に入ったディラン・ファンバーレが出場することを喜びに感じる」とコメント。

「今年のコースはまるでロンド・ファン・フラーンデレンとアムステルゴールドレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを混ぜたみたいな難易度の高いレイアウトだ。しかし我々にはどんな地形にも対応できるバランスの取れた選手が揃っている。自信と野心を持ってオーストラリアに乗り込むよ」と自信を伺わせた。

なお、8月16日に即時引退を発表したトム・デュムランの代役として、トレック・セガフレード所属のダーン・ホーレが選出されている。
ロード世界選手権2022 男子エリートロードレース出場メンバー
マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)
ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)
バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)
ダーン・ホーレ(トレック・セガフレード)
パスカル・エーンコーン(ユンボ・ヴィスマ)
ワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス)
ヤン・マース(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
タコ・ファンデルホールン(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
ロード世界選手権2022 男子エリート個人タイムトライアル出場メンバー
バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)
ダーン・ホーレ(トレック・セガフレード)
text:Sotaro.Arakawa