「今年は調子が悪く、自分の力を疑っていた。しかしそんな自分をこの勝利が黙らせた」とジロ8日目の勝者トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)は語る。美食の街ナポリを走り終えた選手たちの言葉を紹介します。



ステージ優勝:トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)

10年振りのジロ区間優勝を掴んだトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)10年振りのジロ区間優勝を掴んだトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:RCS Sport
大人数の集団にファンデルプールやギルマイなど良い選手が入り、全員が2人の動きをマークしていた。最後から2周目の急勾配区間でファンデルプールがアタックし、僕を含むチーム3人は遅れを取ってしまった。しかし合流を果たし、皆の注目がファンデルプール1人に集まっていることを利用し、アタックを決めたんだ。

最後の下りで彼ら(ファンデルプールやギルマイ)が追いついてくる思っていたが、意外にも僕たちは30秒のリードを保ち続けた。当初はハルム(ファンハウケ)が登りでアタックする作戦で、僕はそのアシストをしようと考えていた。しかし彼が脚が残っていないと言ってきたので「僕がスプリントで勝つから残り3kmを全力で牽いてくれ」と伝えたんだ。彼はその指示を忠実に従い、残り300mまで僕を運んでくれた。本当に感謝したい。とても良いチームプレイができた。

表彰台のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)を見守るチームメイト表彰台のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)を見守るチームメイト photo:RCS Sport
今日は僕向きのステージだと思っていた。アップダウンが連続する、まるでボルタ・ア・カタルーニャのバルセロナステージのようなレイアウトだった。体力を回復する暇もない代わりに、一度できた差を埋めることも難しいレイアウトだった。

10年前のステルヴィオステージを経て、再びジロで勝つことができるなんて信じられない。2週間前の体調は最悪で、その時の自分にジロで勝利すると言っても信じなかっただろう。それぐらいコンディションが悪かったんだ。体調不良や不運が重なり、例年のような走りが出来ていなかった。そんな中で掴んだこの勝利は、ステルヴィオ(10年のジロ)の時よりも特別な思いがするよ。

レース後のツイート

今年は僕の力を疑う人たちがいた。もう僕がレースで勝つことはないだろう、と。しかし今日、その中でも1番疑い深い人間を黙らせることができた。その人物とは自分自身。この脚の力を、僕自身が1番疑っていたんだ。だが今日の勝利によって、その疑念が誤りだったと証明することができた。

ステージ2位:ダヴィデ・ガッブロ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)

スプリントで惜しくも敗れたダヴィデ・ガッブロ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)スプリントで惜しくも敗れたダヴィデ・ガッブロ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ) photo:Bardiani-CSF-Faizanè
残り45km地点でファンデルプールが飛び出し、追いついたら自分がアタックしようと思っていた。そして僕たちは4人で先頭に出ることに成功したんだ。最後のスプリントはデヘントが単純に強かった。だがこの2位という結果にはとても満足しているよ。

チームは昨年、28歳の僕にジロデビューのチャンスを与えてくれた。それは自信となり、今日の結果はさらなる自信に繋がった。この後も僕に適したステージが待っている。また必ず挑戦したい。

ステージ3位:ホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター)

チームから唯一逃げに乗ったホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター)チームから唯一逃げに乗ったホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター) photo:Movistar Team
自分の力のマネージメントが難しい、タフな周回コースだった。約20名による大きな逃げ集団ができ、チームから最低でも1人は入っておきたかったので僕が動いた。最後は2人いるロット・スーダルが責任を持って牽引してくれた。僕はスプリントが得意な選手ではない。デヘントは強くついていくことすらできなかった。明日は身体の回復に努めるものの、僕本来の役割である総合リーダーのアシストも忘れてはいない。

ステージ5位:ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)

デヘントらを追うギルマイやファンデルプールだが、差は思うように縮まらないデヘントらを追うギルマイやファンデルプールだが、差は思うように縮まらない photo:CorVos
素晴らしい日だった!今日の自分の走りに満足しているよ。僕のグランツールデビューはまるで発見の旅。昨日の厳しいステージの翌日に、こんな走りができるなんて思いもしなかった。

スタート直後から最後までフルガスだった。最後は皆がファンデルプールと僕の動きを注視していたので、戦術的に難しかった。チームにまた良い結果を届けることができて嬉しいよ。それに加え大事なマリアチクラミーノに繋がるポイントも獲得できた。今日は良いチャンスを掴むことができ、この後の2週間でも沢山のチャンスが訪れることだろう。


マリアローザ:フアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)

スタート前におどけるマリアローザのフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード)スタート前におどけるマリアローザのフアン・ロペス(スペイン、トレック・セガフレード) photo:RCS Sport
ケムナがアタックしたらついていくと、レース前のミーティングで決めていた。今日も脚の調子は良く、追従することに何の障害もなかった。だがケムナのアタックでチームメイトが遅れ、チッコーネ自らコントロールに脚を使わなければならなかった。他のチームが助けてくれないのは当然のこと。マリアローザを守りたければ、自分たちのチームが牽引しなければならないんだ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos