東京都で最もメジャーなヒルクライムポイント”檜原都民の森”に集まったバイクのオーナーに突撃取材した最終回。締めくくって頂くのは、滅多にお目にかかることのできないSpeedvagenやグライペル限定モデルのファクターなど。4台のこだわりバイクを紹介します。



アレン・リンズクーグさん Speedvagen 2016

アレン・リンズクーグさん Speedvagen 2016アレン・リンズクーグさん Speedvagen 2016
鮮やかなスカイブルーのSpeedvagenで駆け上がってきたアレン・リンズクーグさん。アメリカ・ポートランドのフレームブランドの代表であるサッシャ・ホワイト氏が来日した2016年に、フィッティングと細かな要望を伝えて手に入れた1台なんだとか。

当時まだ珍しかったディスクブレーキモデルを選んだ理由を尋ねると「冬も走るし、雨の多い日本の気候に合っているので」と答えてくれたアレンさん。合理的なパーツセレクトの背景には、出身地であるアメリカ・ミネソタ州でプロロード選手として走っていた経験があるからだそう。メタリックブルーが差し色となっているクリスキングのスペーサーや高い振動吸収性をもつBERD Polylightスポークなど、こだわりの1台への愛は購入から6年たったいまも変わらないのだとか。

高い人気を誇ったVANILLAを経て、より多くのサイクリストに向けて作られたSPEEDVAGEN高い人気を誇ったVANILLAを経て、より多くのサイクリストに向けて作られたSPEEDVAGEN ブルーメタリックのクリスキングもアレンさんのチョイスブルーメタリックのクリスキングもアレンさんのチョイス
ブランド名であるVANILLA BICYCLESのVの文字がブランド名であるVANILLA BICYCLESのVの文字が 振動吸収に優れた繊維状のBERD Polylightスポーク振動吸収に優れた繊維状のBERD Polylightスポーク

「世界各国を自転車で走ってきましたが、ポットホール(路面のくぼみや穴)のない日本は路面は世界一ですね」と絶賛するアレンさん。ちなみに大学で教鞭を執る傍ら、在日15年の体験をまとめた著書が今年6月に出版されるのだそうです!



保坂真也さん CARRERA NITRO SL

保坂真也さん CARRERA NITRO SL保坂真也さん CARRERA NITRO SL
都民の森名物「三頭だんご」を2人仲良く食べていたところをお声掛けした保坂さんと根本さん(お邪魔しちゃってすみません!)。実は同じ会社(しかも同じ部署)の上司と部下で、元々ロードバイクが趣味だった保坂さんが部署での普及活動に成功し、同好会が誕生したのだとか。

その頼れるキャプテンである保坂さんが乗るのは、1989年創業のイタリアンブランド「CARRERA」だ。「人と被らないものが欲しくて」と選んだカーボンバイクのお気に入りは、赤が映えるスミスのバロックギア。保坂さんは「走ればなんでもいいのですけどね」と言いながらも、部下である根本さん「そーなんですか?!」とツッコまれていました笑。

大きめのサドルバックには部下根本さんのジャケットが入っている大きめのサドルバックには部下根本さんのジャケットが入っている クランク角度によってギヤ倍数が変化するスミスの Baroque-Gearクランク角度によってギヤ倍数が変化するスミスの Baroque-Gear

一際大きなサドルバックの中身は、都民の森初登頂だった根本さんのウィンドブレーカー。根本さんのアシストに徹する保坂さんですが、「職場で毎日顔を合わせているのに週末も誘っていいものか…。一緒にライドできて嬉しい反面、一抹の不安もありますよね」と本音も笑。職場の雰囲気の良さが、二人の和やかな雰囲気からよーく伝わってきました。羨ましい!

根本麻美さん ビアンキ ARIA

根本麻美さん ビアンキ ARIA根本麻美さん ビアンキ ARIA
ゴールデンウィークにサイクリスト憧れの地「雪の回廊(渋峠)」に挑むべく、その脚慣らしとして都民の森にやってきた根本さん。会社の同僚に誘われ(強引に引っ張られ)ると、数回のライドを経て即バイク購入に至ったほどロードバイクにどハマリしたのだとか。

1年ほど前に記念すべき1台目として購入したのはビアンキのエアロロード「ARIA」。マットな黒と控えめなチェレステカラーが気に入っているポイントというバイクには「単純にここ(リム)が高いホイールが欲しくて」とオランダのカーボンホイールブランド「SCOPE」のR4をチョイス。

その理由を尋ねると「さいたまディレーブがビアンキとスコープの組み合わせだと聞き、それなら速く走れるだろうと思い選びました」と話してくれました。

サドルバックもビアンキだサドルバックもビアンキだ ホイールはさいたまディレーブと同じスコープホイールはさいたまディレーブと同じスコープ

(ちなみに我がシクロワイアード編集部には、さいたまディレーブでキャプテンを務める高木が編集部員として在籍。隣のデスクで編集作業に勤しむ本人に伝えたところ、それはそれは喜んでおりました*その高木がインプレッションを担当したSCOPE R4のインプレッションはコチラから)。



瀬川祐太さん ファクター OSTRO VAM

瀬川祐太さん ファクター OSTRO VAM瀬川祐太さん ファクター OSTRO VAM
取材中サイクリストたちが取り囲むように眺めていたファクター OSTRO VAMは、瀬川祐太さんが今年3月に納車したばかりの1台。目の肥えたサイクリストたちが脚を止めるのは、それが世界に100台しかないGolliraエディションだからだ。

「最初はクロームカラーを買う予定が、その直前にこのモデルが発売されると聞き即座に注文しました」と選んだ2021年限りで現役から退いたアンドレ・グライペル(ドイツ)の引退記念限定モデル。トップチューブにはグライペルがこれまで袖を通したジャージがプリントされ、ダウンチューブの裏側にはプロキャリアで積み重ねた158勝が刻まれている。

トップチューブにはグライペルが現役時代に着用したジャージがプリントされているトップチューブにはグライペルが現役時代に着用したジャージがプリントされている グライペルの愛称であるゴリラのイラストグライペルの愛称であるゴリラのイラスト
SRAM REDのコンポーネントにクランクはローター Q-RingsSRAM REDのコンポーネントにクランクはローター Q-Rings ダウンチューブには積み上げた158勝が記載されているダウンチューブには積み上げた158勝が記載されている

ツール・ド・おきなわや主要ヒルクライムレースなど幅広いレースを走る瀬川さんは「30〜40km/hの高速域で脚を使わず進んでいきますね」とOSTRO VAMを高評価。Vol.1に登場した友人のじびさんが乗るONEから引き継がれた空力性能を元に、ワイドスタンスのフロントフォークやカムテール形状を採用したダウンチューブなど空力面が進化。それでいてフレーム重量僅か780g(54サイズで)と、レースの種類を選ばない究極のレーシングバイクだ。

今年の目標を尋ねると「昨年1分で逃した富士ヒルクライムのゴールドリングと、体重別で惜しくも2位だった箱根ヒルクライムのリベンジです」と語った瀬川さん。「たまたまレース会場で見かけた、スプリント勝利直後にガッツポーズする中学生に憧れて本格的なトレーニングを始めました」と言うように、このバイクに跨り決めるガッツポーズ、期待しています!

text:Sotaro.Arakawa
photo:So Isobe