2021年限りで現役を引退したトニー・マルティンが、2012年ロンドン五輪個人TTで獲得した銀メダルをチャリティオークションに出品した。「ウクライナの凄惨な光景を見て何か行動起こさねばと思った」とマルティンは語っている。



2012年ロンドンオリンピック男子個人タイムトライアルで銀メダルを獲得したトニー・マルティン(ドイツ)2012年ロンドンオリンピック男子個人タイムトライアルで銀メダルを獲得したトニー・マルティン(ドイツ) photo:CorVos
「TVには毎日のようにウクライナの悲惨な光景が映し出されている。僕はそれをただ家のソファーで見ていることに耐えられなくなったんだ。ウクライナの子どもたちや、その家族を守るため活動する人たちを心から尊敬する。そして僕もまた、微力ながら手助けがしたいと思った」とマルティンは自身のインスタグラムに投稿した。

「2012年のロンドン五輪で獲得した銀メダルをチャリティとして出品する。キャリア最高の記念品を手放す決断は簡単ではなかったが、全てを失った彼らに比べれば大したことではない。それよりも行動したい欲求が上回ったんだ。一刻も早くウクライナに平和と自由が訪れることを心の底から祈っている」。

これまで世界選手権個人TTでは3連覇を含む4度(2011~13、16年)、ドイツ国内選手権を10度制するなど無類の強さを誇ったマルティン。一方で競技だけでなく、アンチドーピングやレースの安全性を訴える発言も多く、その言動は自転車界を越え幅広い影響を与えてきた。

現地ドイツメディアの取材に対してマルティンは、出品に至った気持ちを「このメダルが人助けに繋がったと孫に話すことができたら、このメダルの価値は更に高まる。メダルは手放したとしても、思い出はずっと残り続けるのだからね」と話している。なおオークションで得られた売上はドイツの子ども支援団体であるRTLに寄付される。

マルティンの他にも自転車界におけるウクライナ支援への動きは広がっており、3月上旬にはトレック・セガフレードで監督を務めるウクライナ人のヤロスラフ・ポポヴィッチがトラックに医薬品などを詰めて母国へと向かった。また、ラクラン・モートン(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト)はドイツ・ミュンヘンからポーランドとウクライナの国境に向かうチャリティライドを敢行。目標金額を大幅に上回る20万ドル(約2,400万円)を集めることに成功している。

マルティンのオークション開始は4月9日の18時(CET)から。オークションサイトによるとメダルは箱付きで、状態は「美品」だという。



※その2週間後にドイツのダイエットサプリ会社FitLineが3.5万ユーロ(約478万円)で落札。その後メダルが同社社長の手によってマルティンの元に届けられた。(5月3日追記)

text:Sotaro.Arakawa

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