スイスの総合自転車ブランドBMCのグラベルバイク"URS"。オフロードを楽しめる走行性能を実現するべく、MTBで培ったテクノロジーを投入したグラベルバイクをインプレッション。



BMC URS FOURBMC URS FOUR photo:Makoto AYANO/cyclowired.jp
ロードではAG2Rシトロエン、MTBではアブソリュート・アブサロンにバイクを供給し、トップレースを走るスイスのBMC。バイク開発においてはImpec Labで研究されたアイデアをバイクに落とし込み、独創的なマシンを作り上げてきたブランドだ。

ロードでは現在まで続いているフラッグシップマシンTeammachine SLR01の初代が、カデル・エヴァンスのツール・ド・フランス総合優勝をサポート。タイムトライアルマシンの開発にも長けており、チームタイムトライアルではBMCファクトリーレーシングの世界選手権制覇に貢献した。ローハン・デニスが2015年にアワーレコードを更新した際に使用したのはImpec Labで再シミュレートされたTM01だったという。

MTTを組み込んだリア三角がURSの特徴だMTTを組み込んだリア三角がURSの特徴だ D型断面のシートポストも快適性に寄与するD型断面のシートポストも快適性に寄与する 非常にマッシブなフロントフォークがアセンブルされている非常にマッシブなフロントフォークがアセンブルされている


また、MTBではMTB XCOのレジェンドの一人であるジュリアン・アブサロンによる世界選手権、ワールドカップ総合優勝を支えている。常に世界の頂点を争うMTB XCO向けバイクの開発の中で、MTT(マイクロ・トラベル・テクノロジー)というリアバックのマイクロサスペンションシステムが生み出された。

ハードテールバイクのメリットである軽さを犠牲にせず、リアのトラクションやグリップ力を向上させるためのMTTは、近年盛り上がりを見せるグラベル向けバイクにも最適な技術であり、BMCはグラベルバイクの"URS"にもそれを採用した。

MTTというサスペンションシステムが組み込まれているMTTというサスペンションシステムが組み込まれている ストレージの拡張性はトップチューブのマウントのみという割り切った作りだストレージの拡張性はトップチューブのマウントのみという割り切った作りだ

扁平したシートステーもフレキシビリティ向上に貢献している扁平したシートステーもフレキシビリティ向上に貢献している BMCらしい角張ったシェイプのヘッド周りBMCらしい角張ったシェイプのヘッド周り


URSのシートチューブに配置されるMTTは、一見するとエラストマーを挟み込む技術のように思えるが、実際は内部にサスペンションのような2本のレールが備えられたテクノロジー。このレールによって剛性を確保することで、ペダリングパワーのロスを小さくしている。トラベル量は10mmだ。小さなトラベル量だが、荒れた道を走るグラベルライディングにおいてはアドバンテージとなってくれるだろう。

完成車はリジッドフォークがアセンブルされているが、フレームの設計はフォックスの32 STEP-CAST AXというサスペンションフォークを搭載することも可能だという。この点も、BMCがオフロード走行性能を重視した自転車としてURSを開発したことを表している。

ケーブル類はダウンチューブから内装されるトラッドな方式を採用ケーブル類はダウンチューブから内装されるトラッドな方式を採用 チェーンステーと繋がるような造形の幅広ボトムブラケットシェルチェーンステーと繋がるような造形の幅広ボトムブラケットシェル


他にもジオメトリー面もヘッドアングルを70°と寝かせ、リーチを長め/短めのステムの装備を前提としたマウンテンバイクライクなGravel+を採用。長めのフロントセンターとホイールベースは安定性やコントロール性を向上しており、オフロードを思う存分満喫しやすくなっているはずだ。

フレームはBMCが誇るTuned Comploance Concept(TCC)に基づいたグラベル用のカーボンレイアップとすることで、フレームの剛性と快適性のバランスを高次元でバランスさせている。D型断面のシートポストも快適性向上に貢献しているという。

フロントフォークのエンドも標準でカバーが備えられているフロントフォークのエンドも標準でカバーが備えられている プロテクターが備えられたことで、フレーム破損の心配も少ないプロテクターが備えられたことで、フレーム破損の心配も少ない 42Cタイヤを装着してもクリアランスに余裕のあるシートチューブ42Cタイヤを装着してもクリアランスに余裕のあるシートチューブ


コックピットはケーブル類をヘッドから内装するICS仕様。URSのストレージは一般的なボトルケージ台座とトップチューブマウントのみという非常にシンプルな作り。フロントフォークの先端部分やダウンチューブ下、チェーンステーにはプロテクターが配されており、オフロード走行時の傷つきを心配せずライドに集中できるだろう。

設計の随所に、Unrestricted(制限されない)という言葉をBMC流に略したモデル名から、オフロード走行を満喫するためのバイクだと伝わるURS。BMCの技術の粋を結集して開発されたグラベルバイクを小西真澄(ワイズロードお茶の水)と成毛千尋(アルディナサイクラリー)がインプレッション。



―インプレッション

「オフロードでの走行性能に重点を置いた面白い自転車」
小西真澄(ワイズロードお茶の水)


「オフロードでの走行性能に重点を置いた面白いグラベルバイク」小西真澄(ワイズロードお茶の水)「オフロードでの走行性能に重点を置いた面白いグラベルバイク」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
純粋に面白い自転車だなと感じます。最近多くのメーカーがリリースしてきたグラベルレーサーはオンロードとオフロードどちらも速く走れるというコンセプトですが、URSはそれらよりもオフロードでの走行性能を重視していると感じますし、野性的と表現したくなるようなライディングフィールでした。

URSを開発したBMCはスイスが本拠地のブランドですし、山が近い環境を走行シーンとして作られている感じを受けます。マウンテンバイク・クロスカントリーも得意としているブランドだけあって、完成度は高いですし、実際にオフロードを走ってみれば感じられると思いますよ。

特に今回のテストではガレ場を走行してみたんですけど、タイヤではない何かが動いている感覚を受けました。それはリアのサスペンションで、サドルに荷重が掛かっている状態であれば、しっかり機能していることを実際に感じ取れるし、高い快適性とトラクション性能に通じています。

「野性的な走りと表現したくなるようなバイク」小西真澄(ワイズロードお茶の水)「野性的な走りと表現したくなるようなバイク」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
重量自体は重めで、上りでは少し重さを感じたので、長い上りではワイドなギア比を目一杯使い切って、くるくるとペダルを回しつつシッティングで登っていく走り方が似合っているかな。平坦を走っている場合では、重量は気にならないんですけどね。

ショートステムを前提とした作りで、アセンブルもそのとおりなので、舗装路で走行しているとハンドリングがクイックな印象を受けます。これはオフロード走行では、突然現れる障害物を回避するために必要な性能で、オフロードを走っていると普通に感じます。フロントセンターが長めに作られていることで、クイックと直進安定性のバランスが整えられているのかなと思いました。

ポジション面でもSサイズでトップチューブが560mmもありますが、乗ってみると長く感じません。サイズ選びではメーカー推奨通りに選べば良さそうです。ハンドルが近い、ピラーのオフセットが足りていないと感じる方もいるかもしれませんが、それは無理やり調整する必要はないと思います。また、ジオメトリーを見てみるとトレイル値も大きめの作りです。確かに前輪のグリップ力は高く、このトレイル値が効いてるとうかがわせますね。

「リアのサスペンションが効いて、トラクション性能が発揮される」「リアのサスペンションが効いて、トラクション性能が発揮される」
パーツアセンブルもバイクの作りに適したものが採用されていて、特にフレアハンドルが斜面を下る時に良い役割を果たしています。人差し指でブレーキをコントロールしながら下っていくんですけど、その時にポジションが取りやすいし、コントロール性も高くて、楽しくオフロードを走れます。

価格も妥当ですし、これでグラベルバイクを知った後に、よりレーシーなバイクが欲しくなるのか、アドベンチャーなバイクが欲しくなるのかを見極めても良いと思います。特に初めてのグラベルバイクで、グラインデューロやグランフォンド妙高、ジェロボームのようなイベントに出てみたいという方におすすめしたいです。


「マウンテンバイクのようなフィーリングを感じるグラベルバイク」
成毛千尋(アルディナサイクラリー)


「マウンテンバイクのような走行感があるマシン」成毛千尋(アルディナサイクラリー)「マウンテンバイクのような走行感があるマシン」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
マウンテンバイクに近いフィーリングを感じさせる、少し趣の変わったバイクという印象ですね。非常に短いステムと幅広いハンドルバーが完成車にアセンブルされるパッケージを見ても、そういう味付けがされているとメッセージが伝わってきます。

実際に走ってみてもマウンテンバイクのようにオフロードをアグレッシブに楽しめますし、操作感もクイックに切れていくので、未舗装路はどこでも自由自在に走れてしまう。

舗装路でもマウンテンバイク然とした走行感があって、ロードバイクのような高いスピード感で走ることは得意ではないですね。それでもマウンテンバイクほど加速・減速・巡航時に重さを感じないので、グラベルまでのアプローチが長くても大丈夫そうです。

Unrestrictedという言葉からモデル名がつけられたURSUnrestrictedという言葉からモデル名がつけられたURS
リアバックのサスペンション機構は確かに効いています。テスト時にわざと荷重を掛けてみたんですが、バネ感がしっかりと伝わってきます。このサスペンションの良いところは大げさじゃない動きなんですよね。

ペダリングをスポイルするほど動かないので、漕いでも進まないという感覚はありませんし、オフロードに入った時に効果を発揮してくれるような印象です。オフロードを長時間走った時に真価が伝わると思います。

テスト走行後にMTTの動きを確かめるテスト走行後にMTTの動きを確かめる
完成車のタイヤチョイスも丁度よくて、42Cを装着していれば怯むことなくオフロードに入れます。タイヤのキャパシティが広いので、ロードでは到底クリアできないような斜度かつ土の路面でも登っていけますし、色々なチャレンジができるようになると思います。

URSのパーツ構成や走行性能を考えると、多くの人が想像するような砂利道を走るためのグラベルというよりも、もう少しアドベンチャーなライドシチュエーションのための自転車なような気がします。とはいっても、乗り物として移動するためのツーリングバイクのようでもなく、ライドの体験や走りの質を重視していると感じます。

「サスペンションはペダリングパワーをスポイルしない」成毛千尋(アルディナサイクラリー)「サスペンションはペダリングパワーをスポイルしない」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
ロードツーリングの延長線にいるバイクやレーサーとは異なり、URSはピュアにオフロードを楽しむマウンテンバイク的な要素があり、グラベルというジャンルの中でもニッチなところに居るような感覚です。速くは無いかもしれないけど、オフロードを気持ちよく走りたいというニーズに応えてくれるでしょう。

ロードバイクは乗り尽くして、ロードでは行けないような場所、オフロードを攻めてみたいという方、速く走るロードとは違う切り口で自転車を楽しみたいという方に提案したいバイクでした。

BMC URS FOURBMC URS FOUR photo:Makoto AYANO/cyclowired.jp
BMC URS FOUR
フレーム:URS Premium Carbon Frame、Micro Travel Technology (MTT)
フォーク:URS Premium Carbon Fork, TCC Gravel
シートポスト:URS D-Shape Carbon, 15mm offset
ドライブトレイン:SRAM Apex 1(40T×11-42T)
ブレーキ:SRAM Apex 1 HRD
タイヤ:WTB Resolute, 42mm
サイズ:S、M、L
フレーム重量:1050g(M)
フォーク重量:550g
価格:407,000円(税込)



インプレッションライダーのプロフィール

小西真澄(ワイズロードお茶の水)小西真澄(ワイズロードお茶の水) 小西真澄(ワイズロードお茶の水)

ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。


ワイズロードお茶の水HP



成毛千尋(アルディナサイクラリー)成毛千尋(アルディナサイクラリー) 成毛千尋(アルディナサイクラリー)

東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。

アルディナサイクラリー


text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO

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