シクロクロス日本一決定戦、全日本選手権が「土浦市りんりんポート土浦」を舞台に開催中だ。今回は日曜日に行われるメインレースを、コースや有力選手情報と共にプレビュー。東京から近く、観戦にも絶好のレースだ。



会場は土浦市りんりんポート土浦。都心部から1時間ほどとアクセスは絶好だ会場は土浦市りんりんポート土浦。都心部から1時間ほどとアクセスは絶好だ photo:Michinari Takagi
コースは「JCOMフィールド」のトラックを利用してスタートし、隣接するマリーナに沿って折り返したのち陸上競技場の外周を回るように設定された約2.7km。気持ち程度のアップダウンはあるが、基本フラットなコースとなり、ハイスピードなレースが予想される。

レースプログラムはほぼ例年通りで、本日11日土曜日はシングルスピード(エキシビション)から始まり、年代別マスターズクラスのレースが行われたのちUCIカテゴリのオフィシャルトレーニングが行われる。12日日曜日の午前中は男女のU17、U15、ジュニアカテゴリ(MJ、WJ)、男子U23(MU)のレースが行われ、その後オフィシャルトレーニングを挟み13:00から女子エリート(WE)、14:30から男子エリート(ME)のレースとなる。

小さなキャンバーを斜めに登る小さなキャンバーを斜めに登る photo:Michinari Takagiキャンバーを駆け上がるマスターズ選手たちキャンバーを駆け上がるマスターズ選手たち photo:Michinari Takagi


また土曜、日曜とも過去に例をみないほどのエントリー数のため、時差発走となるカテゴリもあるため参加者は注意が必要だ。多くのカテゴリでスタート時間が修正されているので詳しくは最新版の実施要項、もしくはコミュニケを確認のこと。



有力選手たちを紹介:タレント揃いのU23カテゴリー

さて、ここでは日曜日に行われるUCIカテゴリのレースに焦点を当てて各カテゴリのレースをプレビューしてみる。

男子ジュニア有力候補の柚木伸元(朝明高校)男子ジュニア有力候補の柚木伸元(朝明高校) photo:Bikin TV中島瞳(弱虫ペダルサイクリングチーム)は女子ジュニア優勝候補中島瞳(弱虫ペダルサイクリングチーム)は女子ジュニア優勝候補 photo:Satoshi Oda


男女ジュニアは時差発走での競争となる。この年代はJCXシリーズ戦でもなかなか人数が揃わず予想しづらいが、男子(MJ)は柚木伸元(朝明高校)が最有力か?対抗するのはMJ2年目となる永野昇海(イナーメ信濃山形)、そして昨年のU17覇者の高橋翔(cycleclub 3UP.)、MJ1年目の落合康生(TEAM GRM)らか。またジュニア2年目となる宮下環、綾野尋(cycleclub 3UP.)らがどこまで食い込めるかが見どころ。女子(WJ)はJCXシリーズ戦でもエリート相手に上位に食い込める中島瞳(弱虫ペダルサイクリングチーム)が有力と思われる。

U23ディフェンディングチャンピオンの鈴木来人(Team S1NEO LOUDEAC)U23ディフェンディングチャンピオンの鈴木来人(Team S1NEO LOUDEAC) photo:Miki.Oomori
共にU23優勝候補の村上功太郎(松山大学)と村上裕二郎(明治大学)共にU23優勝候補の村上功太郎(松山大学)と村上裕二郎(明治大学) photo:Satoshi Oda
男子U23(MU)はタレントが揃っている。今シーズンそれぞれ直接対決が少なく、誰がどのくらい力があるのか見定めが難しい。ディフェンディングチャンピオンの鈴木来人(Team S1NEO LOUDEAC)は今季フランスUCIチームに籍を置き、フランスカップを中心に活動しており帰国後2戦目となる。前週の信州シクロクロスミーティングでは現前日本チャンピオンの沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)の背後を脅かす走りをした模様。

MU1年目でチャンピオンになった村上功太郎(松山大学)は同カテゴリ最終年にあたる。その村上を前週のマキノ高原で破った副島達海(Limited Team 846)はJCXシリーズ戦に2度出場しどちらも3位表彰台に乗っている。

村上功太郎の弟である村上裕二郎(明治大学)はカテゴリ1年目だが、2年連続MJチャンピオン。先日の野辺山Day1では兄とのバトルを制している。その野辺山で2日間ともにシングルリザルトを残した松本一成(Ride Mashun SPECIALIZED)と中村龍吉(acu-power RACING TEAM)も上位争いに絡んでくるであろう。

琵琶湖グランプリで8位となった津田悠義(CCF)やロードレースを主戦場としているスピードマンが多くエントリーしており、ドライコンディションなら勝負の行方も分からなくなる。またMTB-XCEチャンピオンの森下尚仁(Click八幡)もエントリーリストに名前を連ねる。午前中の最終レースは見逃せない濃い内容のレースとなるであろう。昨年を上回る39名がエントリー。エリートのレースが行われる午後に合わせて来場予定の方は少しだけ早く来て彼らの激戦を見届けていただきたい。ネクストゼネレーションの走りに注目だ。



女子エリート+U23:若い世代が台頭中。チャンピオンジャージは誰の手に?

今季好勝負を繰り広げてきた福田咲絵(AX cyclocross team)と渡部春雅(明治大学)今季好勝負を繰り広げてきた福田咲絵(AX cyclocross team)と渡部春雅(明治大学) photo:Satoshi Oda
女子エリート(WE)はU23(WU)を含んだカテゴリとなっているが、実は有力選手のほとんどはWUカテゴリの選手だ。JCXシリーズ戦だけを見ると昨年までWJを二連覇している渡部春雅(明治大学)と琵琶湖グランプリ、能登CXと連勝している福田咲絵(AX cyclocross team)のマッチアップのように思えるが、昨年の全日本選手権で3位となっている小林あか里(信州大学)、そして2018年、2019年の覇者で今年のMTB-DHIチャンピオンとなった松本璃奈(RIDE MASHUN SPECIALIZED)が渡部と福田の前に立ちはだかることになるだろう。

矢吹優夏(B.B.Q)と松本璃奈(RIDE MASHUN SPECIALIZED)も強力矢吹優夏(B.B.Q)と松本璃奈(RIDE MASHUN SPECIALIZED)も強力 photo:Satoshi Oda
今シーズンから本格的にシクロクロスに挑戦している矢吹優夏(B.B.Q)、しり上がりに調子を上げてくる赤松綾(AYA BIKES)もドライコンディションなら上位争いに絡んでくることであろう。そして、まだシクロクロスの経験は浅いが、全日本ロードチャンピオンの植竹海貴(Y’s Road)もドライコンディションなら十分に戦えるスピードがある。TOKYO2020を最後にチャンピオンのまま一線を退いた今井美穂の後に女王となるのは誰なのか注目だ。



男子エリート:沢田と織田の直接対決となるか?

男子エリート(ME)は今シーズンの直接対決は、優勝候補2人が前哨戦2勝2敗の五分のまま大一番を迎えることとなった。現チャンピオンの沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)の最終決戦とも言えるだろう。

前哨戦で5分の成績を残している沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム前哨戦で5分の成績を残している沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム photo:Satoshi Oda
どちらもミスなく走り続けるとスプリント勝負となる可能性が非常に高い。これまでの両名が直接対決はスタートからフィニッシュまで牽制なしのアタック合戦。ジャージを守りたい沢田と昨年のリベンジに燃える織田、想像するだけでバチバチと音が聞こえそうだ。互いに譲らないレース展開は超高速バトルになるのは必至。周回を重ねるごとに80%で下される選手が続出するだろう。果たして最終完走者が何名になるかも見どころだ。

その両名が特に恐れている相手は竹之内悠(ToyoFrame)と小坂光(宇都宮ブリッツェン)のはずだ。どちらも選手権覇者であり、特に竹之内は野辺山Day2でほぼ最後尾から4番手まで順位を上げてきた。沢田と織田は今シーズン竹之内と一緒に横に並んでスタートしていないため、スピードを見極めていないはず。そして今シーズン沢田と織田の後塵を拝してばかりだが、小坂もコンディションを合わせてくるはずだ。さらには安定してシングルリザルトを残している加藤健悟(臼杵レーシング)、斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)、宮津旭と比護任(共にPAXPROJECT)、丸山厚(BOMA/ROND CX TEAM)などらが上位争いに絡んでくるであろう。

今季沢田と織田の後ろを確保してきた小坂光(宇都宮ブリッツェン)今季沢田と織田の後ろを確保してきた小坂光(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoshi Oda
大一番で強さを発揮する竹之内悠(ToyoFrame)。復権なるか大一番で強さを発揮する竹之内悠(ToyoFrame)。復権なるか photo:Satoshi Oda
同じ週末にトラック競技の全日本選手権も開催され、ME、WEには掛け持ちでいわゆる全日本選手権を“ハシゴ”する選手も何人かいる。興味のある方は両方のエントリーリストを見比べると事前情報として楽しめるであろう。

現地で観戦可能だが、入場するためには観客、選手、スタッフ関係なく両日ともに健康状態チェックシートへの記入が必要だ。返信で受け取ったQRコードを会場入り口で提示し受け取ったリストバンドの着用が義務付けられている。マスク着用など感染対策を十分に現地で繰り広げられる熱すぎる戦いを楽しんでいただきたい。

text:Satoshi Oda