千葉競輪場跡地に新たに完成した屋内型トラック「千葉JPFドーム」で、国際大会の「ケイリン」に準拠した新しい公営競技「PIST6 Championship」が、10月2日に開幕することが発表され、東京都内で記者発表会が行われた。国内トップクラスの競輪選手だけでなく、世界トップクラスの選手が出場してのトーナメント戦が開催される。



千葉競輪場跡地に建設された「千葉JPFドーム」の外観千葉競輪場跡地に建設された「千葉JPFドーム」の外観 ©️PIST6 Championship
千葉競輪場跡地に建築された「千葉JPFドーム」は、東京五輪・パラリンピックの会場にもなった「伊豆ベロドローム」同様の、国際規格の250m周長の木製バンクを備え、2000席の観客席を有する屋内競技場として完成。ここを舞台として新たにスタートするのが、「PIST6 Championship(ピストシックス・チャンピオンシップ、以下ピスト6)」だ。

千葉JPFドームの内部 国内3例目の250m板張りバンク千葉JPFドームの内部 国内3例目の250m板張りバンク ©️PIST6 Championship
最大の特徴は、従来の公営競技の「競輪」と違い、五輪や世界選手権などで行われる国際基準の「ケイリン」に準拠したルールで行われること。「競輪」は9名が出走するのに対し、「ピスト6」では6名が出走。「競輪」では使用できなかったカーボンフレームやエアロホイールの使用が可能となり、選手が着用するジャージもオリジナルデザインのものが用意される。

出場する選手は、国内の競輪選手だけでなく、世界ランキング上位選手の参加が予定されている。土曜日、日曜日の2日間開催を基本とし、1日12レースが行われる。将来的には国内外約800名の選手が参加して春、夏、秋、冬の4シーズンで行われ、年間チャンピオンを決定する。

ピスト6会場演出のイメージピスト6会場演出のイメージ ©️PIST6 Championship出場選手が着用するオリジナルデザインのジャージ例出場選手が着用するオリジナルデザインのジャージ例 ©️PIST6 Championship

観客席は有料で、正面最前列の席は「プレミアムシート」として設定されるほか、バンク内側には来場者が自由に使用できるアリーナ席が設けられる。一方で、自転車競技法の「競輪」として行われるため(250m競走として行う)「車券」の販売も行われるが、株式会社ミクシィが提供するスマートフォンアプリ「TIPSTAR(ティップスター)」からの購入を基本とし、飲食の販売など会場内での支払いはキャッシュレス決済のみとされる。

また、国内最大級のミラーボールや音響照明設備を駆使した会場の演出も用意され、従来の競輪にとらわれない新しいスポーツエンターテイメントを提供するとしている。

開幕戦は10月2日(土)。千葉県から「新型コロナウィルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言」が出されているため、少なくとも10月中は無観客開催となる。出場選手などの情報は、決まり次第公式サイトなどで発表される。

千葉市の神谷俊一市長がオンラインで参加し、ピスト6への期待を語った千葉市の神谷俊一市長がオンラインで参加し、ピスト6への期待を語った photo:Satoru Kato優勝トロフィーを挟んで、ピスト6に出場予定の新田祐大(右)と脇本雄太優勝トロフィーを挟んで、ピスト6に出場予定の新田祐大(右)と脇本雄太 photo:Satoru Kato

記者発表会には、主催する千葉市の神谷市長がオンラインで参加。「千葉JPFドームが自転車スポーツの拠点となり、千葉のランドマークとなると確信している」と期待を語った。

また、ピスト6に出場予定の新田祐大と脇本雄太が出席。新田、脇本共にピスト6出場のための資格取得はこれからとのことだったが、新田は「木製走路でのレースは、国内では全日本選手権のような大会でしか無かったが、世界を目指す人がさらに上を目指す環境が作られるのではないかと思っている」と話し、脇本は「国際規格で走る機会が増えることで競技レベルの向上に良い影響となることを期待したい」と、語った。



世界に通用する選手育成と新規ファン獲得を目標に

出場予定選手には、東京五輪にも出場したデニス・ドミトリエフ(ロシア)の名前も挙がる(写真は2017年来日時)出場予定選手には、東京五輪にも出場したデニス・ドミトリエフ(ロシア)の名前も挙がる(写真は2017年来日時) Photo:Satoru Kato自転車競技関係者の間では「カタカナケイリン」と呼ぶことがある。公営競技の「競輪」と区別するための表現だが、競技の内容は別物と言って良い。「競輪」は日本発祥の自転車競技だが、五輪をはじめとする世界レベルの「ケイリン」との差は以前から指摘され続けてきた。近年では新田、脇本がワールドカップや世界選手権で世界に通用する力を見せているが、「競輪」との両立に苦心をうかがわせるコメントが昨年の全日本選手権では聞かれた。

記者発表会で脇本が言うように、「ピスト6」は国際規格のバンクと機材で走る機会を増やすことで、競輪選手が世界の「ケイリン」にも通用する力をつけることを目標としている。「競輪」と「ケイリン」を繋ぐ役割を「ピスト6」が果たすようになれば、東京五輪で達成できなかったメダル獲得を次のパリ五輪で実現できよう。

2017年に伊豆ベロドロームで開催された「トラックパーティー」2017年に伊豆ベロドロームで開催された「トラックパーティー」 photo:Satoru Kato一方で、新たなファン獲得も「ピスト6」の目標。従来のギャンブルの場としての競輪場のイメージを払拭し、子連れでも観戦できる場を目指すとしている。公開された会場の演出イメージからは、以前伊豆ベロドロームで開催された「トラックパーティー」に似た雰囲気を感じるが、どのようなものになるか?

千葉JPFドームを運営する株式会社JPFの渡辺俊太郎代表は、「ロードレースはツール・ド・フランス、トラックはピスト6と言われるようにしたい」と意気込みを語る。現在はコロナ禍により日本への入国制限があるため先の話にはなるが、「ピスト6」に世界のトップが集うようになることを期待したい。


text:Satoru Kato