モンヴァントゥーを2度登る難関山岳ステージ。逃げ切り勝利を決めたワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)や、それを追ったモレマとエリッソンド、マイヨジョーヌを守ったポガチャル、一度目のモンヴァントゥーをトップ通過したアラフィリップなどツール第11ステージを終えた選手たちのコメントを紹介します。



ステージ1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)

独走でフィニッシュまで逃げ切ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)独走でフィニッシュまで逃げ切ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:Luca Bettini
言葉がないよ。開幕した時、まさかステージ優勝できるとは思わなかった。だが昨日、勝てると思いチームに逃げると伝えたんだ。キャリア最高の勝利と言えるだろう。ロードレースを象徴するモンヴァントゥーでの勝利。ツール・ド・フランスの山岳ステージで優勝するなんて、数年前だったら考えられなかったことだ。

走りながら自分の勝利を信じ、なんだって可能だという確信があった。沿道にたくさんのベルギー人ファンがいて、その声援に圧倒されたよ。また、このナショナルチャンピオンジャージでモンヴァントゥーを登ることができて誇りに思う。

表彰式で勝利を喜ぶワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)表彰式で勝利を喜ぶワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
虫垂炎の手術の影響で、このツールをトップレベルで迎えることが難しかった。そして第1週目には総合リーダーのプリモシュ・ログリッチと、強力なアシストであるロベルト・ヘーシンクを失う不運が重なった。また今日は残念なことに経験豊富なトニー・マルティンも棄権してしまった。だが、最後には運が味方してくれたみたいだ。

何があっても進み続け、勝負すべきところで自分のスイッチを入れられるかが重要なんだ。その瞬間こそが僕にやる気を与えてくれる。これからはチーム全体でヨナス(ヴィンゲゴー)を支えるつもりだ。彼はとても強い選手だからね。

ステージ2位&敢闘賞 ケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード)

バウケ・モレマとケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)がファンアールトを追うバウケ・モレマとケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)がファンアールトを追う photo:Makoto AYANO
モンヴァントゥーの登り始めが最も厳しいとわかっていたから、ジュリアン(ベルナール)に速いペースで引いてもらった。だから彼に感謝を伝え、そのまま集団から飛び出した。バウケ(モレマ)の調子が良かったので、彼の脚を使わせないよう僕が先に仕掛けた。ライバルたちを窮地に追い込む完璧なタイミングだった。その後は自分のリズムで登り、後ろからワウトが追いついてきた。そして離されてしまった。彼の強さと、このような登りではできることは何もなかった。

ステージ3位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)

健闘を称え合うトレック・セガフレードのケニー・エリッソンド(フランス)とバウケ・モレマ(オランダ)健闘を称え合うトレック・セガフレードのケニー・エリッソンド(フランス)とバウケ・モレマ(オランダ) photo:CorVos
今日は素晴らしい走りができたと思っている。チームが協力して走れたことを誇りに思うし、8人の逃げ集団にチームから3人も入ることができた。ジュリアン(ベルナール)がメイン集団とのタイム差をつけ、ケニー(エリッソンド)はとても強く、頂上までのラスト5kmとその後の下りを協力して走ることができた。だが、僕たちよりも強かったファンアールトが勝者にふさわしい。僕たちにできることはあまりなかった。

ステージ4位&マイヨジョーヌ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

マイヨジョーヌを守ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)マイヨジョーヌを守ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Luca Bettini
登りを通してペースはとても速く、ヴィンゲゴーのアタックについていくことができなかった。だが平静を保ち、頂上までそれほど距離がないとわかっていた。ダウンヒルで踏めるだけの力は残っていたので、集中して下れば追いつくと思っていた。

ウランとカラパスとは良い協調体制で追いつくことができた。ヴィンゲゴーが強いクライマーの1人だということは知っていたので、彼の走りに驚きはない。ツールで簡単な日はなく、明日も風がレースに影響を与えるだろう。

ステージ8位&総合7位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)

登りで遅れるも粘ったアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)と登りで遅れるも粘ったアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・プレミアテック)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)と photo:CorVos
今日は残酷なステージとなった。総合タイムを失わないようできる限りポガチャルの後ろにつこうと思い、それが上手くいった。その後、2度目のモンヴァントゥー山頂からケルデルマンと一緒に前を追った。8位という結果は嬉しいし、総合順位も1つ上がった。もちろんツールはまだタフなステージが残っているが、自分の走りに満足しているよ。

ステージ9位&総合6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)

雨と寒さのステージから一転、暑い日になった。予想していたことなのでこまめに水分補給をして、1日を通して良い日になったよ。モンヴァントゥーを2度登るタフな山岳だったが、悪くない結果だった。ヴィンゲゴーがアタックした瞬間、限界がきてしまい反応することができず、自分のペースで踏むしかなかった。表彰台はそれほど遠くなく、もしかしたら争いに加われるかもしれない。だが、たとえ総合5位で終えたとしても満足な結果と言えるだろう。

ステージ15位&総合5位 ベン・オコーナー(オーストラリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)

おそらくここまで力を振り絞ったのは、体調不良のなか走った昨年のジロ以来だろう。今日はいままでで一番辛いレースだった。僕が苦しんでいたのは誰の目にも明らかだったろう。だが総合タイムを失わないようベストを尽くした。この後待ち受けるどんな山岳も、今日のモンヴァントゥーよりはマシだろう。

ステージ23位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

スタート直後からアタックを繰り返したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)スタート直後からアタックを繰り返したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
逃げを狙っていたので、レース開始直後から積極的に仕掛けた。今日は楽しくベストを尽くすことができたのだが、コースが一周多すぎたようだね。だが、アルカンシェルを着てモンヴァントゥーの山頂に先頭でたどり着く喜びは大きかった。誰もが知っている神話に出てくるような特別な山岳を、レースの先頭で登った時の気持ちは言葉では言い表せないほどだった。

落車しレースを去ったトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)

今年は僕のシーズンではないようだ。酷く落車したため、ツールを去らなければならなかった。骨折はしていないが、唇、肘、膝、そして鎖骨付近を縫った。だがそれよりもチームから離れなければならないのが辛い。チームのみんなを誇りに思うし、残りのレースで良い結果が得られるよう願っている。

ガブリエル・ラッシュ監督(イネオス・グレナディアーズ)

イネオス・グレナディアーズがメイン集団の牽引を担当イネオス・グレナディアーズがメイン集団の牽引を担当 photo:Luca Bettini
今日は仕掛けなくてはならないステージだった。集団にプレッシャーを与え、ステージ優勝も狙っていくのが今朝の計画だった。ファンアールトを捉えるのは難しかったものの、総合上位勢を振り落とすことができた。チームによる働きは素晴らしく、カラパスも最後まで集団に残ってくれた。何よりも安定して高いレベルを維持することが大切なんだ。我々は自分たちのレースに集中し、一歩一歩進んでいくだけだ。最後までどうなるか見てみよう。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos