逃げを決め、力強いスプリントでライバル2人を下したのはシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)。スイスの次代を担う22歳が母国で大きな勝利を挙げた。



晴れ渡るザンクト・ウルバンをスタートする晴れ渡るザンクト・ウルバンをスタートする (c)CorVos
隣国オーストリアのザンクト・ウルバンから南下し、山岳リゾート地として知られるグシュタードの飛行場にフィニッシュするツール・ド・スイス第4ステージ。獲得標高は2,000m弱で、最後は標高1,266mの2級山岳「ザーネンメサー(全長6.6km/平均4.8%)」を下って山岳リゾート地として知られるグシュタードの飛行場にフィニッシュする。

果たしてマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)のステージ3連勝なるか。そんな期待の掛かった第4ステージは、スタッフの新型コロナウイルス陽性によるアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオの撤退と、逃げ切りを狙う選手たちによる長いアタック合戦で幕開けた。

序盤に逃げたマークス・ブルグハート(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)たちはすぐさま吸収される序盤に逃げたマークス・ブルグハート(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)たちはすぐさま吸収される (c)CorVos
6分リードで逃げるジョエル・ズーター(スイス、スイスナショナルチーム)たち6分リードで逃げるジョエル・ズーター(スイス、スイスナショナルチーム)たち (c)CorVos
一時はアントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)や、先のジロ・デ・イタリアで逃げまくったシモン・ペロー(スイスナショナルチーム)を含む6名が先行したものの、メイン集団はこれを許さず追撃。続いてバンジャマン・トマ(フランス、グルパマFDJ)とジョセフ・ロスコフ(アメリカ、ラリーサイクリング)、ジョエル・ズーター(スイス、スイスナショナルチーム)が逃げ、ここに初日TTで2位に甘んじたシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)が追いついた。

こうして生まれた逃げグループのうち、最も総合成績の良いビッセガーで6分5秒遅れ。ワールドツアーのステージレースで初めてリーダージャージを着用して走るマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)たちはこのエスケープを容認し、ビッセガーの成績に合わせて6分リードを与えて泳がせた。

スイスの美しい山村風景の中を走るスイスの美しい山村風景の中を走る (c)CorVos
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、AG2Rシトロエン)と談笑するマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、AG2Rシトロエン)と談笑するマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
メイン集団はペースが上がらず、逃げグループ吸収を諦めるメイン集団はペースが上がらず、逃げグループ吸収を諦める (c)CorVos
TTスペシャリストや、オムニアムの現世界チャンピオンであるトマなど、スピードに長ける4名は、後半にかけて雨が降り注ぐ中を快調に逃げ続ける。メイン集団ではアルペシン・フェニックスがコントロールを止め、その後を引き継いだモビスターも、他に同調するチームが現れずペースダウン。逃げる4名はステージ優勝を諦めゆったりモードに切り替えた集団から更にリードを上積みしていった。

逃げ切りが確定的となった4名は2級山岳ザーネンメサーをこなし、ペースに付いていけなくなったズーターが脱落。雨に濡れたダウンヒルではビッセガーが何度も何度もアタックしたが、トマとロスコフは食らいついて離れない。積極的に仕掛けるビッセガーとロスコフ、対するトマは着き位置で守りの体制。手に汗握るアタックと牽制を繰り返しながらフラムルージュ(残り1km)をくぐり、残り200m標識をきっかけに3名同時のスプリントが始まった。

終盤の2級山岳を逃げるロスコフ、トマ、ビッセガー終盤の2級山岳を逃げるロスコフ、トマ、ビッセガー (c)CorVos
トマやロスコフを抑えてシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)が伸びるトマやロスコフを抑えてシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)が伸びる (c)CorVos
力強いガッツポーズを繰り出すシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)力強いガッツポーズを繰り出すシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO) (c)CorVos
先行したロスコフは勢いが足りず、ビッセガーが先頭に立ってスプリント。瞬発力で対抗するトマだったが、猛然と突き進むビッセガーには届かない。トマが追いついてこないことを確認したビッセガーが力強いガッツポーズで勝利をアピールした。

「ついにツール・ド・スイスで勝つことができた。最高に嬉しいよ」とインタビューに答えたビッセガー。今年のパリ〜ニースで初のワールドツアーステージ優勝を挙げたスイス期待の星は、期待されていた初日個人TTでシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)に敗れ2位。前戦のツール・ド・ロマンディでもプロローグ5位、最終個人TTで2位に終わっていたが、その悔しさをロードステージの逃げ切りという形で晴らした。「パリ〜ニースはTTだったけれど、今回はロードステージで勝てた。どちらも嬉しいけれど、(母国)スイスでの勝利だから今回の方がより嬉しいかもしれない」と加えている。

ツール・ド・スイス初勝利を挙げたシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO)ツール・ド・スイス初勝利を挙げたシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO) (c)CorVos
エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)を先頭に、メイン集団は5分16秒遅れでフィニッシュ。首位ファンデルプールや2位ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)など総合勢は全員集団内でレースを終えたため、総合成績の変動は無かった。

翌第5ステージは、終盤に1級山岳エルシュマットを越え、立て続けに標高1,211mの1級山岳ロイカーバードを目指す今大会初の難関山岳フィニッシュが待ち受ける。総合成績は大きくシャッフルされるはずだ。

ツール・ド・スイス2021第4ステージ結果
1位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO) 3:46:21
2位 バンジャマン・トマ(フランス、グルパマFDJ)
3位 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、ラリーサイクリング)
4位 ジョエル・ズーター(スイス、スイスナショナルチーム) 0:23
5位 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) 5:16
6位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
7位 オマール・フライレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
8位 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
9位 フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
個人総合成績
1位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) 12:40:51
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:01
3位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) 0:04
4位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:06
5位 マティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:13
6位 イバン・ガルシア(スペイン、モビスター) 0:16
7位 リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 0:17
8位 ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・NIPPO) 0:29
9位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル) 0:37
10位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・NIPPO) 0:38
その他の特別賞
ポイント賞 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
山岳賞 ニコラス・ズコウスキー(カナダ、ラリーサイクリング)
ヤングライダー賞 ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・NIPPO)
チーム総合成績 EFエデュケーション・NIPPO
text:So Isobe
photo:CorVos