「この2年は苦難の連続で、ここに至るまで多くの犠牲を払ってきた」と語るのは、グランツールでステージ初優勝を果たしたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)。終盤のトンネルで接触しポジションを下げたエヴェネプールや、山岳賞を獲得したブシャールなどのコメントを紹介します。



ステージ1位&マリアローザ&ヤングライダー賞 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)

ステージ優勝を飾り、総合首位に立ったエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)ステージ優勝を飾り、総合首位に立ったエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:LaPresse
何が起こったのがいまだ信じられない。このグランツールで初めてのステージ優勝に至るまで、多くの犠牲を払ってきた。今日は良い走りができると思っていたが、勝てるとかどうかはわからなかった。この勝利はチームのおかげだ。彼らは僕を信頼し、自信のない僕に「君なら出来る。僕らに任せろ」と言ってくれた。この勝利は僕を信じてくれた彼らのものだ。

今朝はステージ勝利ではなく、いかにライバルたちからタイム差をつけるかだけを考えていた。だから最後から2つ目の登りで集団牽引をするべきかどうか迷っていたのだが、チームは先頭を引き始めた。未舗装路で自分がどれだけ走れるかわからなかった。しかし結果的に絶好調でタイム差もつけることができた。ラスト1.5kmでは完全に集中し、自分の世界に入り込み、全てを出し尽くすことができた。周りを一切見ることなく、自分に「何が起きようとこの4分間だけフルガスで踏み続ける」と言い聞かせた。

正直、他の選手が先着していると思っていたのでフィニッシュ直後は自分の優勝がわかっていなかった。だが、優勝を知った瞬間は、感動で胸がいっぱいになった。

ライバルたちを振り切ってフィニッシュしたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)ライバルたちを振り切ってフィニッシュしたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:LaPresse

2019年のツールからの2年は精神的にも肉体的にも苦難の連続だった。だから再び勝てたことは僕にとっても、またチームにとっても大事なことだ。いまだステージの前は理学療法と体幹トレーニングをして、レース後は再び理学療法とマッサージを受け良いコンディションを維持するため出来る限りのことをしている。だけどいまこの瞬間は、勝利とこのリードを楽しみたい。

ステージ2位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)

今日は僕らのステージだった。レース序盤の70kmは激しい展開だったが、最後を総合上位の選手たちと登ることができた自分の走りに満足している。逃げにバウケ(モレマ)が入り、プロトンでは僕とヴィンチェンツォ(ニバリ)のためにチームが働いてくれた。(総合順位でトップと)1分差の間にたくさんの選手がいるし、まだまだ先は長い。今日はタイムを失うかもしれない重要なステージでだったが、僕らチームは強かった。この調子を継続していきたい。

ベルナルの後ろについていこうとしたが、彼が(フロントギアを)53に切り替えた瞬間、自分のテンポで行こうと思ったんだ(笑)。彼は1人だけ違うレベルの走りをしていた。しかし僕らもチーム一丸となって明日以降も戦い続けていくよ。

ステージ3位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)

頂上まで続く未舗装路区間はとても厳しく、しかし良い経験になった。最後のアタックはよい判断だと思ったのだが、あの路面ではバイクを安定させることすら難しかった。脚は良く、調子も悪くない。自分の走りに満足しているし、このような慣れない路面でも最善は尽くせたと思う。いまのところ順調で、明日とその後の休息日明けのステージに注目していきたい。

ステージ4位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)

未舗装路の直前で遅れるも4位でフィニッシュしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)未舗装路の直前で遅れるも4位でフィニッシュしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
レース序盤は2つの登りが厳しく辛い時間が続いた。しかし、最後の登りはフィニッシュまで続く1.5kmの未舗装路区間以外は山岳に感じられないほど緩やかだった。正直もっと厳しい登りを望んでいたのだが、結果として総合順位を守ることができた。今日の走りは(休息日明けの)水曜日に繋がるだろう。

最後の1.5kmまでチームが全力で導いてくれた。トンネルの中で前を行くイネオスの選手の後輪と接触してしまい、ポジションを下げてしまったんだ。こういうことは起こりうるが、そのせいで未舗装路に集団の後方で入らなければならなかった。でも何とか前方まで上がり、失ったのはたった10秒。これから訪れる山岳ステージを考えれば、総合で15秒遅れはなんてこと無いタイム差だ。明日はスプリントステージでその後は休息日。みんな嬉しいんじゃないかな。

ステージ5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)

ダート区間に苦労したが、悪くない順位でフィニッシュすることができた。未舗装路はトリッキーで、いつものようにダンシングでパワーを出すことができなかった。また、逃げ集団から遅れてくる選手たちが道を塞いでいたため、残り1kmから何度かスピードを緩めなければならなかった。レースが終わってもおかしくないようなステージを乗り越えることができ、単純に嬉しい。このあとに来る本格的な山岳が楽しみだ。

マリアアッズーラ(山岳賞) ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)

マリアアッズーラを獲得したジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)マリアアッズーラを獲得したジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) photo:LaPresse
最終山岳に入る前で仕掛けた。僕には難易度が高すぎると思っていた。まず、最後の下りでアタックしたのだが、ネルソン・オリヴェイラがブリッジしてきた。フィニッシュに続く登りの直前で再び飛び出したのだが、力尽きてしまった。ジロが開幕してから何度もアタックを試みている。いつかはこの努力が報われるはずだ。

フィニッシュ直前で集団に吸収されたクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)

ミサイルと例えたベルナルを振り返るクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)ミサイルと例えたベルナルを振り返るクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
あと少しだったので本当に残念だ。ベルナルの姿が見えた瞬間、「終わった」と思った。彼は僕の横をミサイルのように飛んでいった。最後から2つ目の登りを(バウケ)モレマと(マイケル)ストーラーと一緒に通過し、アタックしてフランス人(ブシャール)に合流したのだが、ステージが400m長すぎた。僕には未舗装路は厳しすぎたものの、自分の調子の良さが確認できた。まだいくつかチャンスはあるのでこれからも頑張るよ。

ステージ60位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)

60位でフィニッシュした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)60位でフィニッシュした新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
今日もたくさんの事が起こった。マテイが落車して、頭を打ったので病院に運ばれた。幸いにも意識もあり、骨折はない。ホテルに帰って来て、夕食も一緒に食べた。経過を見る為に数日はチームと過ごす事になる。

レースは逃げにジーノ、ペイヨを中心にトライしたが、結果には結び付かなかった。だがジーノは常に先頭でアタックを繰り返し、力があるのは誰もが思っただろう。ただ、今日はチャンスが無かった。ジャージは失ったけど、いつでも取り返せるポイント差だし、2週目、3週目にはたくさんの山岳が待っている。チームは不運で6人になってしまったけど、ダミアーノ(カルーゾ)はまだまだ総合上位に着けているし、これからも皆で良いジロにして行きたい。

下りで落車しレースを去ったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)

僕は大丈夫だ。バイクとヘルメットが衝撃を吸収してくれとてもラッキーだった。骨折もなく軽い脳震盪だけでいまは頭痛もない。医療スタッフが経過観察してくれている。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos