ピレリがアップデートしたフラッグシップ・クリンチャー”P ZERO”には、レース向けのRACEとトレーニング向けのROADが用意されている。レーサーがトレーニングで使うことを想定して作られたP ZERO ROADを紹介しよう。全方位にバランスを取りつつ、耐パンク性と耐久性が優れた新作をインプレッション。



ピレリ P ZERO ROADピレリ P ZERO ROAD
モータースポーツ用のタイヤメーカーとして有名なイタリアのピレリ。2017年にフラッグシップP ZEROという名前を冠したクリンチャーをリリースして以来、様々な種類のタイヤをラインナップに加え、自転車用タイヤブランドとしても地位を確立している。

2021年シーズンはバイクエクスチェンジ、トレック・セガフレード、AG2Rシトロエンという3つのUCIワールドチームがレースで使用。世界最高峰の舞台でもピレリの存在感は増しつつあると同時に、プロ選手からのフィードバックをもとに開発は進められており、ハイパフォーマンスなプロダクトが生み出されている。

UCIワールドツアーの選手がトレーニングで使用することを想定し開発されたUCIワールドツアーの選手がトレーニングで使用することを想定し開発された

今回ピックアップするのはクリンチャーの”P ZERO ROAD”。同時に登場したP ZERO RACEがレース用タイヤであり、”ROAD”はUCIワールドツアーの選手がトレーニングタイヤとして使用することを想定し開発されているモデルだ。

EVO COMPOUNDという新開発のラバーを採用することで、これまで以上に性能のバランスを整えることに成功。転がり抵抗とグリップという相反する特性を両立させると共に、耐パンク性や耐久性を強化しており、ピュアレーシングモデルというよりも日常のサイクリングやトレーニングに適したタイヤへと仕上げている。

ショルダー部分に斜めに溝を切ったトレッドパターンショルダー部分に斜めに溝を切ったトレッドパターン
P ZERO ROAD 実測重量236gP ZERO ROAD 実測重量236g

耐パンク性能については、トレッド下に耐切断性に優れる"TECHBELT"というレイヤーを追加することで、性能向上を図った。小石がトレッドに刺さったとしても貫通を防ぎ、走り続けられるはずだ。また、120tpiのナイロンケーシングによりしなやかな乗り心地を実現している。

P ZERO ROADのカラーはブラックのみ展開される。24Cと26C、28Cという3サイズが用意され、価格は6,700円(税込)。取り扱いはカワシマサイクルサプライだ。



― 編集部インプレッション

「P ZERO ROAD 26C体重別適正空気圧」を参考に6.1barでテストを実施「P ZERO ROAD 26C体重別適正空気圧」を参考に6.1barでテストを実施
ピレリから登場した2モデルのクリンチャータイヤ。そのうちの1つ、ワールドツアークラスのトレーニングで使用することを想定し開発されたのがピレリ P ZERO ROADだ。レース向けタイヤP ZERO RACEを試したCW編集部の高木が引き続き使用した。

P ZERO ROADはP ZERO RACEをはじめレース向けクリンチャーと比較すると肉厚なタイヤである印象。それでも柔軟性は非常に高く、走行する前からしなやかなタイヤであるという期待が膨らんでいた。タイヤの柔らかさのおかげで、ホイールへの装着も容易だ。

荒れた路面では振動の角が取れた快適な乗り心地荒れた路面では振動の角が取れた快適な乗り心地
テストを行うにあたり、ピレリのサイトに公開されている「P ZERO ROAD 26C体重別適正空気圧」の表を参考に空気圧を調整した。体重59kgの筆者に推奨された空気圧は6.1bar(88psi)。レース用タイヤのP ZERO RACEの適正空気圧は6.6barであったため、P ZERO ROADは低めに設定するのが良いとのことだ。タイヤトレッドの量が多く、低圧でもタイヤがよれることなく性能を発揮できるという事だろう。

トレッドの厚みは走行感にも表れており、ラバーによるクッション性が高く、快適な乗り心地を演出していると感じた。同時にロードインフォメーションを受け取ることはできるため、荒れた路面の山道や一般道でも状況を感じ取りつつも、振動が抑えられた快適なサイクリングができるはずだ。

転がりが軽く、登りでも非常にスムーズに走れた転がりが軽く、登りでも非常にスムーズに走れた   
速いスピードで進入し、フルブレーキからコーナーリングをしてみたが、コンパウンドがしっかりと捉えてくれる。ブレーキングでタイヤがロックしてしまったり、バイクを倒している時にスリップせずにコーナーを脱出できるため、安心してコーナーに進入できる印象がある。26Cという絶妙な太さのおかげで、左から右へ切り返して行くコーナーでもスムーズにバイクを倒すことができ、コーナーリングの最中に走行ラインを変更したり、バイクを倒す角度を修正することも簡単。
                              
グリップに関してはベタベタと路面に張り付くような感じではなく、転がりは軽く感じる。平坦や登り、加速や巡航時、あらゆる場面で26Cであること忘れる程に、非常にスムーズなフィーリングでライドに集中できた。

クイックな操舵感により下りも走りやすいクイックな操舵感により下りも走りやすい
P ZERO ROADを使う上で先述した推奨空気圧を参考にした方が良さそう。最もパフォーマンスを引き出せるのは推奨空気圧であり、快適性やウェットグリップを気にする場合は少しずつ低圧に調整していくと良さそうだ。フロントだけ0.3気圧下げればクッション性を活かせ、前後共に0.3気圧下げれば路面状況に関わらずグリップ力を得られるだろう。

乗り心地の良さに加え、26Cによる安定感で多くのライダーにアドバンテージを与えてくれると感じる。トレーニングライドやサイクリングで週末に100kmや200kmと長距離を走るレーサーや通勤をしている方に向いているタイヤである。



ピレリ P ZERO ROAD
サイズ:700x24C、700x26C、700x28C
重 量:215g(24C)、235g(26C)、255g(28C)
ケーシング:120tpi
コンパウンド:EVOCOMPOUND
価格:6,700円(税込)

※P ZERO ROADは"ETRTO 17Cリム"を基準に設計されています。

text:Michinari TAKAGI
photo:Gakuto Fujiwara
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