イタリアンタイヤメーカーのピレリからハイパフォーマンスロードタイヤ「P ZERO RACE」が登場。UCIワールドツアーの選手と3年間の研究開発を経て生み出されたレーシングクリンチャータイヤをインプレッションしよう。



ピレリ P ZERO RACEピレリ P ZERO RACE
モータースポーツ界で名を馳せるイタリアンタイヤメーカー、ピレリ。140年以上の歴史を持ち、2017年には満を持してサイクルロードレースシーンに復活。当初はP ZERO VELOというクリンチャータイプが中心だったため、このモデルが広く知られていることだろう。その後、ピレリはプロ選手が使うチューブラー、チューブレスのみならずオフロード系タイヤまで幅を広げており、ピレリタイヤの存在感は増すばかり。

ピレリは2018年に当時ミッチェルトン・スコットとパートナーシップを締結し、UCIワールドツアーの選手たちと共にレースの現場に求められるタイヤの開発をスタートさせた。3年間の研究開発で生み出した数々のテクノロジーを惜しみなく投入した新型クリンチャータイヤ"P ZERO RACE"をリリースする。

トレッド部には稲妻状のパターンを入れグリップや水はけを向上させているトレッド部には稲妻状のパターンを入れグリップや水はけを向上させている
自動車用タイヤのようにタイヤサイズはサイドに大きく印字されている自動車用タイヤのようにタイヤサイズはサイドに大きく印字されている
P ZERO RACE 実測重量208g(ゴムバンド6g含む)P ZERO RACE 実測重量208g(ゴムバンド6g含む) P ZEROロゴの対角線上にはピレリのブランドロゴを配置されるP ZEROロゴの対角線上にはピレリのブランドロゴを配置される

P ZERO RACEはチューブレスモデルのP ZERO RACE TLRと同様のSMART EVOコンパウンドを採用している。従来のコンパウンドに3種類の高機能ポリマーを添加することで、グリップと転がり抵抗など相反する性能の両立。ドライとウェット路面のどちらでもグリップ力を向上させつつ、低い転がり抵抗と高いハンドリング性能を実現している。また、トレッドには稲妻状のパターンを入れグリップや水はけの向上を図っている。

"P ZERO RACE"という名前の通りレースユースを想定し、26Cで205gという軽量性を備えているにも関わらず、トレッド下には耐切断性に優れるアラミドベルトを配置することで、パンクリスクを軽減。この耐パンク層と120tpiのケーシング構造はTECHBELTと呼ばれ、様々な条件下で安心して使用できる性能を実現している。26Cと28C、30Cという3サイズが用意され、価格は9,500円(税抜)だ。取り扱いはカワシマサイクルサプライ。



―編集部インプレッション

転がりが軽く、登りでも軽快であった転がりが軽く、登りでも軽快であった
今回インプレッションするのはピレリの新作クリンチャータイヤであるP ZERO RACEの700×26C。インプレッションを担当するのは年間を通してレースやトレーニング、自転車通勤をしているCW編集部員の高木だ。

P ZERO RACEはレーシングタイヤに相応しく薄く、軽いという印象が手にとった瞬間から伝わってくる。これまで多くのレーシングクリンチャータイヤを試してきたが、26Cと太い幅ながらその中でも非常に軽い印象だ。重量を測ってみると202g。他のブランドのレーシングタイヤに比べても非常に軽量な仕上がりである。

触った感触も非常にしなやかでホイールへの取り付けも簡単だった触った感触も非常にしなやかでホイールへの取り付けも簡単だった
タイヤ全体が柔らかいため、素手で軽々とタイヤをホイールに装着することができた。空気圧はタイヤの幅によって変わってくるため、ピレリの公式サイトに公開されている「P ZERO RACE 26C体重別適正空気圧」の表を参考にした。筆者の体重は59kgなので表によると58~65kgの適正空気圧は6.6bar(95psi)となる。適正空気圧の6.6barでタイヤインプレッションを実施した。

走り出すとタイヤのケーシングとトレッドがしなやかで乗り心地が良い。タイヤ全体で路面からの振動を吸収してくれるため、低速でも高速域でも快適である。荒れた路面を走ったとしても、ストレスフリーで走れる。

ハイスピードでコーナーに進入しても路面を捉えてくれるため、安心してコーナーに突っ込めるハイスピードでコーナーに進入しても路面を捉えてくれるため、安心してコーナーに突っ込める
40km/hを超えるハイスピードでコーナーに進入し、フルブレーキングからバイクを倒しながらコーナーリングをしてみたが、制動時とコーナリング時どちらも路面を捉え続けてくれ、トラクションが抜けるような怖さは一切ない。連続コーナーで切り返してみたが、スムーズにバイクを倒すことができる。ロードレースやクリテリウムのタイトなコーナーや高速コーナーでも、安心して曲がることができるだろう。ウェットコンディションでもテストしたが、しっかりとグリップしてくれた。

グリップしてくれる反面、転がりは非常に軽い。信号待ちからの加速もスムーズで走りやすく、30~40km/hの平地巡航も速度をキープしやすい。レースだけに限らず、ロングライドやサイクリングにも適しているように感じた。

荒れた路面でも凹凸に合わせタイヤが変形し、トラクションがかかり続けた荒れた路面でも凹凸に合わせタイヤが変形し、トラクションがかかり続けた
試しに空気圧を5気圧まで下げると、乗り心地はさらに向上したが、路面抵抗が増してしまい軽快感が薄れ、ハンドリングが重くなった。一方で、空気圧を高めてしまうと、このタイヤの良さの乗り心地の面が失われてしまうため、ピレリのサイトに公開されている「26C体重別適正空気圧」の表の数値が汎用性が高いと感じる。

UCIワールドツアーの選手と協同開発されたピレリ P ZERO RACE。グリップ性や転がりの軽さ、操作性、乗り心地の良さに関してワールドツアー選手が使用するタイヤの性能を楽しめるタイヤだと思う。あらゆるコンディションで使用できるレース用クリンチャータイヤを探していた方に使用してもらいたいタイヤだ。



ピレリ P ZERO RACE
サイズ:700x26C、700x28C、700x30C
重量:205g(26C)、225g(28C)、245g(30C)
ケーシング:120tpi
コンパウンド:SMARTEVOCOMPOUND
価格:9,500円(税込)

text:Michinari TAKAGI
photo:Gakuto Fujiwara
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