インドネシアにて6日間のステージレース“ツール・ド・シンカラ(UCI2.2)”が6月1日から開催される。日本からはアジアで活躍することを目標に掲げる愛三工業レーシングチームが出場する。レースの模様は現地からお伝えする。

ツール・ド・シンカラは、近年ロードレース熱が高まるインドネシアで、昨年誕生したまだ歴史の浅いレースだ。
しかし本格的なチームタイムトライアルや山岳ステージなどが含まれ、将来的にアジアを代表するステージレースに成長する可能性を秘めている。それを示すかのように、昨年は4日間での開催だったが、今年は6日間にパワーアップした。そしてアジアの有力チームを中心に22チームが参戦する予定だ。日本からはアジアツアーを中心に転戦する愛三工業レーシングチームが出場する。

2009年9月30日スマトラ島沖地震で被害を受けた教会。復興作業が進む2009年9月30日スマトラ島沖地震で被害を受けた教会。復興作業が進む (c)SonokoTANAKA

スマトラ島沖地震からの復興が進む現地スマトラ島沖地震からの復興が進む現地 (c)SonokoTANAKAレースの拠点は、スマトラ島の西部に位置するパダンという街。インドネシア特有の彎曲し空に突き出るような屋根をもった建物が並ぶインドネシアの主要都市の1つであり、昨年9月に起きたスマトラ島沖地震の震源地にもっとも近い街だ。

震源地の震度はマグニチュード7.6。パダンの木造の建物は相次いで倒壊し、多くの人々が瓦礫の下敷きになった。人的被害は、パダンや近郊の街で2,000人以上もの犠牲者が出たという……。道路やホテルなども大きなダメージを受け、今大会の開催は危ぶまれたが、復興の意味もこめられ、無事に開催を迎えようとしている。

愛三工業レーシングチームは、「自分たちが走ることで、少しでも被災者たちを励ますことができたら……」という思いから、国内での主要レースを欠場し、パダンの地に再び戻ってきた。そして賞金の一部を復興支援に寄付するという。レースは壊滅的な被害を受けた現地の人々の希望となっている。

レースの見所とステージ解説、そしてアジアチックな現地の様子...。

これから連日のレースの模様を現地からレポート。そして、その前にレースの見所を紹介しよう。

2010年大会の総走行距離は551.7km、最長距離は第6ステージの140km。総合優勝を左右させるステージは序盤に多く設定されている。

まず第1ステージはパダンの街で繰り広げられる15.8kmのチームタイムトライアル。アジアのレースで、チームタイムトライアルが組み込まれるのは珍しい。距離がやや長いため、ここでタイム差が大きく開いてしまう可能性がある。総合順位を狙うチームは初日から全力で走ることとなる。なお、機材はノーマルバイク限定だ。

そして特徴的なのが、第2ステージ。1日に午前、午後と2レース開催されるもので、そのような場合、タイムトライアルやクリテリウムとロードレースが組み合わさることが多いが、ツール・ド・シンカラの場合はロードレース×2。午前中は9時スタートで79.9kmの平地ステージを、午後は14時スタートで87kmの山頂ゴールステージを走る。距離こそは長くないものの、午後のレースは、標高差約500mを一気に上る山頂ゴールため、重要なレースとなる。30℃を超える暑さの中、午前中のレースでいかに体力を温存し、最後に爆発できるかが明暗を分けるだろう。

続く第3ステージも山岳ステージだ。ステージ中盤に標高差約700mの上りが用意され、かなり傾斜が厳しいとの情報だ。そして距離が51.3kmととても短いのも特徴。コースプロフィールを見るかぎり、上ったあとの下りや平坦区間が長いように感じるが、全体の距離が短いので、当然下り区間も短いことになる。つまり上りでのタイム差をさほど挽回できないのではないか、とも考えられる。ここまでのステージで、ほぼ優勝候補は絞られてくるハズだ。

残りの4~6ステージは平地か下り基調のステージとなる。ただ第4ステージと第5ステージはゴール前に小さな上り区間があるため、ゴールスプリントにはならず、逃げが決まったり、最後のタイミングでアタックをかける選手がいるだろう。南国のホスピタリティ溢れる街で、どんなレースが繰り広げられるのか、楽しみだ。

アジアの格安航空会社AirAsiaの機体。クアラルンプールが拠点の航空会社だアジアの格安航空会社AirAsiaの機体。クアラルンプールが拠点の航空会社だ (c)SonokoTANAKAパダンの空港では大会の大きな看板に出迎えを受けるパダンの空港では大会の大きな看板に出迎えを受ける (c)SonokoTANAKA


現地入りしたレポーターの私を待っていたのは......

伝統的なインドネシア料理。小皿が多く並ぶ。手で食べるのが一般的伝統的なインドネシア料理。小皿が多く並ぶ。手で食べるのが一般的 (c)SonokoTANAKAそして、私はマレーシアのクアラルンプールを経由してパダンへと入った。クアラルンプールまで約7時間、クアラルンプールからパダンまでは、アジアで話題の格安航空会社“AirAsia”を利用して約1時間ほど。
空港に着くと、私は蒸し暑さは当たり前のこと、慌ただしく動き、パワーがみなぎる人々の熱気に取り囲まれた。そして、空港では“MR.SANOKO TAMARA(正しくはMS.SONOKO TANAKA)”と書かれた紙をもった大会関係者と落ち合う。

「本当に、それ私のこと?」と確認することから、私のツール・ド・シンカラは始まった。



ツール・ド・シンカラ2010 ステージ概要
6月1日 第1ステージ(チームタイムトライアル) パダンビーチ 15.8km
6月2日 第2Aステージ パダン~パリアマン  79.9km
6月2日 第2Bステージ パリアマン~ムコムコ 87km
6月3日 第3ステージ ムコムコ~ブッキ・タンギ 51.3km
6月4日 第4ステージ パダン・パンジャン~サワルント 81.2km
6月5日 第5ステージ サワルント~バツサンカー 96.5km
6月6日 第6ステージ ブッキ・タンギ~ソロック 140km

ツール・ド・シンカラ2010 ステージマップツール・ド・シンカラ2010 ステージマップ (c)SonokoTANAKA




Photo&text 田中苑子 SonokoTANAKA

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