国内レースプレーバック2回目は、ロードレース五輪代表決定と、各種目の全日本選手権、新たな可能性を示したアワーレコード、コロナ禍で増えたバーチャルレース大会をプレーバック。さらに、二つに分かれることになる2021年の国内ロードレースについてまとめる。



スペインでの逆転劇 東京五輪ロードレース代表決定

10月にスペインのレースに出場した増田成幸は20位で完走し、UCIポイントを獲得して五輪代表を決めた10月にスペインのレースに出場した増田成幸は20位で完走し、UCIポイントを獲得して五輪代表を決めた YouTubeライブより
JCF(公益財団法人 日本自転車競技連盟)は、ヨーロッパでの主要レースが7月に再開されることにあわせ、停止されていた東京五輪代表選考期間を再開するとした。しかし、国内でのUCIレースが軒並み中止となり、全日本選手権も中止となったことで、ランキングの元となるUCIポイントは事実上日本で獲得出来ない状態となった。日本国内を主戦場とする宇都宮ブリッツェンの増田は、選考基準が不公平であるとしてスポーツ仲裁機構に訴えたものの、主張は認められなかった。

11月のスペイン遠征報告会での増田成幸「このメンバーで最後のチャレンジが出来て良かった」11月のスペイン遠征報告会での増田成幸「このメンバーで最後のチャレンジが出来て良かった」 photo:Satoru Kato選考期間再開時点でのランキング首位は、新城幸也(バーレーン・マクラーレン)。今シーズン序盤からUCIポイントを積み重ね、昨年まで首位だった増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を逆転。7月にヨーロッパのレースが再開されるとさらにその差を広げた。3位につけていた中根英登(NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス)もレース再開にあわせて再渡欧し、ワールドツアー「ブルターニュ・クラシック」でUCIポイントを獲得して2位に浮上。増田は代表圏外となる3位に落ちることに。

宇都宮ブリッツェンは、10月最後のチャンスとなるスペインのワンデーレースへ電撃出場。主戦場となるJプロツアーを欠場してまで強行したレースで増田のポイントの加算に成功し、僅差で2位に浮上。五輪代表を決めた。

これにより、東京五輪ロードレースの日本代表は、男子は新城と増田、女子は與那嶺恵理と金子広美に内定した。



中距離種目の五輪代表が力を見せたトラック全日本選手権

全日本選手権でアルカンシェルを初披露した梶原悠未(筑波大学大学院)は6種目で優勝全日本選手権でアルカンシェルを初披露した梶原悠未(筑波大学大学院)は6種目で優勝 photo:Satoru Kato
東京五輪代表に内定している橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)も5種目で優勝した東京五輪代表に内定している橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)も5種目で優勝した photo:Satoru Katoトラック競技の全日本選手権は、11月5日から8日の4日間に渡り、群馬県前橋市のヤマダグリーンドーム前橋で開催された。

2月末に行われた世界選手権で、オムニアムの世界チャンピオンになった梶原悠未(筑波大学大学院)が、アルカンシェルを初披露。五輪代表にも内定している実力を存分に見せ、6種目で優勝して見せた。男子も、五輪代表に内定している橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)が5種目で優勝。東京五輪本番に向けて順調な仕上がりを見せた。

MTB全日本選手権も五輪代表が連覇記録を伸ばす

MTB XCO全日本選手権 バイクを掲げ、笑顔を見せる山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)MTB XCO全日本選手権 バイクを掲げ、笑顔を見せる山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM) photo:So Isobe
MTB XCO全日本選手権 女子エリートで優勝した今井美穂(CO2bicycle)MTB XCO全日本選手権 女子エリートで優勝した今井美穂(CO2bicycle) photo:Makoto AYANOトップタイムで優勝した清水一輝(BLAZE A TRAIL)トップタイムで優勝した清水一輝(BLAZE A TRAIL) photo:Makoto AYANO

10月に秋田県田沢湖での開催が予定されていたMTB全日本選手権は、コロナ禍により延期された世界選手権と開催日が重なったため、11月6日から8日に長野県の富士見パノラマに場所を変更して行われた。

ダウンヒル男子エリートは清水一輝(BLAZE A TRAIL)が、0.152秒差という僅差で2年連続4度目の優勝。女子エリートは岩崎美智恵(TRIPCYCLE GLOBAL RACING)が昨年に続き連覇を達成した。

最終日に行われたクロスカントリー男子エリートは、山本幸平(DREAM SEEKER MTB RACING TEAM)が6年連続12回目の優勝。女子エリートは今井美穂(CO2bicycle)が3連覇を達成した。

山本は12月に初めて開催されたMTB XCC(クロスカントリー・ショートトラック)の全日本選手権でも優勝し、初代王者となった。

シクロクロス全日本選手権 白熱した接近戦と終盤の大逆転

沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を下し2度めの日本チャンピオンに沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を下し2度めの日本チャンピオンに photo:MakotoAYANO女子エリートを制した今井美穂(CO2bicycle)女子エリートを制した今井美穂(CO2bicycle) photo:MakotoAYANO

唯一例年通りの時期の開催となったシクロクロス全日本選手権は、長野県の飯山市で行われた。男子エリートは、沢田時(チームブリヂストンサイクリング)と、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)の激しいバトルの末、沢田が4年ぶり2度目の優勝。

女子エリートは、首位を走っていた與那嶺恵理(OANDAJAPAN)を、今井美穂(CO2bicycle)が終盤に逆転して3年ぶり2度目の優勝。MTBとあわせ2冠を達成した。



アワーレコードに挑戦した今村駿介が歴代5位の好記録をマーク

アワーレコードに挑戦した今村駿介 52.468kmを記録アワーレコードに挑戦した今村駿介 52.468kmを記録 photo:Satoru Kato
11月下旬、東京五輪の会場となる伊豆ベロドロームで大きなチャレンジが行われた。今村駿介が日本人初となるアワーレコードに挑戦。歴代5番目の記録となる52.468kmを走破し、日本人選手の新たな可能性を見せた。今後チャレンジする選手が続くことを期待したい。



コロナ禍で加速したバーチャルレース開催

オリオンスクエアをメイン会場に開催されたデジタルジャパンカップオリオンスクエアをメイン会場に開催されたデジタルジャパンカップ photo:Makoto.AYANO
コロナ禍により、バーチャルレースやイベントが世界的に盛んになったのも2020年の特色だ。

日本では学連(日本学生自転車競技連盟)が、国内初のバーチャルレースのシリーズ戦を開催したほか、国内ロードレースチームが合同でレースを主催するなど、参加型レースも多く開催された。10月には中止になったジャパンカップの代わりに「デジタルジャパンカップ」が開催され、世界中からオンラインで選手が参加。さらには世界選手権も開催された。

デジタルジャパンカップで再現されたコースデジタルジャパンカップで再現されたコース 初開催されたUCI Eスポーツ世界選手権初開催されたUCI Eスポーツ世界選手権 (c)Zwiftl

tacxのスマートローラー ダイレクトドライブ式で、路面の凹凸や勾配を再現するtacxのスマートローラー ダイレクトドライブ式で、路面の凹凸や勾配を再現する photo:Satoru Katoコロナ禍になる以前からバーチャルレースの可能性は各方面で検討されてきた。例えば、時間と場所に縛られないメリットを活かし、平日夜にレースを開催することも可能だ。Jプロツアーを主催するJBCFも、参加型のバーチャルレース開催に向けて2019年にテストイベントなどを開催して検討していた。コロナ禍によりバーチャルレースが増えたというよりも、コロナ禍がバーチャルレース開催を加速させたというのが正しいだろう。

移動が制限される中でも国際大会開催が可能になった一方で、スマートローラーの有無などバーチャルライドをするための機材の公平性や、回線不都合などにより止まってしまう「デジタル落車」など、解決すべき問題は多い。まだ発展途上な部分が多いとも言えるが、2021年もコロナ禍の影響が続くことを考えると、更なる進化を期待したいところ。リアルレースが開催されるのが一番ではあるが。



2021年の国内ロードレースはどうなるのか?

Jプロツアーでは受付などには透明ビニールシートが張られ、受付係はフェイスシールドを着用して対応したJプロツアーでは受付などには透明ビニールシートが張られ、受付係はフェイスシールドを着用して対応した photo:Satoru Kato無観客の群馬CSCホームストレートを通過するメイン集団無観客の群馬CSCホームストレートを通過するメイン集団 photo:Satoru Kato

一時はレースが開催されないまま終わると言われた2020年だが、主催者や理解のある自治体のおかげで7月以降レースが開催出来るようになった。Jプロツアーの開幕戦にはレース主催団体が数多く訪れ、会場で実施されていた新型コロナウィルス感染拡大防止対策を視察。以後開催された大会のモデルケースとなった。

その感染防止対策もあり、国内大会での感染例が無かったのは幸いだった。しかし他のスポーツでは感染例が出ていることや、国内感染者数が増加している現状を考えると、これで安全とは言い切れない。「感染者が出ていないとは言っても、PCR検査をしてないから実際には分からない」という声があるのも確かだ。

ヨーロッパのUCIレースでは、選手やレース関係者が事前にPCR検査の結果を提出することが義務付けられているという。同じことを日本国内の非UCIレースで行うことは様々な面で現実的とは言えない。そこまでの対策が要求されるようになれば、開催できるレースは限定的になってしまうだろう。

1日も早く、新型コロナウィルスの治療法や治療薬が確立されることを願うばかりだ。

地域密着型9チームが参戦する「ジャパンサイクルリーグ」地域密着型9チームが参戦する「ジャパンサイクルリーグ」
そして2021年は、国内ロードレースの新たなシリーズ戦「ジャパンサイクルリーグ(以下JCL)」がスタートする。これまでJプロツアーに参加してきたチームの一部がJCLに参加することを発表している。

2021年のJプロツアーチームと、JCL参加チームは以下の通り。
Jプロツアー参加チームJCL参加チーム
マトリックスパワータグ 宇都宮ブリッツェン
愛三工業レーシングチーム那須ブラーゼン
チームブリヂストンサイクリングヴィクトワール広島
リオモ・ベルマーレ・レーシングチーム(仮)レバンテフジ静岡
弱虫ペダルサイクリングチームVC福岡
eNShare レーシングチームさいたまディレーブ
シマノレーシング チーム右京
イナーメ信濃山形キナンサイクリングチーム
稲城FIETS クラスアクトスパークルおおいたレーシングチーム(新)
群馬グリフィンレーシングチーム
エカーズ
チームユーラシア-iRCタイヤ
シエルブルー鹿屋
JBCFは先日3月14日に兵庫県の播磨中央公園で開幕戦を行い、年間18戦程度を開催予定と発表。2月初旬には詳細な予定を発表するとしている。対するJCLは、3月27日に開幕するスケジュールを12月31日に発表した。JCLは、JCL登録チーム以外でも出場出来るレースを設定するとしているが、どのレースになるかは不明。関係者の話では、双方が連携する方向性は見えていないと言う。

国内ロードレースはどこへ向かうのか国内ロードレースはどこへ向かうのか photo:Satoru Kato
まだ公表されていない部分も多いが、ハッキリしているのはJプロツアーとJCLの独立した2つのシリーズ戦が開催されるということ。これが国内ロードレースにプラスになるのか、関係者に今一度問いたい。

「事実として今まであったリーグが真っ二つに分かれてしまうことは隠しようもない事実。この状況を一刻も早く一本化して、ひとつのリーグとして全員が同じレースを走れるようになって欲しいとも思う」

宇都宮ブリッツェンの2021年体制発表での増田成幸の言葉が、選手の総意を代弁をしていると思うのだが。


text:Satoru Kato
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