200kmオーバーのルクセンブルククイーンステージは序盤から横風分断が発生し、100kmに渡る追走劇が終わってもなおアタックの応酬に。残り10kmで仕掛けたディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)がステージ2勝目を飾ると共に総合首位返り咲きに成功した。



5秒リードでクイーンステージに挑むエドゥアルド・グロス(ルーマニア、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)5秒リードでクイーンステージに挑むエドゥアルド・グロス(ルーマニア、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス) photo:CorVos
残り2日間となったツール・ド・ルクセンブルク(正式名称シュコダ・ツール・ド・ルクセンブルク、UCI2.Pro)第4ステージは、ルクセンブルク南西部のロダンジュから北部の丘陵地帯を大きく回り、最後はGPMコル・デ・リューロップ(ヨーロッパの丘)を含むディフェルダンジュの小周回を回る200kmオーバーのクイーンステージだ。

この日のスタート時点で首位エドゥアルド・グロス(ルーマニア、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)と2位ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のタイム差はわずか5秒で、3位アモリ・カピオ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)までは9秒。例年僅差で総合争いが決する大会だけに、山岳ポイントが合計6つ用意されているこの日は各チームの戦略が交錯した。

アップダウンコースで先行する8名の逃げグループアップダウンコースで先行する8名の逃げグループ photo:CorVos
メイン集団を牽引するNIPPOデルコ・ワンプロヴァンスメイン集団を牽引するNIPPOデルコ・ワンプロヴァンス photo:CorVos
長いアタック合戦を経て逃げたのは、フランス王者アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やグレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)を含む8名。メイン集団はしばらく平穏に進むと思われたが、フィニッシュまで140kmを残した横風区間でロット・スーダルやサーカス・ワンティゴベールなどベルギーチーム主導による猛烈なペースアップが始まった。

吹きさらし区間のペースアップに後方の選手たちはたまらず千切れ、20名ほどがエシュロンを形作って先行する状況に。ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)などが強烈なペースを刻むグループには総合逆転を狙うウリッシが残ったが、首位グロスは後方に取り残されてしまう。距離1/4を消化した段階で早くもレースは大きく動いた。

後方グループでは遅れたグロスを引き上げるべくNIPPOデルコ・ワンプロヴァンスが牽引したものの、明確な意思を持って逃げるウリッシやデゲンコルプを含む第1追走グループとの距離は開くばかり。フィニッシュまで65kmを残したタイミングでその差は2分まで広がり、逃げるデマールグループを飲み込んだ。

積極的な走りで集団分断を行ったジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)積極的な走りで集団分断を行ったジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
逃げるバティスト・プランカールト(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)と総合10位ヤン・バークランツ(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)逃げるバティスト・プランカールト(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)と総合10位ヤン・バークランツ(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール) photo:CorVos
しかしフィニッシュまで距離を残していたこと、そして第2グループのメンバーが膨らんだことで、決まったかに思えた分断は100kmに及ぶグロスグループの追走の末に合流する。だが、その後始まる1級山岳3連発の残り30km区間は完全にウリッシのフィールドだった。

1つめの1級山岳ではバティスト・プランカールト(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)と総合10位ヤン・バークランツ(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)が飛び出すも、残り17kmのGPMコル・デ・リューロップで吸収。すると集団後方ではリーダージャージを着るグロスがついに遅れた。

ウリッシなど登りを得意とする選手たちが次々と加速し、アタックと分裂、吸収を繰り返しながら2度目のGPMコル・デ・リューロップへ。ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)やトニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼル)が積極的に動く中、チャンスを見出したウリッシが残り10kmで仕掛けた。

力強く加速したウリッシにはウェレンスとマルクス・フールゴー(ノルウェー、ウノエックス・ノルウェージャンデヴェロップメントチーム)、エメ・デヘント(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)が合流し、やはりアタックを繰り返しながらフィニッシュまでの距離を減らしていく。アージェードゥーゼルが牽引する第2グループは追いつかず、勝負は先頭4名に絞られた。

ステージ2勝目を掴んだディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)ステージ2勝目を掴んだディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
大成功のディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が静かに喜ぶ大成功のディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が静かに喜ぶ photo:CorVos
全員の猛烈マークを受けたウリッシだったが、先行するフールゴーを風除けにしてスプリントを開始し、追い込むデヘントを抑えてフィニッシュ。強い走りで総合首位返り咲きを果たす、ステージ2勝目を挙げてみせた。

「一日中横風と戦う厳しいステージだった。チームメイトがトラブルから守ってくれ、さらに最後の登りでは良い位置で走らせてくれたんだ。残り10kmでアタックし、ウェレンスたちとグループを組んだ。脚のフィーリングは最高だったし、明日も総合首位のまま食い下がりたい。今日のチームワークを見て自信を持っているよ」と、大成功の1日を終えたウリッシは話している。

総合首位返り咲きを果たしたディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)総合首位返り咲きを果たしたディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
混沌としたクイーンステージを終え、総合成績は大きくシャッフル。ウリッシがデヘントに対して17秒差の首位返り咲きに成功し、フールゴーは19秒差、ウェレンスは21秒差に。翌最終日もウリッシ向きのコースであり、トラブルに巻き込まれない限りウリッシの総合優勝は堅いと目されている。

ツール・ド・ルクセンブルク2020第4ステージ結果
1位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 4:45:23
2位 エメ・デヘント(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)
3位 マルクス・フールゴー(ノルウェー、ウノエックス・ノルウェージャンデヴェロップメントチーム)
4位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
5位 アレクサンダー・クリーガー(ドイツ、アルペシン・フェニックス) 0:15
6位 ヤン・バークランツ(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)
7位 マウロ・シュミッド(スイス、レオパードプロサイクリング)
8位 ワジム・プロンスキー(カザフスタン、アスタナ)
9位 オレリアン・パレパントル(フランス、グルパマFDJ)
10位 アンドレアス・クロン(デンマーク、リワル・レディーネス サイクリングチーム)
個人総合成績
1位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 12:24:07
2位 エメ・デヘント(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール) 0:17
3位 マルクス・フールゴー(ノルウェー、ウノエックス・ノルウェージャンデヴェロップメントチーム) 0:19
4位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 0:21
5位 アレクサンダー・クリーガー(ドイツ、アルペシン・フェニックス) 0:31
6位 ヤン・バークランツ(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール) 0:34
7位 オレリアン・パレパントル(フランス、グルパマFDJ) 0:38
8位 クレモン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 マウロ・シュミッド(スイス、レオパードプロサイクリング)
10位 アンドレアス・クロン(デンマーク、リワル・レディーネス サイクリングチーム)
その他の特別賞
山岳賞 セルジオロマン・マルタン(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ポイント賞 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ヤングライダー賞 オレリアン・パレパントル(フランス、グルパマFDJ)
チーム総合成績 サーカス・ワンティゴベール
text:So Isobe
photo:Corvos

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