2日連続の集団スプリントでアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)がリベンジを達成。舗装状態の悪い危険なコース設定に選手たちから改善を求める声が上がっている。



総合首位カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)ら、特別ジャージ着用メンバーが先頭に並ぶ総合首位カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)ら、特別ジャージ着用メンバーが先頭に並ぶ (c)CorVos
ベルギー西部のワロン地方で開催されているツール・ド・ワロニー(UCI2.Pro)第2ステージは、フラーヌ=レ=アンヴェンからワーフェルを目指す172.3km。1つの山岳ポイントも無い完全フラットコースの最後に、再びトップスプリンターが火花を散らした。

初日にも逃げ、ボーナスタイムを得て総合2位となったクリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が2日連続エスケープ。トム・ヴィルトゲン(ルクセンブルク、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)ら合計6名が逃げ、メイン集団では総合首位カレブ・ユアン(オーストラリア)で2連勝を狙うロット・スーダルがコントロールを担った。

2日連続逃げのクリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)2日連続逃げのクリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
バーレーン隊列の最高尾を走る新城幸也(バーレーン・マクラーレン)バーレーン隊列の最高尾を走る新城幸也(バーレーン・マクラーレン) (c)CorVos
終盤に入るとグルパマFDJやアルケア・サムシックといったスプリンターチームがペースアップに協力し、逃げグループとの差は縮まっていく。このままスプリント勝負に持ち込まれると思われたものの、状態の悪い道や障害物が連続するワーフェルの周回コースがプロトンを混乱に陥れた。

フィニッシュまで残り32km地点のランドアバウトでは大きな落車でライアン・ギボンズ(南アフリカ、NTTプロサイクリング)が肩から落車し、更に残り16kmではジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング)も落車してしまう。急勾配の石畳区間でサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)が遅れる一方、レース先頭ではフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)がアタックを繰り出した。

終盤に逃げたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名終盤に逃げたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名 (c)CorVos
3日目、4日目の丘陵ステージを待たず、歩道を使って仕掛けたジルベール。元世界王者の動きにゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)とロイック・ヴリーヘン(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)、アモリ・カピオ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)が反応し、スプリンターチームを尻目に10秒ほどのリードを生み出した。

落車や遅れによって人数を減らしていたメイン集団だったが、CCCチームのコントロールによって残り6kmでジルベールらの動きを封じ込めることに成功する。遅れたベネットからフロリアン・セネシャル(フランス)にエースを切り替えたドゥクーニンク・クイックステップ、そしてロット・スーダルがペースアップを行い、勝負は2日連続の集団スプリントに持ち込まれた。

カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)を抜き去るアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)を抜き去るアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) (c)CorVos
スプリントでユアンを下したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)スプリントでユアンを下したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) (c)www.trworg.be
ロット・スーダルの最終発射台を務めるジャスパー・デブイスト(ベルギー)がユアンをリードアウトしたものの、「タイミングが早すぎると感じたので全力で踏み出せなかった。それがライバルにチャンスを与えることになってしまった」と言うユアンをデマールが抜き、先着。前日早駆けで沈んだ元フランス王者がリベンジを達成した。

「(発射台役の)ジャコポ(グアルニエーリ)がかなり力を使っていたので残り400mからユアンの番手につけることを選んだ。彼がスプリントするのを待ち、互いにトップスピードに達した時に追い抜けるぞと思ったんだ。150mの短距離スプリントは自分の得意パターンではないけれど、今日の勝負では正しいタイミングだった」と話すデマールは12日前のミラノ〜トリノに続く今季2勝目を達成。なお9日後のツール・ド・フランスにおいてグルパマFDJはティボー・ピノ(フランス)を軸とした総合一本体制で臨むため、デマールはジロ・デ・イタリアへの出場を予定している。

2秒差を守ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)2秒差を守ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) (c)CorVos
2位に入ったユアンはボーナスタイム8秒を得て、2日連続逃げでボーナスタイムを稼いだデボントとの2秒差を維持してリーダージャージをキープ。新城幸也(バーレーン・マクラーレン)は先頭集団内フィニッシュでワロニー2日目を終えている。

また、この日はレース終了後に落車やパンクを誘発した路面状態の悪いコースに選手たちの不満が爆発した。イーリョ・ケイセ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)は穴だらけの道の写真をTwitterにアップし、ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)はその投稿を引用して「UCIはきっと何の責任も負う気はないんだろう。素晴らしい連盟だ」と皮肉るコメントを発信。更に5位に入ったセネシャルも「レース運営委員会にレッドカード。状態の悪い道路や、あちこちにトラップが潜んでいるサーキットコースでのスプリントはあまりにも危険だ。いつも問題提起されるのは死亡事故や重傷者が出てから。選手の安全担保は優先事項ではないのか?」と不満を募らせている。

また、グレッグ・ファンアーヴェルマート(べルギー、CCCチーム)もレース中に路面の穴に突っ込んで落車する事態に見舞われた。道端の畑に転がったファンアーヴェルマートに大きな怪我はなかったものの、オリンピックチャンピオンを示すゴールドペイントのバイクが破損。「ヘルシーな食べ物は大好きだけど、(畑に突っ込んで)野菜を近くから眺めるのは今日やりたかったことじゃない」と振り返っている。
ツール・ド・ワロニー2020 第2ステージ結果
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 3:57:59
2位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
3位 ダニエル・マクレー(イギリス、アルケア・サムシック)
4位 ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)
5位 フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位 アーヴィッド・デクレイン(オランダ、リワル・レディーネス サイクリングチーム)
7位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング)
8位 ドリス・ファンゲステル(ベルギー、トタル・ディレクトエネルジー)
9位 ライオネル・タミニオー(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)
10位 エドワード・プランカールト(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)
個人総合成績
1位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 8:15:03
2位 クリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 0:02
3位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 0:06
4位 イェンス・レインダース(ベルギー、ハーゲンスバーマン・アクセオン) 0:09
5位 ダニエル・マクレー(イギリス、アルケア・サムシック) 0:12
6位 トム・ヴィルトゲン(ルクセンブルク、ビンゴール・ワロニーブリュッセル) 0:14
7位 ジェームス・フォシュ(ニュージーランド、ハーゲンスバーマン・アクセオン) 0:15
8位 ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック) 0:16
9位 アーヴィッド・デクレイン(オランダ、リワル・レディーネス サイクリングチーム)
10位 ライオネル・タミニオー(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)
その他の特別賞
山岳賞 トム・パコ(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)
ポイント賞 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
ヤングライダー賞 イェンス・レインダース(ベルギー、ハーゲンスバーマン・アクセオン)
チーム総合成績 AG2Rラモンディアール
text:So.Isobe
photo:CorVos