クオーレマークでお馴染みのイタリアンチクリ、デローザが多くの人から愛されたカーボンロード「IDOL」をモデルチェンジ。洗練されたフレームシェイプにディスクブレーキ化、ケーブルフル内装化など進化を遂げたミドルグレードのインプレッションをお届けしよう。



デローザ IDOLデローザ IDOL (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
デローザのカーボンバイクラインアップで数多くのサイクリストから支持されているミドルグレード「IDOL」。2007年のデビュー時はミドルグレードながらアクア・エ・サポーネのチームバイクとしてレースを駆け回り、ツアー・オブ・ジャパンでは富士山ステージの優勝を勝ち取るなどレーシングバイクとして輝きを放つ存在だった。

その後レーシングイメージが強いアグレッシブなデザインとなった第2世代を経て、2014年に第3世代へとモデルチェンジ。2020年現在に至るまでの6年の月日の間で弓なりのトップチューブはIDOLのアイコンとなり、デローザのイタリアンなデザイン性を象徴する存在となった。

トップチューブから繋がるシートステーは扁平形状とされているトップチューブから繋がるシートステーは扁平形状とされている ボリュームアップしたダウンチューブには新ロゴが輝くボリュームアップしたダウンチューブには新ロゴが輝く ディスクブレーキ化にあたりフォークブレードは骨太な作りとなっているディスクブレーキ化にあたりフォークブレードは骨太な作りとなっている


さらに3代目IDOLのフレームペイントは時代のトレンドに合わせ変化していったため、ラインアップされ続けた6年間でいつの時代も古さを感じさせることはなく、多くのサイクリストから愛されてきた。

そんなIDOLがモデルチェンジを果たして4代目がデビューしている。既にインプレを行なったMERAKやSK Pininfarinaと同様、今回の進化で見え隠れする要素はデローザ現代表クリスティアーノ氏のレトロ・フューチャーという考え方。簡単に説明すると歴史を大切にしながら、未来を見据えるということ。スクラップ&ビルド的なポストモダンの考え方とは異なるとクリスティアーノ氏は説明する。

ケーブル内装システムにはFSAのACRが採用されているケーブル内装システムにはFSAのACRが採用されている 弓なりのフレーム形状がIDOLのアイデンティティ弓なりのフレーム形状がIDOLのアイデンティティ

BB386を採用したボトムブラケットBB386を採用したボトムブラケット リア三角もモノコック構造とされているリア三角もモノコック構造とされている


今作でもIDOLを象徴する弓なりのフレーム形状は健在。トップチューブからシートステーにかけて大きくカーブを描くことでしなりを生み出し、快適性の向上を狙わんとするデザインである。新型となってもその造形を引き継いでおり、IDOLをIDOLたらしめている。

一方で、新型IDOLはフルモデルチェンジという言葉が当てはまるように、ほぼ全ての要素がアップデートされている。ダウンチューブはボリュームアップすると同時にカムテールのようなデザインにリファインされており、剛性と空力性能を向上させている。

IDOLは非常にエレガントな塗装が行われているIDOLは非常にエレガントな塗装が行われている 新型IDOLは新たにケーブルフル内装とされている新型IDOLは新たにケーブルフル内装とされている


シートチューブとシートポストもエアロな形状に変更され、フレーム内蔵の臼式クランプが採用された。この影響を受けIDOLの象徴であるアーチの造形がくっきりと浮かび上がり、まさに自身がIDOLであると主張しているかのようなルックスを獲得した。これらのフレーム造形のブラッシュアップは現代トレンドを捉えており、未来へと繋がるフレームとして仕上げられている。

新型IDOLはディスクブレーキ専用フレームとなり、ケーブル内装システムを採用していることもポイントだ。フレームの造形とも相まって、セミエアロなオールラウンドレーサーのような印象となっている。また、ケーブルが露出しないことで見た目もスッキリとし、より洗練された雰囲気を醸している。

シートポストはカムテールデザインが採用されているシートポストはカムテールデザインが採用されている ヘッドバッジのクオーレマークはこれまで通りヘッドバッジのクオーレマークはこれまで通り ディスクブレーキを装着する部分のフォークブレードが細くなっているディスクブレーキを装着する部分のフォークブレードが細くなっている


フレームペイントも前作末期からのシンプル路線を踏襲。フォークブレードやチェーンステー内側、シートポストにアクセントカラーを配置し、フレームとフォーク外側はエレガントな色でペイントされている。フレーム造形、ハンドル周りの仕様、ペイント全てが洗練されており、新しいブランドロゴとの相性もバッチリだ。デローザの新時代にふさわしい1台に仕上げられている。

日本国内ではホワイト、レッドルビー、グレーマットという3色展開で、43〜56まで6サイズが揃う。販売ラインアップはシマノ105完成車(430,000円)とフレームセット(298,000円)の2種類だ。今回はスコープのディープリムホイール「R4」が装着されたテスト仕様のバイクでインプレッションを行った。



― インプレッション

「お洒落で走りが良い、ミドルグレードとして魅力的な存在」藤野智一(なるしまフレンド)

「お洒落で走りが良い、ミドルグレードとして魅力的な存在」藤野智一(なるしまフレンド)「お洒落で走りが良い、ミドルグレードとして魅力的な存在」藤野智一(なるしまフレンド)
IDOLはフレームそのもののの振動吸収性が秀でているバイクです。衝撃の感じ方はタイヤの空気圧やチョイス次第で変わってくる部分ですが、それを加味しても弓なり形状によるフレームの快適性は高いと思います。剛性が不足しているかと言われるとそうではない。振動吸収を担わない部分のチューブを太くすることで剛性を確保しており、走行性能も良いんですよ。

例えば、フロントフォークやダウンチューブ、BB周りが見た目以上にしっかりしています。チェーンステーもエンデュランスバイクのように一度下方に下げてからリアに向かって上がるような設計ではなく、ストレートでエンドに接続されていて、ここが快適性にフォーカスするバイクとは異なる踏み心地を演出しているのだと思います。

「フレームの剛性感が丁度良くスーッと加速していく」「フレームの剛性感が丁度良くスーッと加速していく」 硬くもなく、柔らかくもない丁度よいバランスが取れているフレームなので、ハイエンドレーサーの瞬発力こそありませんが、気持ちよい加速を感じられます。登りのシチュエーションではある程度軽いギアを回していけば激坂でもスーッとスピードが乗っていきますし、平地でもひと踏みずつ力をかけていくのではなく、自分が気持ちよさを感じるところでペダリングをすればスピードを維持しやすいバイクですね。

初心者の方がロングライドをゆっくりと流すツーリングのような走り方でも良いけれど、「もう少し速く走りたいな」という気持ちがある人、ロングライドを速く走りたい人にフィットすると思います。ガツガツ力をかけても脚の負担になりにくい柔らかさもあるので、レースで使ってみても面白いかもしれませんね。

ハンドリングについては内装のワイヤリングやディスクブレーキ用の設計の影響があるのか、最初は癖を感じましたが、慣れでカバーできる範囲内ですので気にする必要はないでしょう。コーナーリング中の挙動も安定しています。ただ、癖の有無に関わらず、乗りはじめの時にスラローム走行を行って自転車のキャラクターを知ることが大切だと思っています。初めてのダウンヒルでバイクの挙動を把握していないと危険ですから。

ケーブル内装のFSA ACRシステム 「組むのは手間ですがルックスもスマートですね」ケーブル内装のFSA ACRシステム 「組むのは手間ですがルックスもスマートですね」 内装式ワイヤリングの見た目は良いですし、メーカーとしても空気抵抗を抑えたいという気持ちもあるのでしょう。完成車にはシマノ105が搭載されていますが、スラムの無線変速システムやシマノのDI2などにアップグレードすればワイヤーの露出をほぼゼロにすることができます。

今回のテストバイクにはハイトの高いレーシーなホイールが装着されていましたが、ローハイトのホイールを入れてヒルクライム性能を高めて上げても良いでしょう。アルミ製のローハイトホイールで乗り心地が硬くなってしまう場合はチューブレスタイヤと組み合わせてあげると快適性を維持できると思います。カスタマイズの方向も幅広く、見た目もおしゃれ。さらに実際に気持ちよく走れるバイクなので、ミドルグレードとしては魅力的な存在です。

「どんなライダーが乗っても速さと楽しさを感じる優等生」川原建太郎(ワイズロード東大和)

「どんなライダーが乗っても速さと楽しさを感じる優等生」川原建太郎(ワイズロード東大和)「どんなライダーが乗っても速さと楽しさを感じる優等生」川原建太郎(ワイズロード東大和)
優しい見た目とは裏腹にレーシーな走りも見せてくれる玄人でも満足できるバイクですよ。IDOLは購買層が非常に広いこともあり、ビギナーフレンドリーなバイクかと思いきや、意外とヘッドチューブは短めの設定で、アップライトになりすぎないポジションを採用しているんです。

走りの面でも扱いやすさを感じますし、登りでも平地でも、高ケイデンスでも高トルクのペダリングでもバイクの良さが現れてくれます。パワフルに力を掛けてみてもバイクのリズム感を掴みやすく、思った以上にグイグイと加速してくれる感覚は面白かったです。しっかりと乗り込んでいる方でも満足できるバイクかなと思いますよ。

ボトムブラケット周りの剛性は柔らかめという印象なので、レースでスプリント勝負をかける人だけは違うバイクを選んだ方が良いけど、それ以外であれば幅広い方にフィットするでしょう。正直、私のように大柄でパワーがあるタイプには合わないタイプかと思っていましたが、走ってみたらそんなことありませんでした。

「ダンシングでのスピードの乗り方が気持ち良い」川原建太郎(ワイズロード東大和)「ダンシングでのスピードの乗り方が気持ち良い」川原建太郎(ワイズロード東大和) 特にダンシングの一歩目でスピードを乗せやすい剛性感が気持ち良い。バイクが低重心に仕上げられていて、ダンシングのリズムに合わせて車体を左右に振りやすいですし、トルクを掛けた時にシートステーのしなりを感じられるのが心地良いです。バイクと一体となって走る感覚が掴みやすい自転車だなと思いますね。

パワーが低めの方にとっては丁度良い剛性感で、低トルクで踏んでいく状況でもバイクが応えてくれます。トルクを掛けずにペダルをくるくると回していても嫌な感じはしないので、ワイドギアを装着して楽しむ方向性もマッチしています。この懐の深さがIDOLらしさだと感じます。

テスト車両にはスコープのR4ホイールが装着されていましたが、これがIDOLとの組み合わせがまた良いんですよ。フレームがマイルドな分、ホイールでカチッとした剛性感を与えてあげることで、乗っていて楽しいバイクになっています。オールラウンドなフレームですが、ケーブルフル内装によるヘッド周りのエアロ感と45mmディープのエアロ性能が相まり高速巡航の気持ち良さがありました。軽量なホイールとの相性も良さそうですし、ホイールのメリットを感じ取りやすいバイクだと思います。

シートポストが塗り分けられているのも良いですよね。シートポストは黒色が当たり前と思われがちですけど、そこをデザインしてくるのはイタリアンブランドらしいと思います。IDOLは乗りこなすために高度なスキルを求めてこず、どの領域でも速く、ロードライドを楽しめる、優等生な1台でした。

デローザ IDOLデローザ IDOL (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
デローザ IDOL
カラー:ホワイト、レッドルビー、グレーマット
サイズ:43、46、48、51、53、56
ハンドル&ステム:FSA ACRシステム
BB:BB386
完成車:シマノ105+シマノWH-RS170
完成車価格:430,000円(税抜)
フレーム価格:298,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

藤野智一(なるしまフレンド)藤野智一(なるしまフレンド) 藤野智一(なるしまフレンド)

92年のバルセロナ五輪ロードレースでの21位を皮切りに、94/97年にツール・ド・おきなわ優勝、98/99年は2年連続で全日本選手権優勝など輝かしい戦歴を持つ。引退してからはチームブリヂストンアンカーで若手育成に取り組み同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長を務める。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。

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川原建太郎(ワイズロード東大和)川原建太郎(ワイズロード東大和) 川原建太郎(ワイズロード東大和)

ワイズロード東大和店の副店長であり、同社実業団チームのキャプテンも務める。JBCFのE1クラスで走っていた経験を持つ実力派スタッフで、速く走りたいというホビーレーサーへのアドバイスを得意とする。バイオレーサー1級の資格を持ち、ライダーのパフォーマンスを引き出すフィッティングに定評がある。東大和店はワイズロードの中でも関東最大級の店舗で、各ジャンルに精通したスタッフと豊富な品揃えが特徴だ。

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ウェア協力:カステリ

text:Gakuto.Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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