NSWやFirecrestといったプロ御用達のハイスペックホイールを手がけるジップから、衝撃のアンダー15万円を達成したカーボンホイール「303 S」が登場。ディスクブレーキ専用、内幅23mmの超ワイドフックレスリム、そして新しいブランドロゴを投入した注目ホイールを早速試した。



302の後継モデル、303 Sがデビュー。フックレスチューブレスリムを採用した意欲作だ302の後継モデル、303 Sがデビュー。フックレスチューブレスリムを採用した意欲作だ photo:So.Isobe
ジップといえば、今現在もアメリカ・インディアナポリスに拠点を置き、メイド・イン・USAでエアロダイナミクスを突き詰めるコンポーネントブランド。主軸となるホイール群はハイエンドのNSWを筆頭に、上級モデルのFirecrestなどがカチューシャ・アルペシンやモビスターといったトップチームに愛用され、その性能を磨き上げてきた。

今回登場した「303 S」は、2017年にデビューした「302」を置き換えるべく登場したエントリーカーボンホイール。超ワイド幅のフックレスリムなど最新トレンドを取り入れたディスクブレーキ専用設計のフルカーボンチューブレスホイールながら、税抜き141,800円という衝撃的な価格が大きな話題だ。

ディンプルレスは302同様。リム外幅は302よりも2mm広い27mmとなったディンプルレスは302同様。リム外幅は302よりも2mm広い27mmとなった photo:So.Isobeジップ初のフックレスリムを採用ジップ初のフックレスリムを採用 photo:Makoto.AYANO

フックレスリムの採用により、タイヤとの一体感が大きく向上フックレスリムの採用により、タイヤとの一体感が大きく向上 photo:So.Isobe
オールラウンドに使いやすいディンプルレスの45mmハイトや、ジップオリジナルの76/176ハブ、サピムのCXスプリントスポークは先代「302」と共通だが、303 Sでは303 Firecrest Tubeless Discの設計コンセプトを取り入れ、リム形状を大幅にアップデート。フックレス化との相乗効果によって空力はもちろんのこと、パワー伝達、転がり抵抗削減、そして軽量化をも同時に達成しているという。

ジップの発表によれば、フックレスリム最大のメリットは、タイヤビード保持用のフックをなくすことでリム内幅を広く取り、タイヤのサイドウォール変形量を抑えることにある。つまり荷重をかけても潰れにくい状態を作ることで、タイヤ変形による転がり抵抗を抑える効果があるのだ。

303 Sは28mmタイヤを組み合わせた際に最速となるよう設計されており、リム外幅は302よりも2mm広い27mmに、リム内幅は7mm広い23mmに拡大。低い空気圧でもタイヤのたわみが少なくなることで転がり抵抗を減少させるとともに、振動を吸収してライダーの疲労を軽減する効果もある。最大対応タイヤ幅も50mmと、しっかりとグラベルトレンドを抑えているのはさすがアメリカンブランドと言うべきだろう。

302から引き継ぐジップオリジナルの76/176ハブ302から引き継ぐジップオリジナルの76/176ハブ photo:So.IsobeスポークはサピムCXスプリントスポークはサピムCXスプリント photo:So.Isobe

モビスターが実戦投入したことで話題となった新ロゴを採用するモビスターが実戦投入したことで話題となった新ロゴを採用する photo:So.Isobe
もちろんフックを無くすことは軽量化にも繋がり、303 Sは302Disc(1695g)に対して155g軽い、ペア重量1540gを達成。従来のフック付きホイールと比べ、リムとタイヤの境目をフラットにすることによる空気抵抗低減も大きなメリットと言えるだろう。資料によれば、28mmタイヤを装着して平坦の舗装路を走行した場合、同クラスのホイールと比較して10ワットものパワーセーブを叶えているという。

推奨タイヤはジップのTangente Speed RT28 Tubelessだが、他ブランドのチューブレスタイヤも使用可能。適合リストは手元に届いていないので、今後の公表に期待したいところ。またチューブを入れてのクリンチャー使用はデメリットが多いため推奨されないものの、パンクなど応急処置であれば使用可能だという。



― インプレッション

ブランド史上初のフックレスリムに、そしてモビスターが実戦投入したことで話題を呼んだ新ロゴデザインに、ジップ新時代の幕開けを感じてやまない。

今回303 Sのインプレッションを担ったのは、マイバイク用に404 Firecrestを選び乗る、わたくしことCW編集スタッフの磯部。インターマックスより発表前のホイールを借り受け、テストを行う機会に恵まれた。

空力によるものか、フックレスチューブレスの抵抗低減によるものか、速度の落ち込みはかなり緩やかだ空力によるものか、フックレスチューブレスの抵抗低減によるものか、速度の落ち込みはかなり緩やかだ photo:Makoto.AYANO
今回組み合わせたタイヤは、ジップが開発ベースにしたTangente Speed RT28 Tubeless。チューブレスで気になるリムとの嵌合はかなり緩くコンプレッサーが不可欠(フロアポンプや一時充填式のチャージャーではNG)だったが、一度ビードを上げてしまえば、フックレスがもたらすリムとサイドウォールの一体感はルックス的にも満足できるもの。テストでは比較用に借り受けた303 Firecrest Tubeless Disc(タイヤは共通)と乗り比べながら、6.5barから空気を抜く方向で調整しながらテストを進めた。

303 Sと303 Firecrestを同条件で乗り比べた303 Sと303 Firecrestを同条件で乗り比べた photo:So.Isobe
303 Sと303 Firecrestのリム形状の違いを見る。303 Sの方がやや尖った断面形状を持つ303 Sと303 Firecrestのリム形状の違いを見る。303 Sの方がやや尖った断面形状を持つ photo:So.Isobe303 Firecrestは303 Sよりもリムとタイヤの隙間が大きい303 Firecrestは303 Sよりもリムとタイヤの隙間が大きい photo:So.Isobe


一言で表現するならば、303 Sは「流れる」ホイールだ。

前後1540gという重量の重心点がリム側にある(と感じる)ため、踏み出しや加速時こそモタつくものの、一度速度に乗せればスピードメーターの数字の落ち込みがことのほか緩やかなことに気づく。この性格は10km/hでも50km/hでも変わらないが、特に高速域で流れる感覚が強いのは、ジップお得意の空力ゆえか、それともフックレスチューブレスがもたらす転がり抵抗低減のおかげか。識別は困難を極めるものの、明確な違いがそこにはある。

スポークテンションは非常に高く、乗り味は縦にも横にも硬質。ダッシュ時の反応性やコーナリングのキレ味といった軽快感は303 Firecrest Tubeless Discが勝るものの、速度維持や直進安定性など、むしろ303 Sのリム重量が良い影響を及ぼしている部分もある。空力面も大きく改善されていると推測できるが、特に横風に対する安定性は光るところだ。

強く踏み込むと金属的なバネ感を伴って加速に繋げてくれる強く踏み込むと金属的なバネ感を伴って加速に繋げてくれる photo:Makoto.AYANO
303 Firecrestを比べれば急加速や登坂時にパワーは必要だが、例えばスピードが乗った状態からの登り返し、高速コーナーからの立ち上がりなど、絶えず中〜高速域で変化するコースは303 Sが得意とするフィールド。特に300〜400ワットから先が「美味しい」領域で、金属的なバネ感を伴って(それにはもちろん脚力が必要だが…)加速に繋げてくれる。なお筆者は体重65kgで、ベストな乗り味を探したところ空気圧は4.0から4.2barだった。

ライバルのアタックに素早く飛びつく、あるいは自ら仕掛けるといったレース中の動きを優先するなら303 Firecrestだが、地形に合わせてスピードを維持するグランフォンド的な走りなら303 Sを選んでも良い。そもそも両者間に15万円もの価格差があることを考えれば、303 Sは非常に優秀なホイールだ。

303 Firecrestなど30万円クラスのホイールを凌ぐミラクルは起こらないものの、20〜25万円級のホイールなら十分撃ち落とせる実力が303 Sにはある。ロードバイクのディスクブレーキ化がもたらしたエントリーカーボンチューブレスホイール戦線における、新たな注目モデルが登場した。



ジップ 303Sジップ 303S photo:Makoto.AYANO
ジップ 303 S
重量:1540g
対応ブレーキ:センターロックディスクブレーキ
スポーク:サピム CXスプリント
スポーク本数:24本
ドライバーボディ:スラムXDR、スラム/シマノ11s(カンパニョーロボディは別売)
税抜価格:フロント68,200円、リア73,600円、ペア141,800円

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