世界がパンデミックに陥る中、日本も例外なく新型コロナウィルス(Covid-19)の感染拡大が続いています。そのなかでサイクリストとしてどう行動すべきか。自転車に乗るならどうすれば良いのか、あるいは乗るべきでないのか。各国の例も参考に考えてみます。



安倍首相および政府は4月6日、近く緊急事態宣言を出す意向を固めました。早ければ明日にでも、外出ができなくなるかも知れません。それでも、先に危機的状況に陥った諸国のような「ロックダウン」にはほど遠い外出規制令になりそうです。

新型コロナが厄介なのは感染者の重症化の規則性が見えていないこと。しかし確かなことは、日本でもこれから2週間は患者が増え続けるだろうと言われています。その感染スピードをいかに落とすかが焦点。今、この危機に私たちはどう対応すればよいのでしょうか。ひとりの国民として、サイクリストとして。

今回の問題をうけて、あらゆる医療関係者や専門家などが提言を発していますが、この状況のなか「サイクリストはどう自転車に乗ればいいのか? 乗るべきでないのか?」ということについて、明確なガイドラインを発信した自転車関連団体は日本にありません。

想像するに、複雑な要因が絡み合うこと、問題が高度で難しいこと、状況が刻一刻と変わること、そして新型コロナへの対処法も治療法もまだわかっていないことが原因として挙げられるでしょう。誰も明確な答えができないのです。

そんななか、サイクリングの盛んな欧州では自転車関連団体が指針を出していますので、ここに参考例として紹介します。

―― しかしその前に結論として言えるのが、「Stay Home」つまり外出を控えて家に居ることがいちばん危険が少なく、安全だということ。これは危機的状況に陥った各国の惨状を訴える人たちに共通した意見です。

インドアトレーニングの環境があるなら、それが解決策となるインドアトレーニングの環境があるなら、それが解決策となる
外に出るほどにウイルスに感染するリスクが生じます。これは確実なことです。しかし、運動不足は免疫力低下を招き、感染の危険を増すという相関関係もあります。もし室内で自転車(インドアトレーナーなど)に乗って済むなら、それでいいのです。

そのうえで、ここからは「どうしても外で自転車に乗りたいなら」という注釈つきで読んでください。

オランダ自転車競技連盟の提唱するガイドライン

オランダでは、KNWU(オランダ自転車競技連盟)が3月24日付で、新型コロナウィルス対策として「サイクリングを楽しむためのガイドライン」を発表。その要旨は以下のとおりです。

サイクリングすること以前に基本的な行動として守りたいこと

ソーシャルディスタンス(1.5m)を確保する

必要な買い物、散歩、誰かに会うなどの行為を行う場合、自己防衛のために「1.5mの距離を保つこと」。(目安として両手を広げたぐらいの距離)

新鮮な空気を吸いリフレッシュする必要がある

身体の抵抗力(免疫力)を高く保つため、このような事態のときには運動を続けることが大切です。新鮮な空気を吸うことは素晴らしいこと。ただしその解釈は個々それぞれであること、行動する個人に責任があること。例えば以下のような運動で新鮮な空気を吸い、リフレッシュできます。

  • 散歩する
  • 平地を50kmサイクリングする
  • Zwiftなどを活用してトレーニング

屋外での運動での注意点、留意点

まず屋外でサイクリングすることが今どれほど必要なのか、他にどのような選択肢があるのかを自分で考えてください。それでも屋外でサイクリングすると決めた場合、いくつかのガイドラインを共有します。

乗るならひとりで、人との接触を避け、店にも立ち寄らないこと乗るならひとりで、人との接触を避け、店にも立ち寄らないこと photo:Makoto.AYANO

#ridesolo =ひとりで走る

ひとりで自転車に乗る。周囲に誰かがいる場合、1.5m以上離れます。サイクリングの利点はチームメイトに依存せず、ひとりで簡単にトレーニングできることです。したがって単独でサイクリングし、人が多い環境を避けて、ウイルス拡散の可能性を減らせます。

路上で手鼻をかまない、つばを吐かない

ライド中に鼻(手鼻)をかんだり、つばを吐いたりしないでください。代わりに停車してティッシュを使ってください(袋に入れて持ち帰る)。

ハードワーク(高強度)にならないように

インターバルなどの追い込んだメニューや3時間以上のワークアウトは制限してください。回復に2日以上かかるトレーニングは免疫力を下げてしまうため、そのときウイルスに感染しやすくなります。

クレイジー(危険)な乗り方を避ける

コーナーを攻めたり、先頭交代でスピードを上げる、ウィリーやジャンプ、転倒の危険があるライディングなど、危険があるような乗り方は避けてください。もし怪我をしても、今コロナウイルスと闘っている病院や医療従事者には、あなたを治療する余裕がないかもしれません。

毎日の体調を管理する

毎朝体温および心拍チェックをして、熱がないか、脈拍が安定して体力が回復できているかを確認してください。トレーニング中はマスクをして、トレーニング直後にシャワーを浴び、ウェアはすぐに洗濯します。身体が回復する健康的な食事で栄養を摂ってください。免疫システムが十分に回復できるよう睡眠時間をたっぷりとってください。

理性を持った行動を

最後に、理性を働かせて常識的に行動してください。サイクリングは美しいスポーツですが、私たちを含む全ての人達の健康がより重要です。自分自身の行動に責任を持ってください。最新情報を常に確認してください。

(KNWU オランダ自転車競技連盟の3月24日付発信より編集)

ベルギー、フランス、ドイツより

親子、同居人なら一緒に走ることができる親子、同居人なら一緒に走ることができる photo:Makoto.AYANOオランダ・オス市在住の荻島美香さん(シクロクロス・マスターズ選手)は、現状を踏まえて「日本のサイクリストの皆さんにお願いがあります。家族(※)以外の人と走るのは控えてください。感染拡大を防ぐ1つの手段です。(※一緒に住んでいる人)」とツィッターで発信しています。

オランダの隣国、ベルギーの状況は、コルトレイク市在住の橋川健さん(チームIRCユーラシア監督)によれば、「ベルギーではライドは推奨されていますが、グループライドは禁止されています。同伴者は1名まで、1.5mの距離を保つ。自宅をスタートし、自宅にフィニッシュすること、途中の休憩は不可となっています。サイクリストに自由と権限が与えられていますので、多くのサイクリストは遵守しているようです。サイクリングでは感染拡大に対するリスクは低いですが、事故、怪我等についても責任のある行動が求められています」と伝えてくれました。

グループライドは絶対に避けること(ベルギー、2018年撮影)グループライドは絶対に避けること(ベルギー、2018年撮影) photo:Makoto.AYANOしかし週末に気温が上がり、絶好のサイクリング日和になると、運河沿いのサイクリングコースなど多くのサイクリストが集まりそうなエリアでのライドに禁止令が出ます。知らずしらずのうちにサイクリストの距離が縮まり、グループライドの状態が生じてしまう危険性を危惧した発令のようです。

ベルギーより少し早く事態が深刻になったフランスでは、別府史之選手(NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)が日本のサイクリストに向けて次のように発信しています。

「日本でスポーツを楽しむ皆様へ 外出自粛で運動不足になってる方が多いと思いますが、くれぐれも遠出や無理などして事故は起こさないでください。あなたの怪我の治療よりも、元々治療中で苦しんでいる方や今回のウィルスなどの対応などが優先されるべきです。私の住んでいるフランスもそういった理由で家から1km以内で1時間の運動は許可されています。 (自治体によっては家から20mっていう場所もある)。運動は大切ですが、不慮の事故で医療施設を圧迫しないことや、自身で遠くへ運んでしまうような感染拡大に繋がらないように心掛けてください」(4月5日/ツィッターより)。

ドイツでは「ソーシャルディスタンスを確保するという意味で、誰もが公共交通機関を使う代わりに徒歩か自転車を使用すれば感染リスクを減らせる」と保健省の大臣がコメント。いち早く強い政策とメッセージを出したメルケル首相は「ウィルスが及ぼす社会的影響に逆らうクリエイティブな方法はたくさんあります」と、国民ひとりひとりが創造力を働かせて感染拡大を防ぐ方法を考えて欲しいと呼びかけました。

#RideSolo (ひとりで乗る)がキーワード

概ね各国ではサイクリングおよび自転車の活用は否定されていないようです。そして世界的にもサイクリングに関しては「#RideSolo 」(ひとりで乗る)がSNS上のキーワードになりつつあります。

日本ではTVのニュース番組内で、日本感染症学会の寺島毅さんが 「サイクリングはオススメ ただし行き先に気をつけて」と、体力の低下を防ぎ、免疫力を高めるためにもサイクリングは推奨できるという見解を述べました。外出自粛が呼びかけられるなか、ソロライドなら「不要不急の外出自粛に該当しない」とも。(数日前の放送であるため、今はその見解も変わっているかもしれません)

自身が自転車で距離を移動してしまうことがウイルスの遠距離拡散になってしまわないように、家から出て帰って来られる距離に留めること。ライド中はなるべく人に会わない、近寄らないように。補給食を携行し、お店などに立ち寄るのも最小限に(できれば寄らない・店内飲食はしない)。 コンビニ利用時はマスクを着用するなどすれば、感染のリスクはゼロに近い状態でサイクリングができる、と。

休憩するなら屋外で人の居ないところが良いでしょう。これからの季節は汗をかきやすくなるので、手で直接顔を触らないこと(とくに鼻、口)。消毒剤を含んだウェットティッシュを携行したり、ライド前後にハンドル周りや触った箇所を除菌したりするのもいいでしょう。

外に出ないことがもっとも安全であることは変わらない

しかし、どんなに対策を講じたとしても、今もっとも安全なのは家に居ること。換気には留意しながら、ウィルスの侵入を防ぐ。自転車で外に出ることは、家にいるよりも危険が伴うことだと意識しなくてはいけません。

「とにかく外出を一切しないことが重要だ」とする意見も、複数の専門家が発しています。日本の政策は遅すぎる・緩すぎる、今すぐロックダウンすべき、と。

専門家や識者の解説や見解に注目すべきです。そして、状況は刻一刻と変わりつつあることは意識してください。まだ状況は切迫した危機を感じるには至っていないと言えるかもしれませんが、状況が急転することは、各国の先例が示しています。今日自転車に乗ったことが、数日後には「あのとき乗らなければよかった」となるかもしれないのです。

この記事を掲載する直前、6日・夜に東京都の小池知事は政府が緊急事態宣言を出した場合に、都として実施する感染拡大防止策について事前に説明する会見を行いました(ソーシャルディスタンスは2mとされていました)。自身の居住地である県や自治体の指示に沿って自身の行動を決めることはもちろん最優先です。そして、自分の身は自分で守るという心がけをもって行動してください。

4月6日記 綾野 真(シクロワイアード編集長)
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