雨に濡れた石畳で繰り広げられたサバイバルレース。終盤の逃げに乗り、小集団スプリントを制したユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・サイクリングアカデミー)がル・サミン初勝利。女子レースでは57kmもの独走で逃げ切ったシャンタル・ブラーク(オランダ、ブールスドルマンス)が勝利した。



オンループ・ヘットニュースブラッドで優勝したジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)オンループ・ヘットニュースブラッドで優勝したジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) (c)CorVosニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー) (c)CorVos


石畳クラシックシーズン序盤に開催されるル・サミン(UCI1.1)は、1969年に落車事故で急逝した第一回覇者ジョゼ・サミンの名を冠したワンデーレース。クールネ〜ブリュッセル〜クールネの僅か2日後、ベルギー南部のワロン地域には再びタフレースを得意とする各チームが集結した。

ワロン地方のロードレース開幕戦であり、荒れた石畳が多いためパリ〜ルーベの予行演習とも言えるこのレース。中盤からは難易度3つ星の「ヴィオリー」と「ベル・ヴュ」を含む4ヶ所の石畳区間が含まれる26.9kmの周回コースを4周回するため、石畳セクターは合計16箇所にも及ぶ。

毎年雨、低温、石畳、強風という要素が複雑に絡む「ミニ・パリ〜ルーベ」に参戦したのはワールドチーム6、プロチーム10を含む合計25チーム。この日は強力なメンバーを揃えるドゥクーニンク・クイックステップとトレック・セガフレードが互いに仕掛け合う激しいチーム戦が繰り広げられた。

アタックを繰り出すティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)アタックを繰り出すティム・デクレルク(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
序盤には"ウルフパック"の一人ベルト・ファンレルベルフ(ベルギー)が鎖骨骨折に見舞われるも、ドゥクーニンク・クイックステップはアグレッシブなレースを継続。残り80km以上を残したタイミングでドゥクーニンク勢数名を含む強力な追走グループが生まれ、序盤からの逃げを吸収しながら先行する。この動きはメンバーを乗せ損ねた地元チームのビンゴール・ワロニーブリュッセルによって引き戻されたが、この後もペースが落ち着くことはなかった。

登りの度にドゥクーニンク・クイックステップやトレック・セガフレードがペースを上げ、土曜日のオンループ・ヘットニュースブラッドで優勝したジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)も積極的加わる。力尽きた選手たちが次々と脱落していく消耗戦の中、終盤に入って12名の先頭グループが形成された。

この中にドゥクーニンク・クイックステップは2名を送り込むと、残り3km地点に控える最後の石畳セクターでは昨年覇者フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がアタック。アレックス・キルシュ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)とジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング)が加わったことで逃げ切りかと思わせたものの、アイメ・デヘント(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)らの必死の追走で引き戻される。勝負はゴールスプリントに委ねられた。

アイメ・デヘント(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)らをパスするユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・サイクリングアカデミー)アイメ・デヘント(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)らをパスするユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・サイクリングアカデミー) (c)CorVos
石畳クラシック初勝利を挙げたユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・サイクリングアカデミー)石畳クラシック初勝利を挙げたユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・サイクリングアカデミー) (c)CorVos
シクロクロスフランス王者のクレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼル)先行で始まったスプリントだったが、伸びたのはユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・サイクリングアカデミー)。有利に進めたはずのドゥクーニンク・クイックステップが沈む中、オフステテールがジャージをアピールしながら先着した。

ル・サミン2020 男子レース表彰台ル・サミン2020 男子レース表彰台 (c)CorVos
コフィディスからイスラエル・スタートアップネイションに移籍したばかりの26歳が、初の石畳クラシックレース勝利。「今日は素晴らしいチーム戦ができた。次々と生まれる先頭グループにはいつも1人か2人、あるいは3人チームメイトが乗っていたので有利に運べたんだ。残り1kmで3人を吸収した時"今日は勝てるぞ"と思った。スプリントもパーフェクトだったよ」と、キャリア最大の勝利を手にしたオフステテールは語っている。ワールドチーム昇格を果たしたイスラエル・スタートアップネイションにとっては今季3勝目となった。



女子レース:元世界王者ブラークがレース中盤から独走

男子レースと同じく、カレニョンからドゥールを目指すコースでは女子レースも同時開催された。26.9kmの周回コースを2周回する合計94.9kmで、石畳セクターは8つ。屈強なメンバーを揃えたブールス・ドルマンスがレースを支配した。

レース距離半分以上もの独走を成功させたシャンタル・ブラーク(オランダ、ブールスドルマンス)レース距離半分以上もの独走を成功させたシャンタル・ブラーク(オランダ、ブールスドルマンス) (c)CorVos
ブールス・ドルマンスは序盤に形成された13名の逃げグループに3名を送り込むと、2017年の世界王者シャンタル・ブラーク(オランダ)の独走をお膳立て。57kmを残してのアタックだったものの、後方をクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク)とイップ・ファンデンボス(オランダ)が抑えたためその差は広がり続けた。

2番手グループのスプリントはクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブル、ブールスドルマンス)が先着2番手グループのスプリントはクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブル、ブールスドルマンス)が先着 (c)CorVos
ル・サミン2020 女子レース表彰台ル・サミン2020 女子レース表彰台 (c)CorVos
結婚によってシャンタル・ファンデンブローク=ブラークに正式名を変えたブラークが、余裕すら感じさせる独走でフィニッシュ。1分50秒遅れの追走グループではオフシーズンにシクロクロス参戦していたマジュラスが先着し、ブールス・ドルマンスがワンツーフィニッシュを成功させている。