今大会2回目の岩山ジュベルハフィート山頂フィニッシュでタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が地元チームに勝利をもたらす。新型コロナウイルスの影響で残る2ステージのキャンセルが発表され、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)のUAEツアー総合優勝が決まった。



岩山ジュベルハフィートを高速で駆け上がる岩山ジュベルハフィートを高速で駆け上がる photo:LaPresse
UAEツアー2020第5ステージUAEツアー2020第5ステージ photo:LaPresseUAEツアー2020第5ステージUAEツアー2020第5ステージ photo:LaPresse

第3ステージと同じ標高1,025mの岩山ジュベルハフィート山頂フィニッシュが設定されたUAEツアー第5ステージ。勝負を決める全長10.8km/平均勾配6.6%/最大勾配11%の登りは2日前と全く同じ。選手たちは風に警戒しながら前半の平坦区間をこなし、大会最後の難所である岩山に挑むこととなった。

2019年大会のジュベルハフィートで8位に入って総合8位&ヤングライダー賞2位の成績を残しながら、今大会は暑さに苦しんで13分以上遅れていたジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がこの日は逃げた。ミッチェルトン・スコットやUAEチームエミレーツ率いるメイン集団から逃げグループは最大6分半のリードを得ることに成功している。

逃げグループを形成した5名
ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)
ラリー・ワーバス(アメリカ、アージェードゥーゼール)
アンドレア・ガロシオ(イタリア、ヴィーニザブKTM)
クリスティアン・スカローニ(イタリア、ガスプロム・ルスヴェロ)

レース中盤、まだフィニッシュまで70km以上を残して、コースの進行方向が変わって追い風が吹き始めたところでメイン集団はペースアップ。65km/h前後の高速巡航が始まると脱落者が出たものの、致命的なタイム差は生まれず集団は一つに戻る。グルパマFDJの奇襲ペースアップもミッチェルトン・スコットが封じ込めた。

ミッチェルトン・スコットとグルパマFDJを先頭にジュベルハフィートの麓に到着した時点で逃げグループとのタイム差は2分15秒。フィニッシュまで高低差700mの登りが始まると先頭ではノックスが独走に持ち込んだが、メイン集団に対して2分強のタイム差は逃げ切るには小さすぎた。

逃げグループを形成したトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)ら逃げグループを形成したトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)ら photo:CorVos
メイン集団のペースを上げるダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)メイン集団のペースを上げるダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
逃げ続けるジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の後ろに総合上位陣が迫る逃げ続けるジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の後ろに総合上位陣が迫る photo:CorVos
UAEチームエミレーツの集団ペースアップによってレッドジャージを着るアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)はアシストを失って丸裸に。ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)のペーシングが終わると、残り5km地点で総合2位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が動いた。

ポガチャルの加速に反応したのはAイェーツ、ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)、アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)の3名。先頭でまとまった4名の中からAイェーツとポガチャルがアタックを続発させたが決まらない。この総合上位陣による急激なペースアップによって先頭ノックスは残り3.5km地点で吸収された。

総合トップ4にイルヌル・ザカリン(ロシア、CCCチーム)を加えた先頭5名はアタックと牽制を繰り返しながらジュベルハフィートを駆け上がる。度重なるポガチャルのアタックにもAイェーツは遅れず、またその逆も然り。残り2.5km地点でAイェーツが全開アタックを仕掛けるとついに距離が開いたが、残り1kmを切って先頭は5名に戻った。

フィニッシュ手前の下り区間でポガチャルが仕掛け、ルツェンコ、ポガチャル、Aイェーツの並びで最終コーナーをクリア。ルツェンコがフィニッシュラインに向かって先頭でスプリントしたが、諦めずに食らいついたポガチャルがハンドルを投げ込んだ。先に勝利を確信したルツェンコが手を挙げたものの、ポガチャルが先着した。

総合トップ4の戦いを繰り広げるアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ら総合トップ4の戦いを繰り広げるアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ら photo:LaPresse
フィニッシュに向かってスプリント体制に入る先頭グループフィニッシュに向かってスプリント体制に入る先頭グループ photo:LaPresse
フィニッシュに向かってスプリントするタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)フィニッシュに向かってスプリントするタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:CorVos
ハンドルを投げ込むタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)と手を挙げるアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)ハンドルを投げ込むタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)と手を挙げるアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:LaPresse
「チームにとっての地元レースで、ドラマティックな勝利を飾ることができた。最後はハンドルを投げ込んでルツェンコを差し切って勝利。ジュベルハフィートの頂上で勝利することができて本当に嬉しい」と、2度目のジュベルハフィートを制したポガチャル。最後までAイェーツを引き離すことはできなかったが、UAE(アラブ首長国連邦)のチームに重要な勝利をもたらした。

「ミッション達成。ステージ優勝できれば良かったけどリーダージャージを守ることができたので成功だと言える。4名での戦いになることに驚きはしなかったし、その中でもポガチャルの走りは冴えていた」とAイェーツはライバルを称える。ボーナスタイムの関係でタイム差は縮まったが、Aイェーツはポガチャルと1分1秒差で総合首位の座を堅守している。

大会最後の山場を終えたUAEツアーは2つの平坦ステージを残すのみとなったが、第5ステージ終了後に状況が一変した。すべての選手たちを含めた関係者全員の検査が行われた結果、2人のイタリア人チームスタッフのCOVID-19(新型コロナウイルス)感染が確認されたため、大会主催者RCSスポルトとアブダビスポーツ委員会は大会の中止を決定した。

これにより2日間前倒しで大会は閉幕することになり、Aイェーツの総合優勝が確定した。総合49位の新城幸也(バーレーン・マクラーレン)はUCIポイントを5ポイント獲得。UAEツアーは係数6に該当するため、新城は東京オリンピックの代表選考において30ポイントを獲得している。

地元チームに勝利をもたらしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)地元チームに勝利をもたらしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:LaPresse
レッドジャージを守ったアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)レッドジャージを守ったアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
UAEツアー2020第5ステージ結果
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 3:48:53
2位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)
3位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)
4位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) 0:00:04
5位 イルヌル・ザカリン(ロシア、CCCチーム) 0:00:07
6位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:00:23
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
8位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:00:24
9位 ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCチーム)
10位 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:27
53位 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) 0:03:35
個人総合成績
1位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 20:35:04
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 0:01:01
3位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) 0:01:33
4位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) 0:01:48
5位 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:02:11
6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:02:34
7位 イルヌル・ザカリン(ロシア、CCCチーム)
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:02:39
9位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:02:47
10位 ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCチーム) 0:02:51
49位 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) 0:12:15
その他の特別賞
ポイント賞 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
ヤングライダー賞 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
中間スプリント賞 ヴェリコ・ストイニッツ(セルビア、ヴィーニザブKTM)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Kei Tsuji