2015年に個人TT世界チャンピオンに輝いているヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームイネオス)が心臓の疾患によりシーズン入りを前に引退を表明した。代わりにチームイネオスは元プロロード選手で近年アイアンマンに打ち込むキャメロン・ワーフ(オーストラリア)の獲得を発表している。


メイン集団を牽引するヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)メイン集団を牽引するヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
2008年と2011年、2015年にジロ・デ・イタリアでステージ優勝、2013年にブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝、そして2015年にロード世界選手権個人タイムトライアルで優勝した38歳のヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)が現役を退く。引退の原因は2019年シーズン開幕前に発覚した心臓の疾患とされるが、具体的な病名は明らかにされていない。

ベラルーシの個人タイムトライアル王者に5回輝いているキリエンカは、過去20回グランツール(ジロ7回、ツール7回、ブエルタ6回)に出場し、16回完走(2009年ブエルタ総合16位が最高位)。2019年6月のヨーロッパ大会個人タイムトライアル優勝がキャリア18勝目となった。

ティンコフやケスデパーニュを経て2013年にチームイネオス(当時スカイプロサイクリング)入りし、同チームで7年間を過ごしたキリエンカは15年間のキャリアをこう振り返る。「今日は悲しい日だ。でも医療チームからのアドバイスをもとに、正しい判断を下したと思う。素晴らしいキャリアを歩み、チームと過ごした時間を楽しんできた。信じられない旅路であり、キャリアを通して享受したすべてのサポートに感謝している」。

アルカンシェルを獲得したヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)アルカンシェルを獲得したヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ) photo:Kei Tsuji5位/1分28秒差 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)5位/1分28秒差 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

キリエンカの引退発表から18時間後の1月31日19時(日本時間)、チームイネオスはキリエンカの穴を埋める選手として、キャメロン・ワーフ(オーストラリア)を獲得することを発表した。

かつてアンドローニジョカトリやキャノンデールに所属してジロ・デ・イタリアやブエルタ・ア・エスパーニャを走り、チャンピオンシステム時代の2012年にツアー・オブ・ジャパン総合7位の成績を残している36歳のワーフ。しかし2014年シーズン以降はロードレースから離れてトライアロンに打ち込んでいた。

キャメロン・ワーフ(オーストラリア、キャノンデール)が長時間メイン集団を牽引するキャメロン・ワーフ(オーストラリア、キャノンデール)が長時間メイン集団を牽引する photo:Kei Tsuji
敢闘賞は何度もアタックしたキャメロン・ワーフ(オーストラリア、キャノンデールプロサイクリング)の手に敢闘賞は何度もアタックしたキャメロン・ワーフ(オーストラリア、キャノンデールプロサイクリング)の手に photo:Kei Tsuji
2015年に初挑戦したアイアンマン(ウィスラー)では30〜34歳の年代別で優勝(総合9位)。アイアンマン世界選手権(コナ)では2017年17位、2018年9位、2019年5位という成績を残しており、2018年にはバイクパートのコースレコードを樹立した。なお、チームイネオスのヘッドコーチであるティム・ケリソンがワーフのパーソナルコーチを務めている。近年はクリストファー・フルーム(イギリス)やゲラント・トーマス(イギリス)らとトレーニングを共にするなど、チームイネオスと常に近い存在だった。

「(チームと)これまで数年にわたって様々なトレーニングのアプローチを試し、その結果として自分自身が速くなっている。昔よりもアイアンマンのバイクパートは全体的に速くなっているけど、ライバルたちは変わらずランも速い。今回の移籍によって得意のバイクパートをさらに磨きたい」とワーフは語る。

ワーフは早速2月2日のカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースにチームイネオスの選手として出場する。その後もロードレースに出場するが、ワーフはアイアンマン世界選手権(コナ)をシーズンの最大の目標に据える。「10月のコナに集中するけど、必要があればチームの役に立ちたい。すでに多くの選手とトレーニングを共にしているので、チームの文化にフィットしていると思う」。チームイネオスはワーフのアイアンマン出場を全面的にバックアップする。

text:Kei Tsuji