アルゼンチンを舞台にした恒例のシーズン開幕レース「ブエルタ・ア・サンフアン」が開幕。ゴール前で発生した大落車を避け、スプリントに加わったルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)がトップスプリンターを相手に大金星を挙げた。
出走サインを行うペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) (c)CorVos
6年連続のシーズン開幕ステージ優勝に期待が掛かるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) (c)CorVos
168名の選手たちがスタートを待つ (c)CorVos
オーストラリアでツアー・ダウンアンダーが閉幕した僅か数時間後、同じ南半球に位置する南米アルゼンチンでは「ブエルタ・ア・サンフアン(UCI2.Pro)」の火蓋が切って落とされた。
資金難によって2016年限りで中断したツール・ド・サンルイスに代わり、シーズン開幕を告げる1週間のステージレースとして定着したサンフアン。38回目を迎える2020年大会は、昨年と同じく途中休息日を含めて8日間日程で開催され、その内訳は平坦ステージ:3、丘陵ステージ:2、山頂フィニッシュ:1、個人TT:1。
今年は6のワールドチームが参加しており、ダウンアンダーを回避したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)らトップスプリンターが集結したほか、総合勢ではジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が顔を揃えている。中でもアラフィリップ、エヴェネプール、ホッジ、セリー、スティバルを揃えるドゥクーニンク勢は強力だ。
3級山岳にカテゴライズされたプンタネグラダムを駆け上がる (c)CorVos
逃げた選手たちと、沿道のファン (c)CorVos
2020年大会のオープニングステージは、大会名称でもあるサンフアン市街地を発着する164km。途中サンファン川にあるプンタネグラダムの堤防を目指す3級山岳(距離1.1km/平均勾配7.5%)を含む周回コース(1周28km)を4周するが、最後の登りからフィニッシュまでは40km弱に渡って下り基調というスプリンター向けステージだ。
この日は昨年までNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネに所属したフィリッポ・ザッカンティ(イタリア、バルディアーニCSF・ファイザネ)を含むエスケープが先行し、ドゥクーニンク・クイックステップやボーラ・ハンスグローエなどワールドチームがメイン集団をコントロール。後半戦に入ると逃げグループからマッティア・バイス(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)が単独先行したものの、最後のKOM直前でメイン集団に捉えられている。
クラウチングポジションで下りを走るジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
早いタイミングでの逃げ吸収だったものの、メイン集団は下り基調のコースを高速で突き進んだため番狂わせのアタックは生まれない。スプリンターを抱えるワールドチームやアンドローニジョカトリ・シデルメクに導かれた集団が緊張感を高めながらフィニッシュラインを目指した。
残り4kmを切ると、集団前方ではUAEチームエミレーツの選手と観客の接触をきっかけとした大落車が発生した。集団右側を走っていた中盤以降の選手は軒並み地面に投げ出され、前日に20歳の誕生日を迎えたばかりのイヴェネプールや、スプリントに備えていたラポルト、オスカル・セヴィリャ(スペイン、チームメデジン)らが巻き込まれる事態に。救済措置が適用される残り3kmより手前での落車だったものの、レース後にコミッセールは「観客が引き起こしたアクシデントであることは明確」として落車で遅れた全選手を同タイム扱いにすることを発表している。幸いイヴェネプールに大きな怪我はなく、翌日も問題なくレースを続行するという。
落車によって50名程度まで絞られた集団先頭では、ドゥクーニンクとボーラがリードアウトトレインをぶつけあった。混乱の中でサンルイスから数えて6年連続開幕勝利を狙ったガビリアは2年ぶりにコンビを組んだマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)やフアン・モラノ(コロンビア)との連携を失い、サガンも単独でのスプリントを強いられる。モラノやアルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)が横一線でもがき合う中、後方からルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)が伸びた。
スプリント争いを繰り広げる選手たち。大外からルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)が伸びる (c)CorVos
集団スプリントを制したルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) (c)CorVos
落車したレムコ・イヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)がフィニッシュ (c)CorVos
早駆けによって消耗したライバル勢を横目に、サドルに腰を下ろしたまま加速したバルビエ。ルーベ・リールメトロポールから2017年にアージェードゥーゼールに移籍し、昨年からイスラエルに新天地を見出していた27歳のフレンチスプリンターが、トップスプリンターを相手にキャリア最大の勝利を飾った。
「信じられない結果だ。この冬に兄と一緒に厳しいトレーニングを重ねてきたことが実った。兄とはどんな天気だろうが毎日乗ってきたんだ。本当に嬉しいよ。最後の落車では急ブレーキをかけて先頭から遅れたけれど、無線を通じてチームメイトが"待ってるぞ!"と言ってくれた。そこからスプリントできる位置まで引き戻してくれたので、彼らには感謝してもしきれない」と、かつてブリヂストン・アンカーにも研修生として所属したバルビエは言う。イスラエル・スタートアップネイションにとってもワールドチーム昇格後早くも初勝利となった。
翌第2ステージはポシートを発着するオールフラットの170km弱。再びスプリンターによるスピード勝負が繰り広げられる。



オーストラリアでツアー・ダウンアンダーが閉幕した僅か数時間後、同じ南半球に位置する南米アルゼンチンでは「ブエルタ・ア・サンフアン(UCI2.Pro)」の火蓋が切って落とされた。
資金難によって2016年限りで中断したツール・ド・サンルイスに代わり、シーズン開幕を告げる1週間のステージレースとして定着したサンフアン。38回目を迎える2020年大会は、昨年と同じく途中休息日を含めて8日間日程で開催され、その内訳は平坦ステージ:3、丘陵ステージ:2、山頂フィニッシュ:1、個人TT:1。
今年は6のワールドチームが参加しており、ダウンアンダーを回避したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)らトップスプリンターが集結したほか、総合勢ではジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が顔を揃えている。中でもアラフィリップ、エヴェネプール、ホッジ、セリー、スティバルを揃えるドゥクーニンク勢は強力だ。


2020年大会のオープニングステージは、大会名称でもあるサンフアン市街地を発着する164km。途中サンファン川にあるプンタネグラダムの堤防を目指す3級山岳(距離1.1km/平均勾配7.5%)を含む周回コース(1周28km)を4周するが、最後の登りからフィニッシュまでは40km弱に渡って下り基調というスプリンター向けステージだ。
この日は昨年までNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネに所属したフィリッポ・ザッカンティ(イタリア、バルディアーニCSF・ファイザネ)を含むエスケープが先行し、ドゥクーニンク・クイックステップやボーラ・ハンスグローエなどワールドチームがメイン集団をコントロール。後半戦に入ると逃げグループからマッティア・バイス(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)が単独先行したものの、最後のKOM直前でメイン集団に捉えられている。

早いタイミングでの逃げ吸収だったものの、メイン集団は下り基調のコースを高速で突き進んだため番狂わせのアタックは生まれない。スプリンターを抱えるワールドチームやアンドローニジョカトリ・シデルメクに導かれた集団が緊張感を高めながらフィニッシュラインを目指した。
残り4kmを切ると、集団前方ではUAEチームエミレーツの選手と観客の接触をきっかけとした大落車が発生した。集団右側を走っていた中盤以降の選手は軒並み地面に投げ出され、前日に20歳の誕生日を迎えたばかりのイヴェネプールや、スプリントに備えていたラポルト、オスカル・セヴィリャ(スペイン、チームメデジン)らが巻き込まれる事態に。救済措置が適用される残り3kmより手前での落車だったものの、レース後にコミッセールは「観客が引き起こしたアクシデントであることは明確」として落車で遅れた全選手を同タイム扱いにすることを発表している。幸いイヴェネプールに大きな怪我はなく、翌日も問題なくレースを続行するという。
落車によって50名程度まで絞られた集団先頭では、ドゥクーニンクとボーラがリードアウトトレインをぶつけあった。混乱の中でサンルイスから数えて6年連続開幕勝利を狙ったガビリアは2年ぶりにコンビを組んだマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)やフアン・モラノ(コロンビア)との連携を失い、サガンも単独でのスプリントを強いられる。モラノやアルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)が横一線でもがき合う中、後方からルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)が伸びた。



早駆けによって消耗したライバル勢を横目に、サドルに腰を下ろしたまま加速したバルビエ。ルーベ・リールメトロポールから2017年にアージェードゥーゼールに移籍し、昨年からイスラエルに新天地を見出していた27歳のフレンチスプリンターが、トップスプリンターを相手にキャリア最大の勝利を飾った。
「信じられない結果だ。この冬に兄と一緒に厳しいトレーニングを重ねてきたことが実った。兄とはどんな天気だろうが毎日乗ってきたんだ。本当に嬉しいよ。最後の落車では急ブレーキをかけて先頭から遅れたけれど、無線を通じてチームメイトが"待ってるぞ!"と言ってくれた。そこからスプリントできる位置まで引き戻してくれたので、彼らには感謝してもしきれない」と、かつてブリヂストン・アンカーにも研修生として所属したバルビエは言う。イスラエル・スタートアップネイションにとってもワールドチーム昇格後早くも初勝利となった。
翌第2ステージはポシートを発着するオールフラットの170km弱。再びスプリンターによるスピード勝負が繰り広げられる。
ブエルタ・ア・サンフアン2020 第1ステージ結果
1位 | ルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) | 3:45:14 |
2位 | マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | |
3位 | トーマス・コンテ(アルゼンチン、エキッポコンチネンタル・ムニシパリダード・デ・ポシート) | |
4位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
6位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | ロマン・マイキン(ロシア、ロシアナショナルチーム) | |
8位 | ルーカ・ワッケルマン(イタリア、ヴィーニザブKTM) | |
9位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス) |
個人総合成績
1位 | ルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) | 3:45:04 |
2位 | マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | 0:04 |
3位 | トーマス・コンテ(アルゼンチン、エキッポコンチネンタル・ムニシパリダード・デ・ポシート) | 0:06 |
4位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 0:10 |
5位 | アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
6位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | ロマン・マイキン(ロシア、ロシアナショナルチーム) | |
8位 | ルーカ・ワッケルマン(イタリア、ヴィーニザブKTM) | |
9位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス) |
その他の特別賞
ポイント賞 | ルディ・バルビエ(フランス、イスラエル・スタートアップネイション) |
山岳賞 | ニコラス・パレデス(コロンビア、チームメデジン) |
ヤングライダー賞 | トーマス・コンテ(アルゼンチン、エキッポコンチネンタル・ムニシパリダード・デ・ポシート) |
チーム総合成績 | イスラエル・スタートアップネイション |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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