ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)の復帰戦となったDVV第5戦で、最後尾から追い上げたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が圧巻の勝利。U23の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は46位で完走している。



並んでウォーミングアップを行うコルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)並んでウォーミングアップを行うコルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVosワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)と談笑するエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)と談笑するエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) (c)CorVos

ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)とマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が最前列に並ぶワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)とマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が最前列に並ぶ (c)CorVos
合計8戦開催されるDVVフェルゼクリンゲン・トロフェーも、折り返しを過ぎて早や第5戦。前日のUCIワールドカップ第7戦から間髪入れず、氷と泥にコーティングされたロエンハウトのテクニカルコースでトップCXレーサーたちが火花を散らした。

バニーホップスキルが試される数カ所の大きな溝や、タイトコーナーと細かなアップダウン、そして名物の大きなウォッシュボード区間が怒涛のように連続するロエンハウトのコース。この日は朝気温が0度近くまで下がったことで泥区間が轍や深い凹凸を残したまま凍り、かつスリッピーな泥がその上を覆う非常に難しい路面コンディションとなった。

そしてこの「アーゼンクロス」で、待ち望まれていたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)が復帰を果たした。今年のツール・ド・フランス中の落車で選手生命を脅かしかねない大怪我を負い、長いリハビリ生活を続けていた元世界王者に対してドクターは3日前にゴーサインを出す。2年連続のツール出場を見据える母国スーパースターの復帰戦を一目見ようと、会場には数万人ものベルギーファンが詰めかけた。

コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ)とエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が中盤まで先頭グループを組むコルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ)とエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が中盤まで先頭グループを組む (c)CorVos
コースを横切るシケインと溝を担ぎでクリアするワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)コースを横切るシケインと溝を担ぎでクリアするワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が男子エリートレースのホールショットを奪うも、その後ろから追い抜き、先頭で第1コーナーに飛び込んだのはファンアールト。長年ライバル関係を築いてきた2人が肩を寄せあいながら最初の泥区間を抜けると、直後のフライオーバーではファンデルポールがバランスを崩し、まさかの落車を喫してしまう。復帰に手間取った世界王者は最後尾からの追い上げを強いられた。

大混乱の序盤戦でリードを奪ったのは、5日前のナミュールで陥った低体温症から復調したエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)とティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ)。しかしすぐにメルリエは深い泥で前転し、代わってここ数週間好調を維持しているコルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ)がイゼルビッドに合流した。

ファンアールトは、盟友メルリエやベルギー/オランダ勢に対して1人善戦するフェリぺ・オルツ(シクロクロスチームテイカ・Gスポーツ・BH)らと共に大きな3番手グループの中で展開した。その後方からはファンデルポールが猛烈なペースで距離を縮め、全8周回中の4周目にはいとも簡単に3番手まで浮上する。先頭グループもファンデルポールの追い上げを察知してペースを上げ、イゼルビッドが独走に持ち込むも逃げ切りには至らなかった。

マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)との一騎打ちに持ち込んだエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)との一騎打ちに持ち込んだエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) (c)CorVos
泥区間でエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)を引き離すマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)泥区間でエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)を引き離すマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
残り3周回の時点で最後尾から追い上げたファンデルポールがついに先頭復帰し、追いつきざまの泥区間でアタックを仕掛ける。一瞬遅れかけたイゼルビッドはすぐさまファンデルポールの後輪を捉え、勝負は2人の一騎打ちの様相を呈していく。極荒れの半凍結泥区間で圧倒的なスピードを見せるファンデルポールと、フラットな高速区間で合流するイゼルビッド。ファンデルポールの度重なるアタックを凌ぐイゼルビッドに対して会場から大きな声援が送られた。

2人はひと塊りのまま最終周回に突入すると、1周目に転倒した高低差のあるフライオーバーをきっかけにアタックを開始。あらゆる区間でこれまで以上のスピードを見せると、ここまで善戦してきたイゼルビッドがたまらず脱落してしまう。ファンデルポールは最終盤の泥区間でコントロールを失って転倒しかけるも、一瞬のうちに稼いだリードによってイゼルビッドはまだ後ろ。最後は観客とハイタッチを経て、力強いガッツポーズでフィニッシュ。コクサイデのW杯に続く今シーズン2度目の全員抜き勝利を達成し、勝ち星を14に伸ばして見せた。

圧巻の追い上げを成功させたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)圧巻の追い上げを成功させたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
健闘したエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が2番手でフィニッシュ健闘したエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が2番手でフィニッシュ (c)CorVos妻に迎えられるワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)妻に迎えられるワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos

2位エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、1位マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)、3位コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ)2位エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、1位マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)、3位コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ) (c)CorVos
「抜きどころの少ないコースだけに追い上げは簡単ではなかった。フライオーバー手前の轍でバランスを崩したのが落車の理由。その後はただ落ち着いて、自分のラインを走り、最後の一人を捕まえるまで追い上げていくのみ。コースは上手く攻略できたと思うけれど、全員を抜くという課題をやってのけた後だったのでイゼルビッドを諦めさせるのはかなり厳しかった。昨年のような好調ぶりではないものの、非常に調子自体は良いので満足している」とファンデルポールは圧巻の追い上げ勝利を振り返っている。

3位にはレース中盤から単独走していたファンケッセルが入り、4位グループで展開したファンアールトはスプリント勝負に絡み、全体の5番手で復帰戦を終えることに。「正直言って自分でも驚く結果だった。ここまで上位で終えるなんて考えてもいなかった。本当にレースを楽しめたし、観客の応援も素晴らしかった。ホールショットを獲ったように自分自身を証明できた」と語るファンアールト。次戦は年明け1月4日に開催されるUCIカテゴリー2の「シクロクロス・グルレーゲム」の予定だ。



名物のウォッシュボード区間を走るセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)名物のウォッシュボード区間を走るセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
71名がスタートした女子レースでは、1周目に男子レースでファンデルポールが転倒したその場所で、前日に勝利しているオランダ王者ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)と欧州王者ヤラ・カステライン(オランダ、777)が絡む大落車が発生してしまう。

その影響を受けなかったセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)やケイティ・コンプトン(アメリカ、トレック・ナイトコンポジット)ら5名が先行する形となり、右足を激しく打ち付けたブラントはスタッフに抱えられながら病院に向かう事態となってしまった。

バラバラになったレース先頭ではすぐさまアルバラードがリードを奪い、フィニッシュまで続く独走体制を築き上げる。後方ではアンマリー・ワースト(オランダ、777)が追走を試みたが、パワーを要する泥コースで世界王者サンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン)とケイティ・コンプトン(アメリカ、トレック・ナイトコンポジット)の先行を許してしまう。その間にも軽やかな走りを続けるアルバラードは着実にリードを積み重ねた。

大きなリードを得て独走勝利したセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)大きなリードを得て独走勝利したセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
安定した走りで2位に入ったサンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン)安定した走りで2位に入ったサンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン) (c)CorVos
最後まで安定したペースを維持したアルバラードが、2位続きに終わったワールドカップ2連戦の借りを返す独走勝利。2位には徐々にコンディションを戻しつつあるカントが、3位にはコンプトンを交わしたワーストが入った。なお病院に運ばれたブラントは、チーム発表によれば右脚の膝下に3針縫う外傷。数日間の療養を経て今後のスケジュールを決めていくという。テレネット・バロワーズにとっては肋骨骨折のトーン・アールツ(ベルギー)に続き、女子エースまでもが戦線離脱する事態となってしまった。

またこの日、男子U23レースで2日連続のビッグレースに挑んだ織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は4分21秒遅れの46位でフルラップ完走している。落車が多発する序盤では一時11番手を走るなど、前日よりも良い感触を掴めたという以下は織田へのインタビューを紹介する。この後も2月頭の世界選手権まで欧州滞在、レース参戦を続けていくという。

「昨日は単独走の時間が長く、今日は何としても誰かに食らいつきパックでレースしようと決めていました。スタートがバッチリ決まって一時は11位でしたが、非常に難しい泥区間で転び順位を落としてしまいました。周りの選手たちも1周で1度転ぶような状況でしたが、コンディションも問題なく、昨日よりも良い走りができたので満足です」。
男子エリート結果
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 1:00:26
2位 エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:09
3位 コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ) 0:52
4位 ティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ) 1:13
5位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) 1:14
6位 トム・メーウセン(ベルギー、コレンドン・サーカス) 1:16
7位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 1:19
8位 ワイツ・ボスマンス(ベルギー) 1:22
9位 ジム・アールノーツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) 1:39
10位 ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ) 1:41
女子レース結果
1位 セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) 43:52
2位 サンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン) 1:45
3位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) 1:48
4位 ケイティ・コンプトン(アメリカ、トレック・ナイトコンポジット) 1:53
5位 アリーチェマリア・アルツィッフィ(イタリア、777) 2:26
6位 エヴァ・リヒナー(イタリア、クレアフィン・フリスタッズ) 2:30
7位 ラウラ・フェルドンショット(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 2:50
8位 ルビー・ウェスト(カナダ) 2:54
9位 ヤラ・カステライン(オランダ、777) 2:55
10位 レベッカ・ファーリンガー(アメリカ、コナ・マキシス・シマノ)
男子U23結果
1位 ロリス・ルイエ(スイス、コレンドン・サーカス) 47:39
2位 ティモ・キーリッヒ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ)
3位 トーマス・メイン(イギリス、タルトレット・アイソレックス) 0:02
46位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) 4:21
text:So.Isobe
photo:CorVos