超スリッピーなマッドコンディションのDVV第4戦でトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)が独走勝利。世界王者マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)のシクロクロス36連勝に歯止めを掛ける、鮮やかな走りを自国のファンに披露した。



泥の下り区間を行くトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)泥の下り区間を行くトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) (c)CorVos
UCIワールドカップ、そしてスーパープレスティージュに並ぶシクロクロス2大シリーズに数えられるDVVフェルゼクリンゲン・トロフェー。シリーズ折り返しとなるフランドル地方の街ロンセで行われた第4戦「スーダル・ホトンドクロス」で、スペインでの短期トレーニングキャンプを終えた世界王者・マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)や、好調ティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ)が戦線復帰を果たした。

広大な芝生の丘陵地を広く使ったコースは、前日までの雨によって今シーズン一番の重馬場に。斜面に据え付けられたコースは超スリッピーなコンディションとなり、急勾配の下り区間では世界トップクラスの選手ですら降車を強いられた。

重い足取りで担ぎ上げ区間を進む走りに精彩を欠いたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)重い足取りで担ぎ上げ区間を進む走りに精彩を欠いたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
レース中盤にファンデルポールを追い抜いたエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)レース中盤にファンデルポールを追い抜いたエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) (c)CorVos
先週のスーパープレスティージュ第5戦でトップ10に入ったドイツ王者のマルセル・マイセン(ドイツ、コレンドン・サーカス)が好スタートを切り、チームメイトのファンデルポールとエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、そしてベルギー王者トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)らが続く。

降車と乗車の判断が分かれる難コースでリズム良く走ったのはアールツだった。「今日は上手くコースを攻略することができた。今日みたいなコンディションでは誰もが苦労するけれど、今日はバイクが身体の一部のように動いたんだ」と言うベルギー王者は、パワフルかつ安定したスキルでハイペースを刻んでいく。対するファンデルポールは降車する場面が目立ち、スムーズに走るアールツとの間隔が開いていく。この日、ここまでシクロクロス35連勝を刻んできたアルカンシエルの走りから輝きは失われていた。

順調にラップを重ねるアールツの背後では、3番手から追走していたイゼルビッドがファンデルポールをパス。「オフ空けの身体がどれくらい動くのか確認する必要があったっんだ。実際悪くは無かったけれど、こういうコースでいつも強いトーンを捕まえることは無理だと気付いた」と言うファンデルポールはイゼルビッドにも先行を許した。

ファンデルポールを倒しての勝利に喜ぶトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)ファンデルポールを倒しての勝利に喜ぶトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) (c)CorVos
「全レースで勝つのは無理」と語ったマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)「全レースで勝つのは無理」と語ったマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
2位エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、1位トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)、3位走りに精彩を欠いたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)2位エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、1位トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)、3位走りに精彩を欠いたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
どよめきから歓声に変わった大観衆を味方に、各戦の合計フィニッシュタイムで争われる総合成績を見据え最後までペースを守りきったアールツが勝利。ファンデルポールの36連勝を止めると共に、砂のゾンホーヴェンに続く2週連続勝利を達成した。

「今日のようなコースは大好き。それだけに過酷だった1ヶ月前のコッペンベルグクロスを落とした失望は大きかった。あの時はシーズン前半戦で最も調子を落としていたレースだったので、そこからコンスタントにコンディションを上げることができている。もちろんここまで大きなリードで勝てるとは思っていなかったよ」と、欧州王者返り咲きと世界選手権を見据えるアールツはコメントしている。



冷静かつパワフルな走りで先行するセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)冷静かつパワフルな走りで先行するセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
下り区間で転倒したエヴァ・リヒナー(イタリア、クレアフィン・フリスタッズ)下り区間で転倒したエヴァ・リヒナー(イタリア、クレアフィン・フリスタッズ) (c)CorVos世界王者サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)は5位世界王者サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)は5位 (c)CorVos


男子レースの前に行われた女子レースでは、序盤から抜群のバイクコントロールを見せたセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)が1週目序盤からリードを奪った。

2番手の欧州王者ヤラ・カステライン(オランダ、777)やアンマリー・ワースト(オランダ、777)がリズムを掴めず落車を繰り返す間に、20秒を稼ぎ出して2周目に突入。3周目に入るとワーストが背後に迫ったものの、超スリッピーなオフキャンバー区間の鮮やかなライン取りで再び突き放す。ここからドミニカ出身の21歳は一度も先頭を譲ることなく泥コースを駆け抜けた。

「キャリアでいちばん追い込んだ」と言うセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)が勝利「キャリアでいちばん追い込んだ」と言うセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)が勝利 (c)CorVos
「今日は2つの選択肢があった。一つはライバルの動きを見ること。もう一つが序盤から攻めること。後者を選んだけれど、スリッピーなコンディションは私に味方した。レース全体で1度しか転ばなかったし、完璧に攻め切ることができた。今日ここまで集中して自分を追い込んだのはキャリアで初めて。これからだってもうほとんどあり得ないくらい深く追い込むことができた」と言うアルバラードが鮮烈な独走勝利を達成。2位にワースト、3位には泥に翻弄されながらも地脚の強さを見せたカステラインが、そして4位には東京五輪MTBプレ大会にも出場したイヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシング)が入った。
男子エリート結果
1位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) 55:54
2位 エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 1:30
3位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 2:14
4位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 2:18
5位 ティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ) 2:28
6位 ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ) 2:32
7位 マルセル・マイセン(ドイツ、コレンドン・サーカス) 3:06
8位 コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ) 3:16
9位 タイス・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) 4:14
10位 ジム・アールノーツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) 4:38
女子レース結果
1位 セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) 45:20
2位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) 0:21
3位 ヤラ・カステライン(オランダ、777) 1:12
4位 イヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシング) 1:45
5位 サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン) 2:22
6位 アリーチェマリア・アルツィッフィ(イタリア、777) 2:35
7位 キム・ファンデスティーン(ベルギー、タルトレット・アイソレックス) 2:37
8位 エレン・ファンロイ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) 2:50
9位 エヴァ・リヒナー(イタリア、クレアフィン・フリスタッズ) 3:17
10位 マリオン・ノーブルリブロール(フランス、エクスペルサ・プロCX) 3:31
Text:So.Isobe
Photo:CorVos

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