過去最高のタイムののちのゴールスプリント。ハイレベルの闘いとなった市民140kmオープンを制したのはチャリダー☆ロードレース男子部の佐藤文彦だった。筧五郎監督率いる3人の社会人ライダーがアマチュアロードレース界の頂点を目指すという番組企画がここに目標を達成! チャリダーファン必見のレースレポートだ。



佐藤文彦(チャリダー男子部)佐藤文彦(チャリダー男子部) photo:Makoto.AYANO自分が所属する筧五郎さんのチーム、NHKチャリダー☆快汗!サイクルクリニック「ロードレース男子部」では、アシストとなるチームメイトは自らのリザルトを捨て、エースのために走っている。つまりエースが負ければ、アシストを無駄死にさせたことになる。

自分はこれまでたくさんのアシストを無駄死にさせて来た。去年のおきなわ140kmでも負けた。しかし今年は責任を果たせるエースでありたい。アシストが「こいつのためなら」と思えるエースになりたい。

この1年間のトレーニングは、本当に苦しかった。しかし苦しい時、踏みやめてしまいそうな時、自分に問いかけた。去年のリベンジをするんだろ? エースなんだろ? みんなの犠牲を無駄にするのか?

やることはやって来た。しかし頭の奥からは心配が湧き続けてくる。アシストのチームメートの調子が良いほど、無駄にした時のことを考えてしまう。ぬぐいきれない不安を引き連れたまま、沖縄入りをした。

沖縄入りした佐藤文彦とチャリダー男子部のメンバー、筧五郎監督、関係者たち沖縄入りした佐藤文彦とチャリダー男子部のメンバー、筧五郎監督、関係者たち
いよいよレースがスタートした。警戒している選手たちが、いやおうなしに視界に入ってくる。COW GUMMAのクライマー加藤さんが普久川ダムの登りで抜け出していく。WAPPAの鈴木さんも美しいフォームで軽やかに登っている。津末レーシングの宮崎さんも余裕そうだ。この3人には登りでは絶対に敵いそうもない。上り坂で逃げられたら面倒だと焦ったが、3人とも下りはそこまで飛ばさない様子だったので、無理に追わずに「下りと平坦で回収できる」と心を落ち着かせる。

1回目の普久川ダムを登る市民140kmオープンの先頭集団1回目の普久川ダムを登る市民140kmオープンの先頭集団 photo:Makoto.AYANO
湾岸ユナイテッドの雑賀さんは走りが脅威であることに加えて、周りとコミュニケーションをとって集団をまとめる力がある。勝負所で他の選手たちと組まれたら厄介だ。チームとして最大の脅威はRoppongi Expressだ。今回は松尾さんがチームの司令塔として常に先頭で集団をコントロールしている。最後まで人数を残されて代わる代わるのアタックなどをされたら大変なことになる。

普久川ダム登りへと向かう市民140kmオープンの集団普久川ダム登りへと向かう市民140kmオープンの集団 photo:Satoru Kato
唯一救いなのは、男子部のメンバー全員が調子良さそうなこと。勝負所までみんなで残って、他のチームの戦術に対応していきたい。

2名の逃げができた状態で、辺戸岬を越えて残り100km看板を通過。ここで困った出来事が起こった。アクシデントによって、チームメイト2人を失ってしまったのだ。他の警戒している選手やRoppongi Expressは全員が健在。彼らがチームワークで動いてきたら対応しきれない。

そんな不安の中、チームメイトがアタックして逃げ始めた。作戦ではゴール前スプリントの牽引までしてもらうことになっていたが、この時点でゴールスプリントには残らない可能性が大きいと頭を切り替える。とりあえずメンバーが逃げてくれたので、ローテーションには加わらず脚をためる。

市民140kmオープンの先頭集団で走るチャリダー男子部の二人。後方が佐藤文彦市民140kmオープンの先頭集団で走るチャリダー男子部の二人。後方が佐藤文彦 photo:Makoto.AYANO
逃げとのタイム差が1分30秒ほどのまま、距離を消化していく。ペースは去年よりだいぶ速く、地味に脚が削られていく。逃げているメンバーは頑張ってくれているが、そのぶんだけ自分の背負うものも大きくなっていくのを感じる。しかし今年は違う。去年とは比べものにならないぐらいに強くなって来たのだ。誰よりも厳しいトレーニングを積んできたのだ。大きくなってのしかかる重圧を、今日は押しのけていられる。

2回めの普久川ダムを登る市民140kmオープンの先頭グループ2回めの普久川ダムを登る市民140kmオープンの先頭グループ photo:Makoto.AYANO 渡辺文平(チャリダー男子部)がメイン集団内で走る 渡辺文平(チャリダー男子部)がメイン集団内で走る photo:Makoto.AYANO


有銘の登りで逃げを回収して、勝負は振り出しに。常に先頭付近をキープし、逃げを発生させないように注意する。序盤から動き続けている古谷さんが本当に強い。タフすぎる。そしてふくらはぎが美しい。

最後の勝負どころである羽地ダムへの上りを前に、五郎監督が幾度となく抜け出していく。すぐに吸収されてしまうが、少しの間でも五郎監督が逃げている間はローテーションを飛ばして脚を貯められる。さらに羽地ダムの上りの直前でも五郎監督が飛び出す。ここではわざと中切れを起こして他の方々に追ってもらう。自分は追いかける人達の後ろで脚をまた貯める。アシストは絶対に無駄にしない。

市民140kmオープンの集団内で走る筧五郎(チャリダー男子部)市民140kmオープンの集団内で走る筧五郎(チャリダー男子部) photo:Satoru Kato
そしていよいよ最後の勝負所の羽地ダムへ。脚はじゅうぶん残っている。ここで最後のセレクションをかけたい。

イノセントの宮田さんが上げていくので着いていくと、気付けば番越トンネル手前で単独で抜け出してしまっていた。自分の脚が残っていることを見せる形になってしまった。これを雑賀さんのような選手に見られたら、他の選手で協力しあうきっかけにされてしまう。

アシストを終えて遅れた渡辺文平(チャリダー男子部)が羽地ダムの登りをクリアするアシストを終えて遅れた渡辺文平(チャリダー男子部)が羽地ダムの登りをクリアする photo:Makoto.AYANO河田恭司郎(チャリダー男子部)が羽地ダムを遅れて登る河田恭司郎(チャリダー男子部)が羽地ダムを遅れて登る photo:Makoto.AYANO


だが、58号線へ出る手前で残った20名ほどのメンバーを確認すると、雑賀さんの姿がなかった。Roppongi Expressの菊川さんや長瀬さんの姿もなかった。レース後に知ることになるが、試走で要注意と思っていた下りのコーナーで落車があったようだ。菊川さんや雑賀さんとのスプリントを想定していただけに、非常に残念だった。

ゴールが近づいてくる。脚はある。
牽制気味で残り1km。集中する。

市民140km スプリント勝負で抜け出て来る佐藤文彦市民140km スプリント勝負で抜け出て来る佐藤文彦 photo:Satoru Kato
最終コーナーを抜けて、ペースが上がる。ゴール前200メートルで飛び出す。最初から100パーセントでいかずに、とりあえずシッティングで様子見。後ろを確認すると、なんとAACAで一緒に逃げたこともあるマックススピードの高山さんが必死の形相で追いかけてくる!

緩めて、横並びにして踏み直すか? そのまま行くか? 一瞬考えるが、このまま行くことに決める。あとは前を向いてもがくのみ。求め続けていた勝利が舞い込んだ。

ゴールスプリントを制した佐藤文彦(チャリダー男子部)がトップでフィニッシュするゴールスプリントを制した佐藤文彦(チャリダー男子部)がトップでフィニッシュする photo:Satoru Kato
佐藤文彦をアシストした筧五郎もガッツポーズ佐藤文彦をアシストした筧五郎もガッツポーズ photo:Satoru Kato
今年の涙は格別だった。五郎監督が「ありがとう」と言ってくれた。普段は怒られてばかりだから、感謝されると変な感じがする(笑)。2年間なかなか結果を出せず、多大な苦労をかけてきた五郎監督に、最後の最後で勝利をプレゼント出来て良かった。そしてチームのエースとして責任を果たせて本当に良かった。

市民140kmオープン表彰 優勝は佐藤文彦(チャリダー男子部)市民140kmオープン表彰 優勝は佐藤文彦(チャリダー男子部) photo:Satoru Kato

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