NTTプロサイクリングの記者会見で聞いた、ゼネラルマネージャーと選手全員へのショートインタビューを紹介する。ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)が見据える東京五輪金メダル獲得のために、あるいは新規選手加入の上でもNTTのデータ解析は多いに役立っているという。



ダグ・ライダーGM:「データ解析でチーム力を強化し勝利に繋げていく」

質疑に答えるダグ・ライダーGM質疑に答えるダグ・ライダーGM photo:So.Isobe
― 今年はカンペナールツやカルロス・バルベロ(スペイン)、マックス・ヴァルシャイド(ドイツ)など、既にトップクラスのレースで活躍する選手が加入します。増強を果たしたメンバーで戦う来年のチーム目標について教えてください。

「チームランキングを来季15位以内、3年以内に10位以内に上げる。そのために確実に勝利を追い求めていく」「チームランキングを来季15位以内、3年以内に10位以内に上げる。そのために確実に勝利を追い求めていく」 photo:So.Isobeカンペナールツの加入は、従来あまり我々が得意ではなかったTT能力の改善に大きく貢献する喜ばしいニュースです。現在のタイムトライアルは緻密なデータの蓄積の上に成り立つ競技であり、ここでこそNTTのパートナーシップの強みが最大化されるでしょう。彼は五輪で金メダルを取る可能性が十分にありますし、NTTはオリンピックの公式スポンサー(通信サービスのゴールドパートナー)ですから、NTTプロサイクリングの中から金メダリストを輩出することは非常に大きな意味を持つのです。

ローハン・デニス(オーストラリア)がわざわざ選んで勝利したBMCのTTバイクもカンペナールツにとって大きな武器となります。契約金ではなく、チームが持つ機材やデータ解析能力に興味を示して移籍を決断してくれたことに誇らしく感じています。

プレゼンテーションではチームランキングを来季15位以内、3年以内に10位以内に上げるという目標を話しました。そのためにも今年はワンデーレースやステージレースでの区間優勝を確実に狙っていきます。フランドルクラシックには(ミカル)ヴァルグレンとエディ(ボアッソンハーゲン)、登りが多いレースでは(エンリーコ)ガスパロットや(ロマン)クロイツィゲルといったメンバーを主軸に据えることとなるでしょう。

我々のチームには現状グランツールの総合成績を狙う選手は不在です。例えばユンボ・ヴィズマ、チームイネオス、ドゥクーニンク・クイックステップといった屈強な総合系メンバーを揃えますが、我々はそこではなく、ステージ優勝と、最も美しいクラシックレース(ロンド・ファン・フランデレンとパリ〜ルーべ)、そしてタイムトライアルでの勝利を狙います。1週間ほどのステージレースでは、ここ数年アジアレースで素晴らしい走りを見せたベン(ダイボール)がエースを担うでしょう。特にベンは、我々がNTTと共同開発を進めているデータ分析システムで見つけ出し、彼自身初となるワールドチーム加入契約を行った選手です。新しいジャージで戦う来季が楽しみでなりません。

背中には大きくNTTロゴとクベカの手のイラストが入る背中には大きくNTTロゴとクベカの手のイラストが入る photo:So.Isobe
― NTTがタイトルスポンサーであるだけに、ツアー・オブ・ジャパンやジャパンカップなど日本のレースへの参加も考えられますね。

多いにあり得ます。元々我々は2010年と2011年にランカウイや韓国のレースなど、アジア圏のレースに多く参加してきた実績があります。例えばツアー・オブ・ジャパンはジロ・デ・イタリアと重なりますが、ツアー・オブ・カリフォルニアが開催中止となったので参戦は十分に可能で、特に若い選手に自信をつけさせる上では世界中を旅しながら勝利を重ねることは大切です。もちろんタイトルスポンサーの国で勝利を挙げることはチームにとっても大事ですから、欧州レースにフォーカスしてきたここ数年のプログラムを若干変更する可能性はとても高いと言えます。ディメンションデータとして過ごした5年から、もう一段階上のレベルに達することを期待しています。



エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)

ジャージのデザインを披露するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)ジャージのデザインを披露するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー) photo:So.Isobe
新しいジャージはいつだって新鮮な気分にさせてくれる。デザインも好きだし、NTTのような大規模のグローバル企業の一員となれて嬉しく思っているよ。

今年は開幕戦のヴァレンシアでステージ優勝を挙げたりと非常に良いシーズンインができたものの、春のクラシックシーズンは不調で苦しんだ。その後はクリテリウム・デュ・ドーフィネで開幕ステージ優勝(第1ステージ)できるまでに復調。ツールとブエルタでは勝利にまで届かなかったけれど、まあ悪くないシーズンだったと言える。

来季の第1目標は、これまでと変わらず春のクラシックシーズンで勝つことと、ツールでのステージ優勝。東京オリンピックのコースは正直僕には厳しすぎるけれど、メンバーに選ばれたら全力で挑みたい。何より日本はチームスカイ時代にジャパンカップで2位に入り、2016年にもスペシャルチームのメンバーとして来日した大好きな国。12月のトレーニングキャンプでおおよそ年間スケジュールが決まるけれど、NTTの本拠地である日本のレースを走る可能性は低くないと思う。とにかく今は新しいジャージで迎えるシーズンが楽しみだ。

ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、現ロット・スーダル)

現アワーレコードホルダーであるヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、現ロット・スーダル)現アワーレコードホルダーであるヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、現ロット・スーダル) photo:So.Isobe
新しいチームへの加入はいつだってエキサイティングだ。MTNキュベカだった頃からチームには僕と同じベルギー人のセルジュ・パウェルスが在籍していて、チームの雰囲気がとてもよく、全員がモチベーション高く、アグレッシブに走っている様子に憧れていたんだ。その頃の自分は成績もパッとせず、チームは僕に興味を持ってくれていなかったけれど、そこから数年後に契約に結びついたので嬉しい。今年のフランドル前にチームから移籍話をもらった時は幸せだった。

来季の目標は、東京オリンピックのTTで金メダルを獲得すること。TTコースは確かにアップダウンが連続する厳しいものだけど、厳しすぎるほどではない。明日はコース試走に出掛けるのでその感触でトレーニングプランを立てていくつもりだ。例えば平坦区間が長ければ出力を上げる必要があるし、上りが厳しければ身体を絞る。ロードレースではある程度経験や勘が結果を左右するけれど、TTではデータが全て。トレーニングの過程でNTTのデータ解析が非常に役立ってくれるはずなので、とても楽しみだ。

ミケル・ヴァルグレン(デンマーク)

ミケル・ヴァルグレン(デンマーク):「来季は再び勝負に絡めるようコンディションを戻したい」ミケル・ヴァルグレン(デンマーク):「来季は再び勝負に絡めるようコンディションを戻したい」 photo:So.Isobe
来季に対するモチベーションはとても強い。2018年にはオンループやアムステルで勝利したけれど、逆に今年は勝利できなかったから。再び勝負の最前線に絡めるようコンディションを戻し、自分の目標の一つであるフランドルで勝ちたい。それからもちろん、東京オリンピックは僕の夢の舞台だ。これからトレーナーやコーチと一緒にどこに照準を合わせていくのか決めるけれど、フランドル、ツールのステージ優勝、それから東京五輪は大きな目標になるだろう。新しいジャージは汚れが目立たない色だから嬉しいよ。これまでのジャージは白基調だから洗濯が大変だった...なんてジョークはさておき、個人的にはとても好きなデザインだし、ジャージ自体の着心地も抜群だ。

ニコラス・ドラミニ(南アフリカ)

ニコラス・ドラミニ(南アフリカ):「アフリカ選手としての威信をもって走りたい」ニコラス・ドラミニ(南アフリカ):「アフリカ選手としての威信をもって走りたい」 photo:So.Isobe
初めての日本なのでワクワクしながら飛行機に乗った。新しいジャージデザインは気に入っているし、これまでと全然違う色使いなので気分も一新。新しいモチベーションで臨む来シーズンが楽しみだ。2020年はオリンピックが控えるビッグイヤーなので、きっとこれまでとはレースカレンダーのリズムが変わるだろう。その中でコンディションを落とさないように気をつけながら結果を狙っていきたい。来年はチームランキングを上げるためにも積極的にUCIポイントを稼ぐ必要があって、その上でカンペナールツなど屈強な選手たちの加入は喜ばしいことだ。

ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、現チームサプラサイクリング)

データ解析で加入が決まったというベンジャミン・ダイボール(右、現チームサプラサイクリング)データ解析で加入が決まったというベンジャミン・ダイボール(右、現チームサプラサイクリング) photo:So.Isobe
30歳でキャリア初のワールドチーム加入。半ば諦め掛けていた夢が叶ったので本当に幸せに思っているよ。来年は山岳コースでアシストを務めることと、得意分野であるTTでチームに貢献することが目標。もちろんグランツールも走りたいけれど、今まで自分が参戦してきたレースより1週間もしくは2週間長いのでまずは3週間走りきれる身体を作る必要がある。

僕は今までアジアとオーストラリアのチーム歴が長く、ツアー・オブ・ジャパンやジャパンカップなど、日本で開催されているレースのほぼ全てに参加してきた。日本のレースは大好きだし、日本企業がスポンサーになるので再びこの国でレースを走る機会もやってくると思う。日本は大好きな国の一つだし、再びレースを走りたいと思っている。

サムエーレ・バッティステッラ(イタリア、U23世界王者)

U23世界王者のサムエーレ・バッティステッラ(イタリア)U23世界王者のサムエーレ・バッティステッラ(イタリア) photo:So.Isobe
将来的な夢はフランドルなどクラシックレースやジロ・デ・イタリアで勝つこと。でも現実的に言えば、来年はワールドツアーレベルのレースにフィジカルを順応させていくことが課題になるだろう。その中で本当のプロ選手になることを目指している。どんなに強い選手でもプロ1年目に苦しむので、経験豊富なチームメイトからいろいろなことを吸収したい。来年はエリートカテゴリーを走ることになるので、レースで(U23の)アルカンシエルを着れないのが残念だね(笑)。

text:So.Isobe

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