中級山岳ステージで21名が逃げ切りを決める。ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)が雨中のスプリント勝負を制し、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)がマイヨロホを着用した。



カタルーニャ州に入ったブエルタ・ア・エスパーニャカタルーニャ州に入ったブエルタ・ア・エスパーニャ photo:CorVos
オートバイのトライアル世界王者である藤波貴久の訪問を受けた新城幸也(バーレーン・メリダ)オートバイのトライアル世界王者である藤波貴久の訪問を受けた新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:CorVos笑顔のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)とナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)笑顔のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)とナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:CorVos


開幕から1週間をバレンシア州で過ごしたブエルタはお隣のカタルーニャ州へ。166.9kmのステージに設定されたカテゴリー山岳は1つだけだが、主催者は「中級山岳ステージ」にカテゴリー分けしている。それもそのはずカタルーニャ州内陸部を駆けるコースは名もなき小さな登りの連続。しかも残り27.5km地点の2級山岳モンセラート峠はスプリンターたちをふるい落とすには十分な難易度を誇る。

サンタ・マリア・モンセラート修道院付属大聖堂がある岩山モンセラートに向かう登りは全長7.4kmで平均勾配6.6%。集団スプリントにも、山岳で生まれた少人数の逃げ切りにも、あるいは序盤からの逃げ切りも考えられるコースゆえに、この日は21名もの巨大なエスケープが先行した。

逃げグループを形成した21名
ホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター)
シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼル)
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
ヨナス・コッホ(ドイツ、CCCチーム)
ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)
トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、グルパマFDJ)
カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル)
トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)
ニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ)
ダビ・デラクルス(スペイン、チームイネオス)
ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)
ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
マーティン・トゥスフェルト(オランダ、サンウェブ)
ピーター・ステティーナ(アメリカ、トレック・セガフレード)
セルジオ・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
アレックス・アランブル(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
ヨナタン・ラストラ(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
フェルナンド・バルセロ(スペイン、エウスカディ・バスクカントリー)

アップダウンコースで逃げる21名のエスケープアップダウンコースで逃げる21名のエスケープ photo:CorVos
メイン集団はアスタナがコントロールメイン集団はアスタナがコントロール photo:CorVos
ピーター・ステティーナ(アメリカ、トレック・セガフレード)が独走で2級山岳モンセラート峠を駆け上がるピーター・ステティーナ(アメリカ、トレック・セガフレード)が独走で2級山岳モンセラート峠を駆け上がる photo:CorVos
逃げの名手ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)やスプリント力のあるゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)、登坂力に秀でるダビ・デラクルス(スペイン、チームイネオス)やピーター・ステティーナ(アメリカ、トレック・セガフレード)らが含まれた強力な逃げグループ。総合に関係するメンバーが含まれなかったため、前日にマイヨロホへと返り咲いたミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)擁するアスタナには逃げを吸収する意思はなかった。21名は6分ほどのリードを維持しながら2級山岳に差し掛かった。

当初から勝負所と見られていた2級山岳モンセラート峠では、ステージ優勝に向けてのアタックが掛かった。その口火を切ったのはステティーナで、2日前に逃げ切り勝利をあげたばかりのヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)とフェルナンド・バルセロ(スペイン、エウスカディ・バスクカントリー)が追従。3名が先行したものの、緩斜面が続く2級山岳で後続を振り切るには至らなかった。

雨のダウンヒルを経てルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)、マーティン・トゥスフェルト(オランダ、サンウェブ)、アレックス・アランブル(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)、そしてバルセロが先行するがこれも決定打には繋がらない。途中のランドアバウトでは前輪を滑らせたトゥスフェルトが落車し逃げグループから遅れている。

残り3kmでトビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、グルパマFDJ)が仕掛けたロングスパートも決まらず、アタック合戦を耐えた14名が水飛沫を上げながらフィニッシュ前に到達。流し先行するゲレイロらが違いを見合う中、一気にニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)がスプリントした。

シッティングのまま加速するニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)シッティングのまま加速するニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) photo:CorVos
雨の集団スプリントを制したニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)雨の集団スプリントを制したニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) photo:CorVos
シッティングで加速し、リードを築いたアルントは、アランブルら後続を寄せ付けずにフィニッシュ。2016年のジロ・デ・イタリアでグランツールステージ優勝を飾っている27歳が、ブエルタで初のステージ優勝を挙げた。

「アメージングだ。昨日"明日は逃げに乗ってステージ優勝を狙いたい"とチームに伝えていたけれど、それが現実のものとなった。信じられないような気分だよ。スーパーハッピーだ。逃げにマーティン(トゥスフェルト)がいてくれたことでチームとしてスマートに走ることができた。彼がアタックを繰り出して、僕は後方で脚を溜めることができたんだ。僕はスプリントを待つだけで良かったし、終盤はアタックに反応していただけ。じっくりとそのタイミングを待っていたんだ。コンディションが非常に良く、今日は逃げて勝てるだけの自信があった。間違いなくキャリアの中でも最高の勝利の一つと言えるよ」と、アルントはチームでの勝利をアピールする。

マイヨロホに袖を通したニコラ・エデ(フランス、コフィディス)マイヨロホに袖を通したニコラ・エデ(フランス、コフィディス) photo:CorVos
9分半遅れでフィニッシュしたメイン集団のロペスに代わり、マイヨロホはニコラ・エデ(フランス、コフィディス)の手に。前日に総合順位を1位から18位まで落としていたディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)が2分21秒差の総合2位に急浮上している。

「リーダージャージを着用する一生に一度のチャンスだった可能性が非常に高く、何としてでも自分のものにしたかった。ブエルタの開幕以来ずっと心の奥にマイヨロホを思い描いていたんだ。チーム監督の気が狂わないことを願うよ。今回表彰台に登ったことを、僕の家族に捧げたい。選手であるならば必ず大きな犠牲を払っている。両親や妻、子供になかなか時間を割くこともできないんだ。僕の娘はいつもツール・ド・フランスのライオンをねだってくるけれど、今回はブエルタのマスコットを渡すことになる。全くもって悪くないと思う。今後はできるだけこのマイヨロホを守りたい。絶対に後悔したくないので明日は全力で走りたいと思う」とマイヨロホの夢をつかんだエデは言う。コフィディスは8日目にしてステージ1勝、そしてリーダージャージ獲得と絶好調ぶりを維持している。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第8ステージ結果
1位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) 3:50:48
2位 アレックス・アランブル(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
3位 トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)
4位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)
5位 ヨナス・コッホ(ドイツ、CCCチーム)
6位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
7位 ヨナタン・ラストラ(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
8位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、グルパマFDJ)
9位 フェルナンド・バルセロ(スペイン、エウスカディ・バスクカントリー)
10位 セルジオ・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
個人総合成績
1位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) 32:16:24
2位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) 0:02:21
3位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:03:01
4位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:03:07
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:03:17
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 0:03:28
7位 カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) 0:03:45
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:04:59
9位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 0:05:37
10位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) 0:05:53
ポイント賞
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 50pts
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 48pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 45pts
山岳賞
1位 アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH) 29pts
2位 セルジオ・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 17pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 16pts
ヤングライダー賞
1位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 32:19:25
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 0:02:36
3位 オスカル・ロドリゲス(スペイン、エウスカディ・バスクカントリー) 0:04:55
チーム総合成績
1位 モビスター 96:21:49
2位 ユンボ・ヴィズマ 0:09:59
3位 アスタナ 0:13:37
text:So.Isobe
photo:CorVos

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