3級山岳アンテルセルヴァにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第17ステージで18名が逃げ切りを達成。独走に持ち込んだナンス・ピーターズ(アージェードゥーゼール)がプロ初勝利を飾り、メイン集団から飛び出した総合4位ミケル・ランダ(モビスター)が総合タイム挽回に成功した。


序盤の登りでアタックが繰り返され、縦に伸びるメイン集団序盤の登りでアタックが繰り返され、縦に伸びるメイン集団 photo:Kei Tsuji
5月29日(水)第17ステージ コメッツァデューラ〜アンテルセルヴァ 181km ☆☆☆5月29日(水)第17ステージ コメッツァデューラ〜アンテルセルヴァ 181km ☆☆☆ photo:RCS Sport5月29日(水)第17ステージ コメッツァデューラ〜アンテルセルヴァ 181km ☆☆☆5月29日(水)第17ステージ コメッツァデューラ〜アンテルセルヴァ 181km ☆☆☆ photo:RCS Sport

イタリア北端の南チロル地方を走るジロ・デ・イタリア第17ステージ。『太陽の渓谷(ヴァル・ディ・ソーレ)』に位置するコメッツァデューラをスタートして標高1,363mのメンドラ峠(カテゴリー無し)を越え、エイザック渓谷をオーストリア方面に向かって北上。4級山岳エルヴァス(距離3.4km/平均7.6%)と3級山岳テレント(全長6.6km/平均7.6%)を越え、最後はジロ初登場となる3級山岳アンテルセルヴァ(距離5.5km/平均6.9%)を駆け上がる。残り1kmを切ってから登場する急勾配の登りと下りを経て、標高1,635mのバイアスロン用射撃場にフィニッシュする獲得標高差3,000mの中級山岳ステージはズバリ逃げ切り向きだ。

すでに総合で順位を落としているボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)やタネル・カンゲルト(エストニア、EFエデュケーションファースト)、エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)らも加わったアタック合戦はこの日もスタートから延々と続き、54km地点で18名の先頭グループが形成される。しばらく追走していたメイン集団がペースを弱めたため、メンドラ峠を越えてボルツァーノの街に差し掛かる頃には、先頭グループのリードは6分にまで広がっていた。

逃げグループを形成した18名
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)総合12位/11分51秒差
ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCチーム)総合19位/27分46秒差
タネル・カンゲルト(エストニア、EFエデュケーションファースト)総合20位/31分19秒差
ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)総合23位/37分22秒差
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)総合29位/51分04秒差
ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
ヤン・バークランツ(ベルギー、サンウェブ)
ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)
クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール)
アマーロ・アントゥネス(ポルトガル、CCCチーム)
ニコラ・コンチ(イタリア、トレック・セガフレード)
クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエルサイクリングアカデミー)
ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)

リンゴ畑が広がる山岳地帯を走るリンゴ畑が広がる山岳地帯を走る photo:LaPresse
メンドラ峠の下りをこなすメイン集団メンドラ峠の下りをこなすメイン集団 photo:LaPresse
メイン集団に8分差をつけた逃げグループメイン集団に8分差をつけた逃げグループ photo:LaPresse
トレンティーノ=アルト・アディジェ州の山岳地帯を走るトレンティーノ=アルト・アディジェ州の山岳地帯を走る photo:LaPresse
総合ジャンプアップを狙うフォルモロが逃げに乗ったため、モビスターはタイム差は8分以内に抑え込んでステージ後半へ。エイザック渓谷を離れて山岳地帯に向かうと、4級山岳エルヴァスでバークランツがアタックを仕掛けて独走。しばらく先行したバークランツにフォルモロやブランビッラら9名が追いつき、先頭10名(フォルモロ、ピーターズ、ハミルトン、マスナダ、ニーランズ、ブランビッラ、デヘント、バークランツ、コンティ、コンチ)となって次の3級山岳テレントをクリアした。

逃げ切りが濃厚となり、先頭グループ内のステージ優勝争いとメイン集団内のマリアローザ争いが同時進行で繰り広げられることに。先行した10名は、バーレーン・メリダやチームイネオス、アスタナが牽引するメイン集団に6分30秒差をつけて残り40kmを切ったが、その後の平坦区間で追走8名が追いついて先頭は再び18名。コンティらのアタックは不発に終わり、フィニッシュまで16kmを切ったところでピーターズが一発でアタックを成功させた。

登りを利用して独走に持ち込んだピーターズは、追走グループに45秒、メイン集団に5分22秒差をつけたまま残り10kmアーチを切る。後方ではニーランズとチャベス、コンティが追走グループを形成したものの、平坦区間でむしろリードを広げたピーターズが3級山岳アンテルセルヴァを先頭で駆け上がった。

独走に持ち込んだナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール)独走に持ち込んだナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:LaPresse
並んで走るリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)とミケル・ランダ(スペイン、モビスター)並んで走るリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)とミケル・ランダ(スペイン、モビスター) photo:LaPresse
残り3kmを切ってアタックしたミケル・ランダ(スペイン、モビスター)残り3kmを切ってアタックしたミケル・ランダ(スペイン、モビスター) photo:LaPresse
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)がペースを作るマリアローザグループドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)がペースを作るマリアローザグループ photo:LaPresse
ピーターズが2番手チャベスに1分34秒、3番手フォルモロに1分51秒差をつけて独走フィニッシュしたその後方では、メイン集団の総合上位陣のアタックが繰り広げられた。残り3kmアーチ通過とともに動いたのは総合4位のミケル・ランダ(スペイン、モビスター)。追いすがるヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト)を振り切ってランダが総合ライバルたちを引き離しにかかる。

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)のカウンターアタックはマリアローザのリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)によって封じ込められ、そこからドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)がヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)のためにペースメイクした。

ランダは先頭ピーターズから4分27秒遅れでフィニッシュ。終盤に抜け出したカラパスとロペスが4分39秒遅れ、そして動きを見せなかったニバリとプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)は4分46秒遅れでフィニッシュラインを切った。

残り450mの下りに差し掛かるナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール)残り450mの下りに差し掛かるナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji
残り600mを切るマリアローザのリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)残り600mを切るマリアローザのリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) photo:LaPresse
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)を引き離すリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)を引き離すリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) photo:Kei Tsuji
独走でフィニッシュするナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール)独走でフィニッシュするナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:LaPresse
独走でステージ優勝を飾ったピーターズは1994年3月12日生まれの25歳。第6ステージの大逃げで8位に入ってヤングライダー賞首位に立ち、第12ステージでタイムを失うまで6日間マリアビアンカを着続けた。「今日は逃げグループの中にビッグネームが揃っていたので、彼らのアタックに反応しながら力をセーブして走っていた。何回もアタックするのではなく、一発のアタックで決めようと思っていたんだ。アタックのタイミングは完璧だった。ライバルたちは後方で牽制していたので、フィニッシュまでペースを調整しながら踏み続けた」とピーターズは語る。

プロ初勝利を飾ったピーターズは「マリアビアンカを着た時点で自分のジロは大成功だったのに、このステージ優勝でさらに素晴らしいものになった。グランツールでプロ初勝利を飾るなんて信じられない」とコメントしている。

この日が26歳の誕生日だったカラパスが総合タイムを失うことなくマリアローザをキープ。ニバリとのタイム差を1分47秒から1分54秒に広げたカラパスは「調子の良さを感じていたミケル・ランダが最終的な総合表彰台に登るためにアタック。作戦は成功したよ。チームとして良い走りができたし、マリアローザを着て過ごす素晴らしい誕生日になった」とコメント。チームメイトのランダはロペスから12秒、ニバリとログリッチェから19秒のタイム差を奪うことに成功している。また、ステージ3位に入ってボーナスタイム4秒も獲得した総合12位のフォルモロがヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を抜いて総合10位に浮上した。

ステージ優勝を飾ったナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール)ステージ優勝を飾ったナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji
誕生日をマリアローザで過ごしたリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)誕生日をマリアローザで過ごしたリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) photo:Kei Tsuji
第17ステージを終えた初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第17ステージを終えた初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリア2019第17ステージ結果
1位 ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) 4:41:34
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) 0:01:34
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:01:51
4位 ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
5位 クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエルサイクリングアカデミー)
6位 タネル・カンゲルト(エストニア、EFエデュケーションファースト) 0:02:02
7位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:02:08
8位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)
9位 クリス・ハミルトン(オーストラリア、サンウェブ) 0:02:22
10位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) 0:02:34
19位 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) 0:04:27
20位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 0:04:39
21位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)
23位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 0:04:46
25位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)
26位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
29位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:05:06
30位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) 0:05:09
38位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:05:47
39位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 0:05:53
123位 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) 0:30:12
DNF ビアチェスラフ・クズネツォフ(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
マリアローザ 個人総合成績
1位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 74:48:18
2位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:01:54
3位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:02:16
4位 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) 0:03:03
5位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 0:05:07
6位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:06:17
7位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:06:48
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:07:13
9位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) 0:08:21
10位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:08:59
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 200pts
2位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 187pts
3位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 83pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 229pts
2位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 66pts
3位 ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) 56pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 74:54:35
2位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) 0:02:04
3位 ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト) 0:08:25
チーム総合成績
1位 モビスター 224:50:05
2位 バーレーン・メリダ 0:27:01
3位 アスタナ 0:28:04
text&photo:Kei Tsuji in Anterselva / Antholz, Italy

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