ツアー・オブ・ジャパン第3ステージが三重県いなべ市で行われ、最終周回に飛び出したベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)が優勝し、個人総合首位。4位に入った窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)がポイント賞を獲得した。



いなべステージのスタートは、三岐鉄道北勢線の阿下喜駅前いなべステージのスタートは、三岐鉄道北勢線の阿下喜駅前 photo:Satoru Kato
いなべ市の日沖靖市長を先頭にパレードがスタートいなべ市の日沖靖市長を先頭にパレードがスタート photo:Satoru Kato「令和」「令和」 photo:Satoru Kato

ツアー・オブ・ジャパン3日目の舞台は、三重県いなべ市。日本では数少ないナローゲージ鉄道の三岐鉄道北勢線の阿下喜駅前からパレードスタートし、いなべ市梅林公園周辺に設定された14.8kmの周回コースを8周する127kmのレースだ。「いなベルグ」と名付けられた登りや、山岳ポイント手前1kmから始まる登りなど、距離は短いものの斜度が急激に立ち上がる登り区間がある一方、田園地帯を抜ける平坦ストレート区間は、このコースを特徴づける部分。この平坦区間が一番きついと言う選手の声もある。

前日までの天気予報では雨となっていたが、奇跡的にも朝までに雨雲は抜け、パレードスタートが始まる午前9時過ぎには路面はほぼ乾いた状態となった。レース後半には太陽と青空が戻ったものの、終始強い風が吹き続ける中でのレースとなった。

山岳賞手前1kmから始まる急坂を登っていくメイン集団山岳賞手前1kmから始まる急坂を登っていくメイン集団 photo:Satoru Kato
リアルスタート直後、佐野淳哉(マトリックスパワータグ)ら3人が絡む落車が発生。2人は再スタートしたものの、佐野はリタイアを選択することになってしまった。昨年も新城幸也(バーレーン・メリダ)を含む落車が同じようなタイミングで起きており、2年連続の「鬼門」となってしまった。

4周目 チームカーから指示を受けながら単独先行するエミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)4周目 チームカーから指示を受けながら単独先行するエミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー) photo:Satoru Kato5周目 1分遅れでエミール・ディマを追うペア・クリスティアン・ミュンスターマン(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)5周目 1分遅れでエミール・ディマを追うペア・クリスティアン・ミュンスターマン(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー) photo:Satoru Kato

レースは何度かアタックと吸収が繰り返されたのち、3周目にエミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)が単独先行。約1分遅れてペア・クリスティアン・ミュンスターマン(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)が追走する。メイン集団との差は最大で4分30秒まで開く。

田植えが終わった水田地帯を駆け抜けるメイン集団田植えが終わった水田地帯を駆け抜けるメイン集団 photo:Satoru Kato
リーダージャージのエイデン・トゥーペイ(チーム・ブリッジレーン)はメイン集団で登りをクリアリーダージャージのエイデン・トゥーペイ(チーム・ブリッジレーン)はメイン集団で登りをクリア photo:Satoru Kato6周目 いなべステージのホームチームであるキナンサイクリングチームがメイン集団をコントロールして逃げを追走6周目 いなべステージのホームチームであるキナンサイクリングチームがメイン集団をコントロールして逃げを追走 photo:Satoru Kato

5周目に入ると、いなべステージのホームチーム・キナンサイクリングチームが中心となってペースアップし、タイム差を縮めていく。6周目にはディマにミュンスターマンが追いついて2人で逃げ続けるが、差は1分30秒まで縮まる。残り2周となる7周目、ミュンスターマンが遅れてディマ1人で逃げ続けるが、メイン集団との差は1分を切り、最終周回の8周目に入ったところで吸収される。

ベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)が優勝ベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)が優勝 photo:Satoru Kato
その後、ベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)と、アダム・トーパリック(チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー)の2人が抜け出し、20秒前後の差をつけて先行。集団が追走するものの捕まえきれないまま残り1kmを過ぎる。最後は2人のスプリント勝負となり、ヒルがトーパリックを下していなべステージを制した。

メイン集団は13秒遅れでフィニッシュしたが、リーダージャージを着たエイデン・トゥーペイ(チーム・ブリッジレーン)は中切れした集団後方でフィニッシュしたため16秒遅れ。この結果、25秒遅れだったヒルがボーナスタイム10秒と合わせてトゥーペイを1秒上回り、個人総合首位となった。

個人総合首位はベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック)個人総合首位はベンジャミン・ヒル(リュブリャナ・グスト・サンティック) photo:Satoru Kato「スタート直後トラブルがあってバイク交換をしたが、チームメイトのものだったので合わず、もう一度交換することになった。その時点で今日は終わったと思ったけれど、集団復帰が良いウォーミングアップになって調子が良くなってきた。今日勝てたのはチームメイトのアシストのおかげ」と、レースを振り返るヒル。

2017年のツール・ド・とちぎでは個人総合優勝しているが、日本のレースとの相性を聞かれると「小集団に持ち込む自分のレーススタイルと、日本のレースコースの特徴が自分に合っているのだと思う。相性は良いと思っている」とコメントした。

13秒遅れでフィニッシュするメイン集団 オールイス・アルベルト・アウラール(マトリックスパワータグ)に続く4位に窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)13秒遅れでフィニッシュするメイン集団 オールイス・アルベルト・アウラール(マトリックスパワータグ)に続く4位に窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Katoポイント賞を獲得した窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)ポイント賞を獲得した窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato

ポイント賞は、この日4位の窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)が獲得した。

「チームの作戦は自分のスプリントで勝負だったが、最終周回の平坦区間で2人がアタックし、コントロールするチームがなくて逃げ切りを許してしまった。結果としてポイント賞を獲得出来てホッとしているが、勝ちたかった。日本人が結果を残さねばならないと思うし、このジャージを東京までキープしていきたい。明日の美濃ステージは、自分も狙ってはいるが、チームとしては黒枝士揮選手でも勝てるようにしていきたい」と、コメントした。

山岳賞はフィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)山岳賞はフィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Satoru Kato新人賞はエイデン・トゥーペイ(チーム・ブリッジレーン)新人賞はエイデン・トゥーペイ(チーム・ブリッジレーン) photo:Satoru Kato



リーダーチームのチーム・ブリッジレーンが集団コントロールをしなかったこともあり、再びリーダージャージが入れ替わる結果となった。明日の第4ステージ・美濃は、例年スプリンターステージとなるため、よほどのことが無ければ個人総合に変動は起きないはず。それも、明日のリーダーチーム次第か。

第3ステージ:いなべ 結果(阿下喜駅前→いなべ市梅林公園周回コース 127km)
1位 ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、リュブリャナ・グスト・サンティック) 3時間18分34秒
2位 アダム・トーパリック(チェコ、チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー) +0秒
3位 オールイス・アルベルト・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ) +13秒
4位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)
5位 ベンジャミン・プラデス・レヴェルテル(スペイン、チーム右京)
6位 フェデリコ・ズルロ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)
7位 フランシスコ・マンセボ・ペレス(スペイン、マトリックスパワータグ)
8位 サム・クローム(オーストラリア、チーム右京) +16秒
9位 中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)
10位 レイモンド・クレダー(オランダ、チーム右京)
個人総合成績(第3ステージ:いなべ 終了時)
1位 ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、リュブリャナ・グスト・サンティック) 6時間3分10秒
2位 エイデン・トゥーペイ(オーストラリア、チーム・ブリッジレーン) +1秒
3位 アダム・トーパリック(チェコ、チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー) +2秒
4位 入部正太朗(シマノレーシングチーム) +9秒
5位 オールイス・アルベルト・アウラール(ベネズエラ、マトリックスパワータグ) +15秒
6位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) +18秒
ポイント賞(第3ステージ:いなべ 終了時)
1位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 35p
2位 エイデン・トゥーペイ(オーストラリア、チーム・ブリッジレーン) 33p
3位 アダム・トーパリック(チェコ、チーム・ザワーランド・NRW・P/B・SKS・ジャーマニー) 31p
山岳賞(第3ステージ:いなべ 終了時)
1位 フィリッポ・ザッカンティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) 16p
2位 アドリアン・ギロネット(フランス、インタープロサイクリングアカデミー) 7p
3位 エミール・ディマ(ルーマニア、ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー) 5p
チーム総合(第3ステージ:いなべ 終了時)
1位 チーム・ブリッジレーン 18時間10分34秒
2位 リュブリャナ・グスト・サンティック +3秒
3位 チーム右京 +10秒
text&photo:Satoru Kato in Inabe-city

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