「注目されるのは光栄でありがたいことなのですが、最近は自分の実力以上に注目されていて少し怖い気持ちもあります」と語るのは、ジロ・デ・イタリア第3ステージで単独逃げを試み、イタリア国内での知名度や人気をあげた初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)。1回目の休息日を迎えた初山にここまでのステージを振り返ってもらった。


開幕地エミリア=ロマーニャ州に戻り、ジロは1回目の休息日を迎えた。第3ステージの単独逃げで一躍イタリアの有名人となった初山翔は、第10ステージのスタート地点ラヴェンナのホテルで休息日を過ごした。午前中に1時間ほどチームメイトたちと軽めのライドに出かけ、午後はイタリア国営放送RAIの番組収録で近くのビーチへ。本格山岳はまだ登場していないが、悪天候によってタフなステージが続いた前半戦について聞いた。

第1ステージ 3級山岳サンルーカに挑む初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第1ステージ 3級山岳サンルーカに挑む初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
第2ステージ スタートを待つ初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第2ステージ スタートを待つ初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
先ずはここまでの9日間を振り返っての感想を

(冗談で)ここまでたどり着けるとは思いませんでしたね。レースでも合宿でもこんなに長い距離を立て続けに走ったことがないですし、9日前のボローニャの開幕が遠い昔のように感じます。距離が230kmを超えるステージが続きましたが、2017年のティレーノ〜アドリアティコで2日間連続で220km以上を走った時にエネルギー管理に失敗し、いつもの感覚で走っていたら補給が間に合わないことを学んだので、その経験を生かすことができています。

ジロならではと感じることはありますか?

ティレーノもそうでしたけど、ジロ期間中は忙しくて時間がない。朝起きてから夜寝るまで、ゆっくりとする時間が全然ないです。ホテルに帰ってからマッサージを受けて、21時に夕食をとり、就寝は23時ぐらい。毎日ブログを書いていた(山本)元喜が信じられない。自分には考えられないです。

第3ステージ 逃げ続ける初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第3ステージ 逃げ続ける初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
第3ステージ 7分を超えるリードを得た初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第3ステージ 7分を超えるリードを得た初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Luca Bettini
第3ステージ フィニッシュ地点で坂本拓也マッサーに迎えられる初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第3ステージ フィニッシュ地点で坂本拓也マッサーに迎えられる初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
ここまでのステージの中で一番厳しかったのは?

逃げた第3ステージよりも、その次の日の第4ステージの方がきつかった。逃げからのダメージがあることは分かっていたので警戒していたのですが、風も強かったので辛かったですね。あとはスタートからずっと速かった(最初の2時間の平均スピード48km/h以上)第7ステージも大変でした。天気としては、土砂降りの第5ステージがめちゃくちゃ寒くて、最低気温4度の雨だった。今年の中で一番寒かったです。

逆に、昨日の第9ステージ個人タイムトライアルは休めました。予定通り、登りに入ってすぐにTTバイクからノーマルバイクに乗り換え。タイムアウトになる可能性がないことを確認しながら、できるだけ脚を貯めるために余裕を持って走りました。

疲労困憊というほどではない?

もちろん疲れてますが、そこまでじゃない。一昨日も昨日も休めましたし、想像よりも疲れていないです。頑張ればグルペットに入ることなく集団についていけるステージもありましたが、休むところは休む、踏むところは踏むというメリハリをつけて走ることができています。

「完走だけを目指す」と思いながら走っているわけではありませんが、基本的にグランツールに限らずステージレースで完走するのが当たり前だと思っていますし、3週間走った後に身体がどうなるのかを知るためにも走り切りたいです。3週間走りきってみないと分からないことがあると思うので。

完走という意味で一番のポイントになるのが、スタート後すぐに登りがあり、距離が短い第14ステージ
第4ステージ ガゼッタ紙の特集ページと初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第4ステージ ガゼッタ紙の特集ページと初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
第4ステージ 出走サインに向かう初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第4ステージ 出走サインに向かう初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
第5ステージ 安全に雨のステージを終えた初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第5ステージ 安全に雨のステージを終えた初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
イタリア国内における初山翔の注目度について

注目されるのは光栄でありがたいことなのですが、最近は自分の実力以上に注目されていて少し怖い気持ちもあります。西村が初日にリタイアしたことや単独逃げだったことなど偶然が重なって、とても注目される存在になっていることは自覚しています。

マリオ監督には「前回の逃げでイタリアのスーパースターになった。もう1回逃げることができれば俺のスーパースターになるぞ」と言われています。ステージによってはまた逃げに乗ることは可能だと思いますが、問題は結果につなげることができるか、そしてその後のステージですね。

NIPPOとしてステージ優勝を目指すためにできることは?

カノラやロバトはスプリント力があるもののピュアスプリンターではない。なかなか力になれないので申し訳ないのですが、ジロのレベルになるとチーム力がないと集団スプリントはなかなか難しいです。そうなると逃げからステージ優勝を狙うことになる。チーム内で逃げる選手はコースによって決まっていて、逃げ切りの可能性が高い登りを含むステージではサンタロミータやバジオーリが、平坦基調のステージでは自分やチーマが逃げることになっています。

2週目も引き続き自分に何ができるかを見定めながら、チームに何を求められるかを見て、最後まで走り切りたい。明日ももちろんマリオ監督に「行け!」と言われれば逃げることになりますし、チームの指示次第ですね。

第9ステージ フィニッシュまで残り1.5kmを切る初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)第9ステージ フィニッシュまで残り1.5kmを切る初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
ラヴェンナ近くのビーチを歩く初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)ラヴェンナ近くのビーチを歩く初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Luca Bettini
RAIのインタビューを受ける初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)RAIのインタビューを受ける初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Luca Bettini

text&photo:Kei Tsuji in Ravenna, Italy