ボーナスタイムで総合成績が動く接戦となったツール・ド・ヨークシャー第4ステージは、3名によるスプリントをグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)が制す。総合優勝はステージ2位のクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)が掴み取った。



ハリファックスの街をスタートしていくメイン集団ハリファックスの街をスタートしていくメイン集団 (c)SWPix.com/A.S.O
ハリファックスからヨークシャーテイルズの丘陵地帯を時計回りに進行しリーズへと戻る175kmのツール・ド・ヨークシャー第4ステージ。計5箇所にカテゴリー山岳が待ち構えているものの、最後の山岳からフィニッシュまでは20kmの下り基調、差が小さい総合争いがレースの展開を厳しいものにすることが予想される。

ヨークシャーらしい厚い雲で覆われるもののこの日はドライコンディション。フランスのプロコンチネンタルチームを中心とした9名がエスケープを決めた。ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ(ピエール・ロラン、アルノー・クールテイユ)とマディソンジェネシス(ジョイ・ウォーカー、ジョナサン・マッケボイ)が2名を揃えたものの、マッケボイが3つの山岳を終えた時点で脱落。レース後半は8名でメイン集団から逃げ切りを図る。

ここに山岳賞ジャージを着用するロバート・スコット(イギリス、チームウィギンス・ルコル)の姿はなく、ポイント争いは逃げ集団の中から決することに。その中でクールテイユが積極的にポイントを集め、山岳賞ジャージに袖を通している。

総合リーダーを抱えるチームイネオスが集団をコントロール総合リーダーを抱えるチームイネオスが集団をコントロール (c)SWPix.com/A.S.O
ヨークシャーの丘陵地帯を駆け抜けるエスケープグループヨークシャーの丘陵地帯を駆け抜けるエスケープグループ (c)SWPix.com/A.S.O
一方、メイン集団はリーダージャージを擁するチームイネオスが2分ほどのタイム差でコントロール。タイム差0秒の総合2位のアレクサンダー・カンプ(デンマーク)率いるリワルレディネスサイクリング、昨年覇者グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー)の連覇を狙うCCCチームが勝負どころに向けて先頭を固める。この日は風が穏やかなこともあり、風を遮るものがない丘陵地帯でもメイン集団の動きは安定してレースの前半は推移していく。

残り50kmから始まるカテゴリー山岳のグリーンハウヒル(距離3.3km/平均勾配8.3%)が近づくとチームイネオスが加速。この山岳に入りリワルレディネスサイクリングが集団のイニシアチブを奪いハイスピードで牽引していくと、重量級の選手たちが集団からこぼれ落ちていく。しかし、下り基調ながら小刻みにアップダウンを繰り返す区間で数人の選手がメイン集団に復帰。再び大きな一団となり最後のカテゴリー山岳へと突入していく。

イアン・スタナード(イギリス、チームイネオス)が終始集団をコントロールしたイアン・スタナード(イギリス、チームイネオス)が終始集団をコントロールした (c)SWPix.com/A.S.O
大観衆の中カテゴリー山岳を行くメイン集団大観衆の中カテゴリー山岳を行くメイン集団 (c)SWPix.com/A.S.O
最終山岳オトリーシェビンの中腹でクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)が動き、強烈なアタックにより集団が崩壊。この動きに追従できたのはカンプとファンアーフェルマートら5名。ここにクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)の名前はなかった。しかし、チームイネオスが攻撃の手を緩めることはなく、オトリーシェビンの頂上でエディ・ダンバー(アイルランド)がカウンターアタック。

ダンバーの力強い攻撃を追従する選手はおらず、ダンバーはそのまま単独でスタートから逃げていた3名にジョイン。その後ろでは総合首位のローレスが、ペースがあがらないメイン集団に復帰している。スプリントポイントとフィニッシュで与えられるボーナスタイムが絡む接戦の総合首位争いの思惑が絡むレースが最終盤の詰めへ。

残り5.5km、カテゴリーが与えられていない上り勾配でファンアーフェルマートがアタック。ディフェンディングチャンピオンの攻撃についていけたのはローレスのみ。総合2位のカンプはついていけず追走を強いられる。崩壊した逃げグループから先行していたダンバーに追いついた3名は踏みやめることなくフラムルージュを通過する。

鋭い加速でスプリントするグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)鋭い加速でスプリントするグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) (c)CorVos
3名によるスプリントを制したグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)3名によるスプリントを制したグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) (c)CorVos
カンプに追いつかれたくないチームイネオスのダンバーの強力な牽引からファンアーフェルマートがスプリントを開始。ローレスは追従するものの前に出ることはなく、そのまま前年度総合優勝のファンアーフェルマートが先頭を守りきった。クラシックシーズンでは勝ち星をあげることができなかったベテランが、2月のバレンシア以来の勝利を掴んだ。

そして、前日はフィニッシュラインで勝利を逃し悔しさを爆発させたローレスだったが、この日は総合優勝を掴み取り喜びの雄叫びをあげた。新チーム名、新ジャージとなった初戦で総合優勝を果たしたチームイネオスとしては、これから始まるグランツールシーズンに向けて好発進となった。

またローレスは「ホームレースで勝てるなんて信じられないし嬉しくてたまらない。自分でも信じられない4日間だったし、これまで自転車の上で過ごした中で最も走りを追求した日々だった。ヨークシャーでの思い出はいつも良いものであったし、ファンは常に応援してくれるんだ。今回のレースでも何度の僕の名前を叫んでいたのを聞いていたよ。そんな場所で優勝できるなんて素晴らしいね」と喜びをあらわにした。

僅差の争いとなったツール・ド・ヨークシャーを制したのはクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)僅差の争いとなったツール・ド・ヨークシャーを制したのはクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) (c)SWPix.com/A.S.O

ツール・ド・ヨークシャー2019第4ステージ結果
1位 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) 4:40:03
2位 クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)
3位 エディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス) 0:02
4位 トムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ) 0:09
5位 ジェームズ・ショウ(イギリス、スイフトカーボン)
6位 マシュー・ホームズ(イギリス、マディソンジェネシス)
7位 アレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング)
8位 ガブリエル・クレー(イギリス、チームウィギンズ・ルコル) 0:12
9位 イエンセ・ビエルマンス(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
10位 スコット・スウェイツ(イギリス、ヴィタス・プロサイクリング)
個人総合成績
1位 クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) 15:18:12
2位 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) 0:02
3位 エディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス) 0:11
4位 アレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング) 0:15
5位 ジェームズ・ショウ(イギリス、スイフトカーボン) 0:25
6位 マシュー・ホームズ(イギリス、マディソンジェネシス)
7位 トムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)
8位 スコット・スウェイツ(イギリス、ヴィタス・プロサイクリング) 0:28
9位 コナー・スウィフト(イギリス、マディソンジェネシス)
10位 ニック・ファンデルレイケ(オランダ、ルームポット・シャルル)
ポイント賞
クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) 35pt
山岳賞
アルノー・クールテイユ(フランス、ヴィタルコンセプトB&Bホテルス ) 18pt
text:Gakuto Fujiwara