アラフィリップやニバリ、サガンらによる逃げ切りか、それともガビリアやユアン、ヴィヴィアーニらによる集団スプリントか。終盤にかけてチプレッサとポッジオが登場する世界最長291kmコースで開催される第110回ミラノ〜サンレモの見どころをプレビューします。

ポッジオでのアタックか、それとも集団スプリントか 7時間におよぶ耐久レース

リグーリア海岸を西に進むにつれて天候は回復リグーリア海岸を西に進むにつれて天候は回復 photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari / Alpozzi
ミラノ〜サンレモ2019ミラノ〜サンレモ2019 photo:RCS Sport3月23日(土)イタリアに春の訪れを告げる伝統の一戦ミラノ〜サンレモが開催される(日曜日ではなく土曜日開催なので注意)。イタリアで「ラ・プリマヴェーラ(春)」と呼ばれるミラノ〜サンレモは今年で開催110回目。シーズン最初の「モニュメント(五大クラシック:サンレモ、ロンド、ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)」であり、「クラッシチッシマ(クラシックの最上級)」とも呼ばれる極めて格式の高いクラシックレースだ。

コースはレース名の通りミラノからサンレモまで。正真正銘ミラノの中心地をスタートし、リグーリア海岸のサンレモまで約7時間かけて走りきる。その距離は300kmの大台目前の291km。日本で言うならば東京都から愛知県岡崎市、もしくは東京都から福島県福島市まで、大阪市から静岡県掛川市、もしくは大阪市から広島県竹原市までの距離に匹敵するほどの長旅であり、現存するロードレースの中で最長距離を誇っている。

内陸部の大都市ミラノをスタート後、ロンバルディア平原を突っ切る前半部はひたすら平坦。広大な平原に別れを告げてトゥルキーノ峠(標高532m)を越えると季節は冬から春に切り替わる。そこからリグーリア海に沿ったオーシャンロードを走り、後半に登場するトレ・カーピ、チプレッサ、ポッジオに向けてレースは加速していく。
ミラノ〜サンレモ2019 コース高低図ミラノ〜サンレモ2019 コース高低図 photo:RCS Sport
レースが慌ただしさを増すのが、残り60kmを切ってから登場するトレ・カーピ(3つの岬)と呼ばれるカーポ・メーレ、カーポ・チェルヴォ、カーポ・ベルタに差し掛かってから。さらにフィニッシュ27km手前からチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)とポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)を連続してクリアする。

チプレッサとポッジオでは、今年も激しいアタック合戦が繰り広げられるだろう。いずれも勾配や難易度はそれほど高くない。しかしすでにスタートから7時間近く走っている脚が本来のポテンシャルを発揮できるかどうかは分からない。ここで飛び出した選手が、スプリンターチームの追撃を振り切ってフィニッシュまでの逃げ切りを図る。フィニッシュラインが引かれるのは5年連続で伝統的なローマ通り。道路工事や周辺住民の反対によって2008年から7年間姿を消していたサンレモの目抜き通りでレースはフィナーレを迎える。

ミラノ〜サンレモ2019 残り30km高低図ミラノ〜サンレモ2019 残り30km高低図 photo:RCS Sportミラノ〜サンレモ2019 フィニッシュレイアウトミラノ〜サンレモ2019 フィニッシュレイアウト photo:RCS Sport

ポッジオ通過後の長さ3.2kmのテクニカルなダウンヒルや、下り終了後2.2km続く平坦区間で飛び出す選手も出てくるだろう。クライマーやパンチャーの逃げ切りか、それともスプリンターの追い上げ&スプリントバトルか。様々な展開が絶妙なバランスでクロスするコースレイアウトがミラノ〜サンレモ最大の魅力だ。近年のフィニッシュパターン(以下参照)を見ると、アタックからの逃げ切り勝利と集団スプリントは五分五分と言ったところ。

現地の天候は週末にかけて晴れで、最高気温は17度ほどまで上がる見通し。南西の風が吹く予報が出ているため、ポッジオからフィニッシュまでは概ね向かい風となる。つまり風の状況は単独アタックよりも集団スプリントに味方している。

近年のフィニッシュパターン
2005年 集団スプリント(約40名)アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2006年 ポッジオアタック(5名)フィリッポ・ポッツァート(イタリア)
2007年 集団スプリント(約50名)オスカル・フレイレ(スペイン)
2008年 平坦路アタック(1名)ファビアン・カンチェラーラ(スイス)
2009年 集団スプリント(約40名)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2010年 集団スプリント(約30名)オスカル・フレイレ(スペイン)
2011年 ポッジオアタック(8名)マシュー・ゴス(オーストラリア)
2012年 ポッジオアタック(3名)サイモン・ゲランス(オーストラリア)
2013年 ポッジオアタック(6名)ゲラルド・チオレック(ドイツ)
2014年 集団スプリント(約30名)アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)
2015年 集団スプリント(約30名)ジョン・デゲンコルプ(ドイツ)
2016年 集団スプリント(約40名)アルノー・デマール(フランス)
2017年 ポッジオアタック(3名)ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)
2018年 ポッジオアタック(1名)ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)


世界最高峰のパンチャーと世界最高峰のスプリンターによる戦い

2018年に集団を振り切って勝利したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)2018年に集団を振り切って勝利したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari / Alpozzi
1年前にポッジオでアタックを仕掛け、鮮やかな独走逃げ切り勝利でイタリアを沸かせたヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)はゼッケン1をつけてスタートラインに並ぶ。ティレーノ〜アドリアティコでは精彩を欠いて総合15位に沈んだが、振り返ってみると昨年も見せ場のないまま総合11位だった。ポッジオでニバリは激しいマークに合うだろう。バーレーン・メリダには、厳しい展開に強いソンニ・コルブレッリ(イタリア)や2009年2位のハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)ら、勝てるスプリンターも揃っている。

今シーズン最多6勝(3月22日現在)を飾り、現在最も波に乗っているのはジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)だ。直前のティレーノ〜アドリアティコでステージ2勝しており、しかも第6ステージでは大集団スプリントで勝利してみせた。アラフィリップは初出場した2017年に三つ巴のスプリントで3位。過去に14回出場しているフィリップ・ジルベール(ベルギー)とともにポッジオでアタックを仕掛けてかき回してくるだろう。集団スプリントに持ち込まれればエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)に出番が回ってくる。とにかくカードの多さがドゥクーニンク・クイックステップの強みだ。

様々なタイトルを総なめにしている感のあるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)だが、ミラノ〜サンレモでは2位を2回経験しながらまだ勝利を飾っていない。体調不良をおして出場したティレーノ〜アドリアティコでは第3ステージ2位、第6ステージ5位と、相変わらずの勝負強さを披露している。サガンは逃げでも集団スプリントでも勝利を狙える選手。パリ〜ニースでステージ2勝したピュアスプリンターのサム・ベネット(アイルランド)とのダブルエース体制で挑むことになりそうだ。

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:RCS Sportペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji

パリ〜ニース初日に落車リタイアしたマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)やグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)も様々な展開から勝利を狙える選手。ヨーロッパチャンピオンのマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)や世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も精鋭グループの中に残るはずだ。グランツールの総合優勝候補トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)らはピュアスプリンターを苦しめるために登りで攻撃を仕掛けてくるだろう。

2017年にサガンとアラフィリップというスプリント力のある二大パンチャーを打ち破って勝利したのはミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)。好調なポーランドチャンピオンはニースで総合3位に入っている。

マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) photo:CorVos
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:RCS Sportミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos

2014年の優勝者アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)はフェルナンド・ガビリア(コロンビア)とタッグを組む。伝統的にクライマーを多く輩出してきたコロンビアは、このミラノ〜サンレモでまだ優勝をつかんだことが無いどころか表彰台にも登ったことが無い。ガビリアはミラノ〜サンレモの表彰台に最も近いコロンビア人選手であり、クリストフとのリードアウトが機能すれば勝利は近い。初出場の新星ジャスパー・フィリプセン(ベルギー)もスプリントに絡んでくるかもしれない。

昨年の集団スプリントを制して2位に入ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)は表彰台の真ん中へのステップアップを目指す。優勝経験者のアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)はもちろん、パリ〜ニースでステージ2勝を飾ったディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)やナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)も集団スプリントでの勝利を狙っている。フルーネウェーヘンのチームメイトで、ストラーデビアンケ3位の元シクロクロス世界王者ワウト・ファンアールト(ベルギー)にも注目したい。

未だ不調の波を抜け出せず、パリ〜ニース第2ステージでリタイアした2009年の優勝者マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)は欠場。代わりにジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)が南アフリカチームのエースを担うことになりそうだ。

フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVosサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.
カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsujiディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos

text:Kei Tsuji
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