ドゥクーニンク・クイックステップがティレーノ〜アドリアティコ第6ステージの大集団スプリントを支配。イタリアチャンピオンのヴィヴィアーニではなく、総合5位のジュリアン・アラフィリップ(フランス)が周囲を驚かすスピードで今大会2勝目を手にしている。


マルケ州を走る最終日前日の第6ステージマルケ州を走る最終日前日の第6ステージ photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

ティレーノ〜アドリアティコ2019第6ステージティレーノ〜アドリアティコ2019第6ステージ photo:RCS Sportティレーノ〜アドリアティコ第6ステージはマテリカからイェージまでの195km。マルケ州を走るコースには獲得標高差2,350mほどの登りが含まれているものの、ピュアスプリンターにとっては貴重な活躍のチャンス。さらに週末のミラノ〜サンレモを前に最後の予行演習となった。

総合上位陣が最終日の個人タイムトライアルに向けてリカバリーに励む中、先頭ではポイント賞奪回を目指すミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)を含む7名が先頭グループを形成して逃げる展開に。15km地点で3分30秒まで広がったタイム差はスプリンターチームの牽引によって常に2分前後に抑え込まれた。

ドゥクーニンク・クイックステップ、UAEチームエミレーツ、ボーラ・ハンスグローエがそれぞれヴィヴィアーニ、ガビリア、サガンのためにメイン集団を牽引。逃げグループ内で中間スプリントを連取したマエストリはオレンジ色のポイント賞ジャージを取り戻すことに成功している。

合計3周する全長12.6kmのイェージ周回コースに入るとタイム差の縮小は加速。先頭ではダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アスタナ)とホセ・ロハス(スペイン、モビスター)の2人が逃げ続けたものの、ドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエの2チームが徹底的に牽引するメイン集団が後方に迫り来る。

抵抗し続けたバッレリーニとロハスは38秒のリードで最終周回へ。しかし平坦基調の周回コースでのスピード差は明白で、好調アスタナの波に乗るべく独走に持ち込んだバッレリーニも残り3km地点で吸収された。


春の訪れを感じさせる田舎道を走る春の訪れを感じさせる田舎道を走る photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
青いリーダージャージを着て走るアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)青いリーダージャージを着て走るアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
イェージに向かう195kmのステージイェージに向かう195kmのステージ photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
引き続きドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエの連合軍がメイン集団の先頭を支配し、集団スプリントに向けて順調に駒を進めていく。最終的に主導権を奪ったのはドゥクーニンク・クイックステップ。ゼネク・スティバル(チェコ)を先頭に残り1kmアーチを通過すると、バトンを受け取ったミケル・モルコフ(デンマーク)が残り500mから、そしてマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)が残り300mから先頭に立った。

リケーゼとジュリアン・アラフィリップ(フランス)が少し抜け出した形でスプリントが始まったが、肝心のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が隊列の後ろにいない。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)の番手でスプリントの開始を待ったヴィヴィアーニを待つことなく、躊躇することなくアラフィリップが先頭でスプリントを開始。2%ほどの緩斜面を最高スピード60km/hで駆け抜けたアラフィリップが、ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエルサイクリングアカデミー)の追い上げを振り切った。

ラスト230mの出力体重比 - 最大ワット
1位 アラフィリップ     14.2W/kg - 最大1,065W
2位 チモライ        13.0W/kg - 最大1,110W
3位 ヴィヴィアーニ     13.8W/kg - 最大1,280W
5位 サガン         13.6W/kg - 最大1,260W
6位 リケーゼ        13.8W/kg - 最大1,155W
8位 ファンアーフェルマート 12.3W/kg - 最大1,060W


レンガ色の街並みを抜けるレンガ色の街並みを抜ける photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
集団スプリントで先頭を駆け抜けるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)集団スプリントで先頭を駆け抜けるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
集団スプリントを制したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)集団スプリントを制したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

「本来はエリア(ヴィヴィアーニ)のための位置どりが目的だったけど、最終周回に入ったところでエリアが『もしスプリントしたいなら行っていいぞ』と言ってくれたんだ。マックス・リケーゼの後ろでタイミングを待って、残り200mのサインが見えたところで全開でスプリントを開始した。これは1日中ずっと集団先頭で仕事をしたチームの勝利。集団スプリントでガッツポーズするなんて驚きだ」。ブエルタ・ア・サンフアンでのステージ2勝、ツアーコロンビアでのステージ1勝、ストラーデビアンケ優勝、そしてティレーノ第2ステージ優勝に続く今シーズン6勝目(世界最多)を飾ったアラフィリップは勢いづいている。

アラフィリップはボーナスタイム10秒を獲得し、総合5位のポジションにつけて最終日の10.05km個人タイムトライアルに挑むことに。「明日のタイムトライアルは精一杯走りたい。そしてその先には自分としてもチームとしても重要なミラノ〜サンレモが待っている。ドゥクーニンク・クイックステップは強力だけど、勝つのは決して簡単なことじゃない。とにかく目標レースに向けて調子が整っているのは素晴らしいこと。集団スプリントになればエリアにもチャンスがある。今シーズン最初のモニュメントで勝つためのカードがチームには揃っている」と、アラフィリップは週末に迫った大一番に目を向けている。

イギリス人選手としてマーク・カヴェンディッシュに並ぶリーダージャージ着用5日目を迎えたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は安全に集団内でフィニッシュ。「スプリントステージはいつでもトリッキー。今日は特に風の影響でとてもナーバスだった。明日は全力を尽くすのみ。総合リードを守れなかったらそれまでだ」とコメントする。個人タイムトライアルを得意とする総合2位プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とのタイム差は25秒。総合3位ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)は35秒遅れで、総合優勝の行方は実質的にこの上位3名に絞られたと言っていいだろう。


第2ステージに続く2勝目を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)第2ステージに続く2勝目を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrariリーダージャージを着て最終ステージに挑むことになったアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)リーダージャージを着て最終ステージに挑むことになったアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
ティレーノ〜アドリアティコ2019第6ステージ結果
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4:42:11
2位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエルサイクリングアカデミー)
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
4位 クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール)
5位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)
7位 イェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル)
8位 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
9位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
10位 シモーネ・コンソンニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
個人総合成績
1位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 25:15:59
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:00:25
3位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) 0:00:35
4位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 0:01:55
5位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:02:24
6位 ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) 0:02:39
7位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:02:46
8位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 0:02:58
9位 サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) 0:03:03
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 0:03:26
ポイント賞
1位 ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF) 31pts
2位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 27pts
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 26pts
山岳賞
1位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) 35pts
2位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) 34pts
3位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 25pts
ヤングライダー賞
1位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 25:18:57
2位 ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル) 0:00:37
3位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 0:02:13
チーム総合成績
1位 EFエデュケーションファースト 75:16:44
2位 トレック・セガフレード 0:01:29
3位 サンウェブ 0:05:34
text:Kei Tsuji
photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

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