12月3日、デサントが主催する記者発表が行われ、同社がサプライヤー契約を結ぶ各競技のアスリートが集結。日本自転車競技連盟の所属選手を代表してMTB競技の山本幸平が登壇した。その場で今季の活動振り返りと、東京五輪へ向かう意気込みを語ってもらう機会を得た。

まずは山本へのインタビューをお届けする。2018年を振り返って。また、2020年東京オリンピックヘ向けての話を聞いた。

2018年シーズンを振り返る山本幸平2018年シーズンを振り返る山本幸平 photo:Makoto.AYANO
ー まず今シーズンを振り返って、いかがでしたか? 新体制で活動した1年でしたね。

3月に結成されたドリームシーカーMTBチーム 選手は山本のほかに若手の北林力、松尾純が所属3月に結成されたドリームシーカーMTBチーム 選手は山本のほかに若手の北林力、松尾純が所属 photo:So.Isobe今年はDreamSeeker(ドリームシーカー)MTBチームを立ち上げて活動した1年でした。世界的に見ても選手がチームをマネジメントしながら自身も走るといういのは例がないことでしたが、それができたということが、まずは良かったと思います。いっぽうで、自分自身の走りの結果としては、一番切れ味のある走りのできた2013年と比べると物足りなさを感じる1年でした。あのときはワールドカップ全戦でトップ20に入れていましたが、今年は40位前後。スタート位置が悪かったというのは一つの原因なんですが、2013年の走りのイメージからは遠かったので、今シーズンはそこまでもっていけなかったという事実があります。このオフはそれを取り戻せるように、来シーズンを見据えてトレーニングしていきたいと思っています。次の本番に向けて挑んでいきます。

今シーズンを振り返る山本幸平今シーズンを振り返る山本幸平 photo:Makoto.AYANOー セルフプロデュースして走るという新たな形態へのチャレンジ。イメージどおりにいったこと、あるいはうまくいかなかったことを教えてください。

まず活動を支援し、支えてくれるスポンサーに関して言うと、応援してくれる人たちが本当に多くて、それがすごくありがたいし、力になりました。挨拶回りや交渉事には慣れないし、疲れることなんですが、でも応援してくれる方と実際に会って、話して、応援していただけることでパワーをもらえ、より力となるんです。

ー 応援してくれることをまさに実感できたということですね。

今までのようにチームに所属して走っていたら、そういった方々とは直接会って話をする機会もないし、与えられた環境を当然のように思ってしまうと思います。本当の意味での感謝の気持ちは薄かったのが、より実体験として、自分の想いを伝えて、それを聞いてくださった上でサポートしてくれる方の顔が見えるということで、今まで以上に熱い想いをもってレースに臨めています。

ポスト山本を期待される北林力。2017年は山本と同チームでMTBレース活動に初めて専念する環境を得たポスト山本を期待される北林力。2017年は山本と同チームでMTBレース活動に初めて専念する環境を得た photo:So.Isobe難しかったのは、若手の育成です。北林力選手を育てたいという考えから一緒に活動をしてきました。もっと簡単に選手強化ができることと思っていたのですが、それは難しかった。彼自身の成績を出すことはできなかった。人を育てるのは難しいということを感じました。

ー 何が難しかったのでしょうか?

彼にとって選手活動の1年目でした。スキーをやりながらMTBに乗っていた彼が、親元を離れてMTBにだけ絞る環境を手に入れた。年齢も一回り以上違う僕と一緒に活動することになった。その僕も世界で走っている選手ということで、すべての面をサポートしてくれるわけでもない。自分とは年齢差もあるし、レースに対する取り組み方も違う。彼にとって、レースよりも私生活の部分ですべて驚きの連続だったと思います。食生活などすべてを見直してプロ生活へと入る難しさ。あっという間に1年が終わったという状況ではないでしょうか。

ー 今シーズンうまくいったレース、行かなかったレースを教えてください。

2017全日本選手権、両手の平を広げて10度目の優勝を表現する山本幸平(Dream Seeker Racing Team)2017全日本選手権、両手の平を広げて10度目の優勝を表現する山本幸平(Dream Seeker Racing Team) photo:Satoshi Odaマストで勝たなくてはいけないレースである全日本選手権とアジア選手権には勝てたのでそこは良しとして、目標としていたアジア大会には様々な事情があって選考されなかった。それは僕自身にとっては残念でしかなかった。アジア大会は過去2回出場していてまだ勝っていなかったので、アジア大会はキャリアとして勝っておきたかったレースだったんです。

世界選手権は集中してやってきて、50位。自分自身、アスリートとして進化していけなかったらこのままダラダラと終わるのかなという危機感はあります。アスリートならしっかりとやることをやって輝かないといけないという気持ちがあります。

ー 来シーズンの具体的な目標は何でしょうか?

日本自転車競技連盟所属選手を代表して登壇した山本幸平日本自転車競技連盟所属選手を代表して登壇した山本幸平 photo:Makoto.AYANO5月26日からの1年間の獲得ポイントでオリンピックの日本人選手の出場選考が決まるので、その1年をクールに、怪我なく過ごすことが第1の目標です。そうすればオリンピックは自然と見えてくる。もう3度も出場していますから、僕が出場できると決まったら100%コンディションを合わせられる自信があります。

ー 東京で開催される五輪には地の利がありますか?

オリンピックのことは知りつくしているし、まして日本で開催されるオリンピックだから、有利に間違いないです。2019年はしっかりと、無難に、自分を大切に過ごしていきたい。

ー 自分が東京五輪を目指すという一方、若者を育てるということとのバランスはどうなりますか?

北林君がチームメイトということには変わりないですが、北林君には新たにフランス人のコーチについてもらうことにしました。彼のもとで走ってもらうスタイルに変えます。コーチのもとで、僕がかつてやってきたような武者修行スタイルを取り入れる。それで伸びていってもらったら良いという作戦です。

ー 2019年の東京五輪に向けてのタイムラインをどう考えていますか?
 
山本幸平山本幸平 photo:Makoto.AYANO来年の5月からのポイント獲得だけを見つめていても、ワールドカップで走れなければスタート位置も悪くなるなど、前に行きにくい状況になってしまう。3月からアメリカに行き、自分がこのオフに行うトレーニングが成績として出るようなレースもしていくつもりです。そして5月のヨーロッパ遠征からはリズムに乗ることができるように。

来季は久々に自分の走りができるようになるイメージがあります。この5、6年は落ち着いちゃった面があるんですが、来シーズンがラストになってもいいぐらいの走りをしていきたい。自分自身への挑戦をしていく。そうすれば2020年はあっという間に来ると思っています。

ー 結婚したことで家庭をもち、生活が充実して、お子さんも誕生して、心からのサポーターができました。そのことでの環境、心境や精神面の変化はありますか?

やっぱり違いますね。今までは私生活面で寂しさを感じたり、オフに遊びすぎたり、つい暴飲暴食をしてしまったりという面があったけど、それが無くなった。生活面が充実すると、メンタル面でもコンディションが整えやすくなっていくというのを実感しています。家族がパワーになるんだな、と感じています。来年から2020年、僕の走りに期待していください。



デサントが日本自転車競技連盟のウェアサプライヤーに レース&代表ウェアの開発を手がける

デサントがサプライヤーを務める各競技を代表したアスリートが集ったデサントがサプライヤーを務める各競技を代表したアスリートが集った photo:Makoto.AYANO
今回、山本幸平が出席したのはアパレルメーカーのデサント・ジャパンによる記者発表会。デサントは日本水泳連盟、日本ゴルフ協会、日本フェンシング協会そして日本自転車競技連盟など10競技連盟と契約し、競技用のウェアとデレゲーション(代表)ウェアを各団体に提供する。今回は自転車競技(ロード、パラサイクリングを除く)で日本代表選手が着用するレースウェアの発表はなかったが、オリンピックに向けて開発を進めているという。

日本自転車競技連盟所属選手を代表して登壇した山本幸平日本自転車競技連盟所属選手を代表して登壇した山本幸平 photo:Makoto.AYANOデサントが提供するトレーニング&アフターウェアデサントが提供するトレーニング&アフターウェア photo:Makoto.AYANO


山本は発表されたトレーニング用&代表ウェアの着心地を「自分は汗かきなので、涼しく着こなせるのはいい」と評価。開発を進めているというレース時に着用するジャージについては、「すでに今年の世界選手権でもデサント製ウェアで走っているので、そのフィードバックが活かされたものになります。五輪では日本の厳しい暑さへの対策を施したウェアが必要になり、自身が選手として選ばれた際にはリクエストした各部のサイズ感なども活かされるでしょう。デサントはいろいろなスポーツのノウハウをもっているので、それを活用した製品づくりに期待しています」と語った。

また、「来年の10月にプレ五輪レースがあるんですが、やはり10月と本番の8月では暑さがまったく違うはず。五輪の本番時には想像以上の暑さのなかのレースが想定されているけれど、その厳しさは自分にとって有利に働きます」とコメントした。 

photo&text:Makoto.AYANO