終盤の目まぐるしい展開で詰めかけた観客たちを大いに興奮させたツール・ド・フランスさいたまクリテリウム。優勝したバルベルデ、2位のゲラント・トーマス、逃げて3位の新城幸也、そしてマルセル・キッテルらが熱狂のレースを振り返る。

アルカンシェルを着てメインレースに優勝したアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)

世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデとマイヨ・ジョーヌのゲラント・トーマスが飛び出す世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデとマイヨ・ジョーヌのゲラント・トーマスが飛び出す photo:Makoto.AYANO
今日の優勝はとても嬉しい。アルカンシェルを着てレースに勝つことは本当に最高の気分。今日はこれほど多くの観客の皆さんが集まったことに驚きました。終始声援を送ってくれ、沿道には何重にも人垣ができていた。声援にとても励まされ、走ることができた。

ー 終盤に逃げが決まったとき、得意のスプリントで勝てると思いながら走っていた?

アラシロもゲラント(トーマス)もいい走りをしていたから、最後に勝つことにそれほど大きな自信があったわけではありません。序盤からレースが速くて、コーナーも多いコースだったから終盤は脚に疲れが出てきていました。

ー レース前の選手たちとの様子がとても和気あいあいとして仲良く、とてもリラックスしているように見えたが?

レースが始まると敵同士になるけれど、前後は友人として仲良くする。観客の皆さんとの距離もできるだけ縮めて、愛を感じてもらえたらと思う。身近に感じてもらえたら嬉しい。

来日は今回が3回目。1度目は東京でのサイクルショー(ケースデパーニュ時代)、2度めは2013年の第2回さいたまクリテリウムだった。今回のもっとも大きな思い出はファンの皆さんからの愛情です。暖かく迎えてくれて、さいたまが自分にとって素晴らしい場所になりました。

ー 東京オリンピックは意識していますか?

東京五輪まではまだ2年あるけれど、日本で今回勝てたことは五輪に向けてはずみをつけるいいきっかけにはなると思う。

メインレース2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)、1位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、新城幸也(ツール・ド・フランス ジャパンチーム)メインレース2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)、1位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、新城幸也(ツール・ド・フランス ジャパンチーム) photo:Kei Tsuji

ラスト1周前に独走で逃げたが3位の新城幸也(ツール・ド・フランスジャパンチーム)

またさいたまクリテリウムに帰ってくることができて嬉しかった。僕自身初めての表彰台だったので...。今までに敢闘賞は取ったことがあるけれど、表彰台に登るのは初めてなんだな、と、先ほど表彰式のときに気がついたんです。格別の表彰式になりました。

ー 最後の逃げは優勝のチャンスを感じながら走っていた?

独走で逃げる新城幸也(ツール・ド・フランスジャパンチーム)独走で逃げる新城幸也(ツール・ド・フランスジャパンチーム) photo:Makoto.AYANO
今日は序盤から本当にレースが速くて、2、3周目に早くも集団が崩壊するような速さでした。そのときに「今日は大変なレースになるな」と覚悟しました。

別府さんがいつもそばに居てくれて、いい位置で走らせてくれて、最後もゲラント・トーマスがアタックして行ったときも間を埋めてくれて、そのおかげで前に戻ることができた。その後また二人に行かれたときにはニバリが牽いてくれて僕だけ前に追いつけた。ずっと別府さんに助けてもらっていたので今日は勝たなきゃいけないなと思っていたんです。

トーマスとバルベルデの逃げを3人で追うニーバリ、新城、別府トーマスとバルベルデの逃げを3人で追うニーバリ、新城、別府 photo:Makoto.AYANO
でも最後にはもう脚も動かなくなるし、前の二人は世界チャンピオンとマイヨジョーヌなので、ゴールに近ければアタックは許してもらえないだろうし、ゴールまで遠すぎるところで行けば可能性があるだろうと思って1周以上を残してアタックしました。

ー 発表された2019年のツール・ド・フランスのコースを見てどう感じていますか?

まだすべてを見ていなくて、主なステージしか把握できていないけれど、今年のツールと同じように距離は短くても獲得標高があるショート山岳ステージがいくつもあって、山を登れないと勝負にならないツール・ド・フランスだと感じています。だから山をもっと登れるようにトレーニングしたいと思っています。

ー 今年は骨折を2回してツール・ド・フランスの出場が叶わず相当に悔しい思いをしていると思いますが、日本でのツール・ド・フランスのイベントに出て、ツールへの思いを再確認しましたか?

コースを走りながらツール・ド・フランスそのままの看板などを見ているとツールを思い出すし、今年出れなかったという寂しさを感じるんです。今年はとくにツールがフランスの家のすぐ前を走っていたし、今でもツールが通った道路のペイントなどを見かけると気持ちが引き締まるんです。ツールは今までに7回も出て、すでに僕の中で特別なレースになっています。7回出ているレースって他には無いんです。選手を始めたときからツールはずっと目標のレースです。今日表彰台に登って、気が引き締まりました。

バルベルデにスプリントで破れて2位のゲラント・トーマス(チームスカイ)

トンネルのアップダウンをこなすメイン集団に居るゲラント・トーマス(チームスカイ)トンネルのアップダウンをこなすメイン集団に居るゲラント・トーマス(チームスカイ) photo:Makoto.AYANO
レース前半はスピードが速かったこともあり、最後まで生き残ることを考えてレースを進めた。前半に温存したからこそレースの後半に動くことができたんです。バルベルデに負けたのはレースが進むにつれて疲れが出てきていたから。

アラシロやベップなど日本人選手の活躍も見ていて嬉しくなったし、コースもとても良かった。それほどテクニカルというわけではないけど、とてもスピードが出るコース。たくさんの観客の皆さんから歓声を受けて、雰囲気が素晴らしかった。

逃げ集団を追うメイン集団の先頭に出たゲラント・トーマス(チームスカイ)とアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)逃げ集団を追うメイン集団の先頭に出たゲラント・トーマス(チームスカイ)とアレハンドロ・バルベルデ(モビスター) photo:Makoto.AYANOマイヨジョーヌのゲラント・トーマスとペンギンに仮装したファンマイヨジョーヌのゲラント・トーマスとペンギンに仮装したファン photo:Makoto.AYANO


献身的なアシストでチーム賞を獲得した別府史之(ツール・ド・フランスジャパンチーム)

アタックを決めた豪華メンバー集団を牽引する別府史之(ツール・ド・フランスジャパンチーム))アタックを決めた豪華メンバー集団を牽引する別府史之(ツール・ド・フランスジャパンチーム)) photo:Makoto.AYANO
新城選手と連携をとって動くように考えて走っていた。そして新城選手がバルベルデやトーマスと一緒に逃げることができたので、優勝争いをしてくれるだろうと思った。さいたまクリテリウムはもう6回出場しているけれど、今年も盛り上がって、自身の走りとしてもいい走りができたと思う。

ー 今シーズンを振り返ってと、来年以降の目標を教えてください。

今シーズンは終盤にアジア大会で銀メダルと銅メダルをとって、アジアツアーランキングで上位につけて、UCIポイントも獲得できたので来年に向けての弾みになっている。チームとも2年契約して2020年まで走り続けることができる。来季はオリンピックの選考も絡んでくるので集中してシーズンに向かいたいと思います。

ベストチーム賞を獲得したツール・ド・フランス ジャパンチームベストチーム賞を獲得したツール・ド・フランス ジャパンチーム photo:Kei Tsuji

スプリントレース優勝のマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン)

スプリントレース優勝はアレクサンドル・クリストフを下したマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン)スプリントレース優勝はアレクサンドル・クリストフを下したマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン) photo:Makoto.AYANO
とてもいい気分です。多くのファンの皆さんの温かい声援を大いに受けて、素晴らしい時間を過ごすことができた。またいい経験ができて非常に嬉しく思っています。日本の皆さんがレースを心から楽しんでくれていて、ツール・ド・フランスの雰囲気を日本で味わうことができるということで私にとっては本当に特別な機会だと思っています。さいたま、そして日本のみなさんが大好きです。またこうして戻ってくることができてとてもハッピーです。

スプリントレースを制したマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)スプリントレースを制したマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsujiマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン)と小さなファンマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン)と小さなファン photo:Makoto.AYANO


text:Makoto AYANO

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