マヴィックのローハイトホイール「KSYRIUM」シリーズのフラッグシップ、KSYRIUM PRO CARBON SLが待望のUST化。山岳向け軽量カーボンレーシングモデルに、ロードチューブレスの持つ優れた転がりとグリップをプラスしたハイパフォーマンスホイールをインプレッションした。



マヴィック KSYRIUM PRO CARBON SL USTマヴィック KSYRIUM PRO CARBON SL UST photo:Makoto.AYANO
チューブレスタイヤの持つ数々の恩恵をロードホイールにももたらしたマヴィックのロードUST。リムとタイヤの嵌合精度を徹底的に追求し、クリンチャーと変わらぬほどの扱いやすさを備えつつ、チューブレスタイヤならではの低い転がり抵抗と優れたグリップ性能、快適な乗り心地を実現した画期的なシステムだ。国内でも既に高い評価を得ており、今最も熱いロード機材の一つと言えるだろう。

厳密に計算され尽くしたリムベッド形状により、ビードが上がりやすくそれでいて外れにくい、高いメンテナンス性と安全性を両立。手持ちのフロアポンプや携帯用ポンプですらビードを上げることができ、空気の充填に困ることのない作業性の良さを持つ。またチューブとタイヤの間に起こる摩擦によるエネルギーロスが生まれないことで、クリンチャー比マイナス15%もの転がり抵抗低減を実現。マヴィックが掲げるEASY.SAFE.FAST.という3つのテーマをクリアした性能を達成している。

待望のUST化を果たしたローハイトカーボンリムのレーシングホイールだ待望のUST化を果たしたローハイトカーボンリムのレーシングホイールだ
ブレーキ面には独自のiTgMaxテクノロジーを導入し制動性能を強化しているブレーキ面には独自のiTgMaxテクノロジーを導入し制動性能を強化している ボリュームのある内幅19mmのワイドリムに進化。ニップルは外出しでメンテナンス性も高いボリュームのある内幅19mmのワイドリムに進化。ニップルは外出しでメンテナンス性も高い

そんなマヴィックのカーボンロードホイールといえば、平坦向けエアロモデルの「COMETE PRO CARBON」、セミディープでオールラウンドモデルの「COSMIC PRO CARBON」、ローハイト軽量モデルの「KSYRIUM PRO CARBON」という3モデルがラインアップ。前者2モデルから遅れること数ヶ月、今夏待望のUST化を果たした最新モデル、KSYRIUM PRO CARBON SL USTを今回はインプレッションした。

リムハイト25mmというプロファイルの超軽量山岳向けホイールとしてラインアップされる本モデル。抜群の反応性と加速性を持ったレーシングホイールに仕上がる。優れた軽量性と剛性を実現したフルカーボンリムは、UST化に伴い内幅を従来モデルに対しプラス2mmとした19mm幅を採用。よりワイドタイヤとの親和性を高めたことに加え、高いエアボリュームによる快適性の向上にも寄与している。

アルミ削り出しのハブボディを、フリーにはインスタントドライブ360を採用するアルミ削り出しのハブボディを、フリーにはインスタントドライブ360を採用する ストレートプル仕様のスチールスポークで組み上げるストレートプル仕様のスチールスポークで組み上げる

ドライブ側をラジアルで、反ドライブ側を2クロスで組んだマヴィック独自のISOPULSEドライブ側をラジアルで、反ドライブ側を2クロスで組んだマヴィック独自のISOPULSE カーボンブレーキシューやチタンクイックリリース、シーラント剤などが付属するカーボンブレーキシューやチタンクイックリリース、シーラント剤などが付属する

ハイスピードな走りを確実にコントロールすべく、ブレーキ面には高い制動力を発揮するiTgMaxテクノロジーを導入する。耐熱性の高い表面加工を施すことで長い下りのシーンでも安定した制動力を確保。さらにレーザー処理によって表面のレジンを焼き付けることで、カーボンの織り目による凹凸にブレーキシューが直接接触することでストッピングパワーを向上させている。

フリーハブにはマヴィックのハイエンドモデルに採用される「Instant Drive 360」を使用。2枚のラチェットが面で噛み合う構造となっており、優れたパワー伝達性と反応性を生み出す。フリーハブはスプロケットを装着したまま工具無しで着脱できるためメンテナンス性も高い。

リアホイールはドライブ側をラジアルで、反ドライブ側を2クロスで組んだマヴィック独自のISOPULSE(イソパルス)とし剛性を強化。薄く扁平したエアロスポークを使用しフロント18本、リア24本で組み上げる。重量はフロント640g、リア805gで前後セット1,445gという仕上がりだ。

高性能なイレブンストームコンパウンドを採用したYKSION PRO USTタイヤを装備高性能なイレブンストームコンパウンドを採用したYKSION PRO USTタイヤを装備 タイヤ表面には排水を促す斜めに溝を入れたパターンを刻むタイヤ表面には排水を促す斜めに溝を入れたパターンを刻む

付属するタイヤはもちろんチューブレスタイプのYKSION PRO UST。ハッチンソンとの共同開発によって生み出された高性能な”イレブンストーム”コンパウンドを使用しているハイパフォーマンスタイヤだ。ロードUSTホイールとしてシーラントやチューブレスバルブ、リムテープも付属する。チタンクイックリリースやカーボンブレーキシューは標準の同梱品だ。

また2019年モデルからラインアップ全体でリムグラフィックを一新。モデル名デカールなどは廃止され、シンプルなオールブラックのルックスに仕上がる”ミニマムグラフィックコンセプト”を採用している。

マヴィックユーザーのためのスマートフォンアプリ「MY MAVIC」も配信中。自身に最適なタイヤ幅、体格やライディングスタイルに合わせた空気圧の検索などが行えるお役立ちアプリだ。ロードUSTタイヤの性能を十分に引き出すためぜひ活用して欲しい。



ー インプレッション

「カーボンワイドリムとUSTタイヤが織り成す快適性に驚き」藤岡徹也(シルベストサイクル)

「カーボンワイドリムとUSTタイヤが織り成す快適性に驚き」藤岡徹也(シルベストサイクル)「カーボンワイドリムとUSTタイヤが織り成す快適性に驚き」藤岡徹也(シルベストサイクル)
まず感じるのはローハイトカーボンホイールならではの走りの軽さ。漕ぎ出しの軽さは言わずもがな、登りであれば普通のホイールよりも1枚重いギアを回していけるような性能だと感じました。1,500gを切る重量の軽さとカーボンリムの剛性感、そしてチューブレスタイヤという3つの組み合わせが走りのレベルを高めているなと言う印象です。

マヴィックのロードUSTは個人的にも非常に気に入っていて、アルミのKSYRIUM PRO USTはプライベートでも使っています。アルミモデルと比較すると、今回テストしたホイールはカーボンリムのおかげで乗り心地がかなり良くなっていますね。リム重量は軽いのに剛性感は上がっており、かつ振動吸収性も高いのはカーボンモデルだからこその性能です。

またカーボンリムなのにセット重量で見るとアルミのKSYRIUM PRO USTと変わらないと思う人もいるでしょう。ですが、こちらはリム幅が2mm広くなっていますし、リアのスポークも4本多いんです。ワイドリムによってエアボリュームを確保でき、そこにチューブレスタイヤが組み合わさることで気持ちの良い走行感を生み出しますし、それでいてレーススペックの反応性は損なわれていないというのがポイントでしょう。

「登りで普段よりも1枚重いギアを回せるような軽い走りが大きな特長」「登りで普段よりも1枚重いギアを回せるような軽い走りが大きな特長」
今回は5.2気圧に設定してテストしましたが、それだけ低い空気圧でもタイヤが変にヨレることもなく、下りを十分に攻められる高いグリップを見せてくれました。衝撃吸収性も良くなりますし、長距離ライドでは疲れにくさにも繋がってくるでしょうね。あらゆるシーンでメリットにしかならない走りの良さをチューブレスが生み出してくれますね。

カーボンリムとは思えないブレーキ性能の良さもマヴィックの特長だと思います。ブレーキシューが滑ってしまうような感覚がなく、当て効きをして速度調整も思い通りにできますし、グッとレバーを握ったときに制動力が立ち上がる感覚も好印象でコントロール性は非常に高いですね。アルミリムと比べてもブレーキの部分でデメリットとなるようなことはないと感じました。

インスタントドライブ360のフリーも走りの軽さを助長しています。踏んだときにタイムラグなく推進力が生まれるような、ダイレクトなかかりの良さがあるんです。このホイールが得意とする登りでも、速度が落ちたところから踏み直したときにしっかり伸びてくれる印象ですね。カタログ重量以上に乗って軽い、軽快性や加速性が持ち味のホイールに仕上がっていると感じました。

「ローハイトの優れた反応性にチューブレスの転がりの良さがプラス」遠藤誠(GROVE港北)

「ローハイトの優れた反応性にチューブレスの転がりの良さがプラス」遠藤誠(GROVE港北)「ローハイトの優れた反応性にチューブレスの転がりの良さがプラス」遠藤誠(GROVE港北)
UST化したことでさらにワイドリムになり、そのおかげか従来モデルよりも剛性感が増している印象ですね。ホイール自体のカッチリ感は大きいところに、チューブレスタイヤの優しい乗り心地が合わさって非常にバランスの良い仕上がりだと思います。ローハイトながら良く転がって進む印象で、決して軽いだけのホイールではない高性能な走りを感じられます。

組み方はイソパルスで前作と変わっていないので、リム剛性が上がっているのでしょうね。ダンシングしたときの反応もよく、足元の安心感も非常に大きいです。高速巡航に重点を置くならCOSMICなどハイトの高いホイールの方がマッチしますが、より軽い走りや登りを重視したスタイルのライダーなら断然KSYRIUMがオススメです。

「マヴィックアプリに従った空気圧の設定で間違いはない。ぜひ一度使ってみて欲しい」「マヴィックアプリに従った空気圧の設定で間違いはない。ぜひ一度使ってみて欲しい」 今回はMY MAVICアプリに従って5気圧ほどでテストしてみました。空気圧を落とせることで路面との接地感が増しており、タイヤが跳ねてしまうことなくロスが少なく走れている感覚を強く受けましたね。クリンチャーでここまで低圧にしてしまうと走りは重くなるでしょうから、やはりチューブレスの恩恵は大きいと思います。

普段は26Cのクリンチャーで6~6.5気圧ほどに設定しているので、USTならそこからマイナス1気圧くらいのイメージで考えて良いでしょう。多くのサイクリストが空気圧を高めにしすぎていると感じるので、一度マヴィックのアプリを使って空気圧を調べてみても良いかもしれませんね。

ブレーキ面もきっちり処理されており、シューの食いつきが良く制動力に不安はありません。ウェットコンディションであれば更に他のカーボンホイールよりもコントロール性が良いと感じられることでしょう。新しくなったグラフィックも、バイクを引き立ててくれるシンプルなもので個人的には好きですね。その中でも控えめに黄色が主張しているあたりマヴィックらしさがあって良いと思います。

マヴィック KSYRIUM PRO CARBON SL USTマヴィック KSYRIUM PRO CARBON SL UST photo:Makoto.AYANO
マヴィック KSYRIUM PRO CARBON SL UST
タイヤタイプ:USTチューブレス&クリンチャー
リム:3Kカーボンファイバー
リムサイズ:ハイト25mm、内幅19mm
スポーク:18/24 スチール
ハブ:インスタントドライブ360
重量:1,445g(フロント640g、リア805g)
付属タイヤ:マヴィック YKSION PRO UST 25mm
価格:320,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

藤岡徹也(シルベストサイクル)藤岡徹也(シルベストサイクル) 藤岡徹也(シルベストサイクル)

大阪府箕面市にあるシルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める。マトリックスやNIPPOに所属した経歴を持つ元プロロードレーサーで、ツール・ド・フクオカ優勝、ツール・ド・熊野の個人TT2位などの実績を持つ。現在は実業団レースやロングライド、トライアスロンなど幅広く自転車を嗜みスタッフとして「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。

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遠藤誠(GROVE港北)遠藤誠(GROVE港北) 遠藤誠(GROVE港北)

神奈川県横浜市のプロショップ、GROVE港北の店長。元々はMTB乗りとして自転車を嗜む内に現在の系列店舗スタッフとして働くように。自転車歴は10年以上でロードバイク、MTB両方に精通する豊富な知識と経験から、メカ・ポジション・乗り方まで幅広いアドバイスを提供する。”初心者にもわかりやすく”を常に心がけ、お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。

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ウェア協力:Funkier(ファンキアー)

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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