3月14日、サンジェーミニからキエーティまでの243kmで行なわれたティレーノ〜アドリアティコ第4ステージは、ゴール手前の激坂で抜け出したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)が優勝。スカルポーニは2年連続総合優勝に向けて総合トップに立った。

集団内で走るピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)集団内で走るピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vos第4ステージはワンディクラシック並みの243kmロングコースで行なわれた。イタリア半島を横断する今大会最長のコースには、3つのカテゴリー山岳が設定され、ゴール地点は丘の上に佇むキエーティの街だ。

この丘上都市に至る高低差250mほどの上りが勝負を分つ。しかも旧市街地に至る上りは、最大勾配が19%に達する激坂。季節柄、標高が1000mを超える難関山岳が登場しない代わりに、クラシックレースばりの急勾配の上りが、総合優勝者を導き出す。

キエーティの激坂をクリアするカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らキエーティの激坂をクリアするカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ら photo:Cor Vosレース序盤に形成された逃げグループに入ったのは、ミラノ〜サンレモ制覇に闘志を燃やすイタリアチャンピオンのフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)や、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)ら7名。走行時間が6時間を超えるロングコースで、7名は8分30秒のリードを稼ぎ出した。

メイン集団はBMCレーシングチームやアックア・エ・サポーネがコントロールし、レース後半にかけて逃げグループとのタイム差を短縮。総合争いに大きな影響を及ぼす重要なステージだけに、有力勢が動かないわけが無い。最初に仕掛けたのはアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)だった。

キエーティ中心部に独走でゴールするミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)キエーティ中心部に独走でゴールするミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) photo:Cor Vosヴィノクロフのアタックは封じ込められたが、そこから集団は一気に活性化。ゴールの7km手前から始まる平均勾配7%ほどの上りでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタックを成功させると、スカルポーニだけが合流した。

勾配が19%に達する激坂セクションでスカルポーニはニーバリを千切り、更に単独で先頭を逃げ続けていたキリエンカを力強く抜き去って行く。激坂通過後もスカルポーニは踏み続け、結局後続を14秒引き離す独走でゴールに飛び込んだ。

後続集団の先頭でゴールしたブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)は勘違いして両手を挙げたが2位。アルカンシェルのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は17秒遅れの8位、マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)は19秒遅れの10位に。

ステージ2位のブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)が手を挙げてゴールステージ2位のブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)が手を挙げてゴール photo:Cor Vos「警戒していたのはここ数日良い走りを見せていたニーバリ。今日はライバルたちに力を誇示出来たと思う。明日からはこのジャージを守る立場だ」。連覇を狙うスカルポーニが総合首位に立った。以下、概ねこの日のステージ成績が総合成績に。

3位に入ったのはスカルポーニのチームメイト、レオナルド・ベルタニョッリ(イタリア)。開幕前にマッシモ・ジュンティ(イタリア)のEPO陽性で揺れたアンドローニ・ジョカトーリが、プロツアーチームひしめく地元レースで大きな存在感を見せた。

同じRCSスポルトが開催するジロへの出場を願うスカルポーニは「このティレーノで勝利を収めて、5月のジロでチームが招待されることを願いたい。ジロ出場が叶えば総合順位を狙って走るよ」とガゼッタ紙に語っている。

終盤に攻撃を仕掛けながらもステージ11位に終わったニーバリは「スカルポーニがアタックしたとき、自分では信じられないようなギアを踏んでいた。自分自身の走りにも満足しているけど、今日はスカルポーニの力が勝っていた」と振り返る。続く第5、第6ステージも短い急坂が設定された侮れないコース。まだまだ総合成績変動の可能性有りだ。

レース展開と選手コメントはレース公式サイトより。


ティレーノ〜アドリアティコ2010第4ステージ結果
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) 6h23'47"
2位 ブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)       +14"
3位 レオナルド・ベルタニョッリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
4位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)
6位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)          +17"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)  +19"
10位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)

個人総合成績
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) 18h08'14"
2位 ブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)       +18"
3位 レオナルド・ベルタニョッリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)  +20"
4位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)      +24"
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)      +26"
7位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)          +27"
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
9位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)    +29"
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)


ポイント賞
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)

山岳賞
ディエゴ・カッチャ(イタリア、ISD・ネーリ)

新人賞
リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)

チーム総合成績
アンドローニ・ジョカトーリ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos