無数の丘を縫うように繋ぐジェットコースターコースで繰り広げられたアタック合戦。残り1kmを独走したグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利し、マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)が総合首位を守った。



絵になるダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)絵になるダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVosカレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)と何かを話すマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)と何かを話すマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos

無数に連なるアップダウンを越えていく無数に連なるアップダウンを越えていく photo:CorVos
連日逃げ切り勝利が決まっているビンクバンク・ツアー(UCIワールドツアー)も終盤戦の第6ステージ。この日はベルギーをスタートし、オランダはリンブルフ州名物の丘陵地帯を縫うように走るクラシックレーサー向きのコースが用意された。アムステル・ゴールドレースと同じ地域とあって、この日は中盤戦から非常に出入りの激しい展開で進むこととなった。

この日は2日連続逃げのアレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼル)とマティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)、ニック・ファンデルレイケ(オランダ、ルームポット・ネデランセロテリ)、そしてフレデリック・バッカールト(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)という4名。しかし総合優勝に向けて色めき立つ集団は終盤まで逃がすことを選ばず、フィニッシュまで45km以上を残して4名を飲み込んだ。

ペースアップによって60名程度まで絞られた中からは絶えずアタックが生まれた。その中でマチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)とティモ・ローセン(オランダ、ロットNLユンボ)がするすると抜け出し、集団も2人の先行を一時容認。2人のリードは残り23kmで1分差まで広がった。

残り50kmまで逃げたマティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)ら残り50kmまで逃げたマティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)ら photo:CorVosメイン集団のコントロールはロットNLユンボが務めたメイン集団のコントロールはロットNLユンボが務めた photo:CorVos

終盤に1分リードを稼いで逃げたマチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)とティモ・ローセン(オランダ、ロットNLユンボ)終盤に1分リードを稼いで逃げたマチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)とティモ・ローセン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:CorVos
2人に追いつこうとしたセバスティアン・ラングフェルド(オランダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)の目論見は失敗に終わり、集団が2名の回収のためにペースアップを図って残り20km。『ゴールデンスプリント』と呼ばれるビンクバンク特有の3連続スプリントポイントを前にティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が仕掛け、ベルギー王者のイヴ・ランパールト(クイックステップフロアーズ)とジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が反応して追走グループを形成した。

道幅の狭いアップダウンが続くアルデンヌクラシックらしいコースの中では、第2ステージの個人TTで優勝した総合3位のシュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)が落車し、真後ろで突っ込んだミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)と共に勝負権を失ってしまう。

追走3名は逃げていたローセンとボドナールへと合流し、さらに後方からグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)とマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)が追いついて先頭は7名。わずか3秒差で総合首位に座るマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)はアシストを欠き、自ら追走する展開を強いられた。

積極的に走るもステージ優勝には繋がらなかったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)積極的に走るもステージ優勝には繋がらなかったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
モホリッチら複数名が7名に追いつくと、それを嫌って仕掛けたのがウェレンスだった。残り10kmで飛び出したウェレンスには残り4kmでゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)が追いつき、20名ほどにまで膨らんだメイン集団が10秒後方。更にグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)とディラン・ファンバーレ(オランダ、チームスカイ)が合流に成功。スティバルは単独追走していたマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)を待つ姿勢を見せたが、合流を前に残り1.2kmでミュールベルガーが飛び出した。

不意をついてリードを稼いだミュールベルガー。シャフマンの合流を確認したスティバルが献身的に追走を率いたものの、時すでに遅し。ブラケットを握って突き進んだミュールベルガーが3秒のリードを守り切ったままフィニッシュに飛び込んだ。

後続を振り切ってゴールに飛び込むグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)後続を振り切ってゴールに飛び込むグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
11秒遅れの集団内でフィニッシュするマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)11秒遅れの集団内でフィニッシュするマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos
ビール樽を獲得して嬉しいグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)ビール樽を獲得して嬉しいグレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos再びリーダージャージを守ったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)再びリーダージャージを守ったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos


キャリア初のワールドツアー勝利を収めたミュールベルガー。「自分にとっても驚きの勝利。なぜなら今日のコース終盤はジェイ(マッカーシー)にフィットするものだったから。でも僕には失うものがないし、全身全霊でチャンスを掴みに行ったんだ。作戦が上手く行ったのもあって僕の嬉しさは最高以上だ。チームメイトと一緒にワールドツアー初勝利を祝いたいと思う」と喜びを語っている。

ミュールベルガーの後方ではウェレンスが2位に入り、モホリッチは11秒差の後続集団内でフィニッシュしたため総合首位を無事にキープしている。アシスト不在の苦しい展開の中、積極的に攻める姿勢を見せた23歳のレース巧者ぶりが目立つこととなった。
ビンクバンク・ツアー2018第6ステージ結果
1位 グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 4h05’10”
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) +03”
3位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)
4位 ディラン・ファンバーレ(オランダ、チームスカイ)
5位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ) +05”
6位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +08”
7位 ソーレン・クラークアンデルセン(デンマーク、サンウェブ)
8位 オリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル) +11”
9位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
10位 マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
個人総合成績
1位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 20h34’12”
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) +30”
3位 タコ・ファンデルホールン(オランダ、ルームポット) +32”
4位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ) +34”
5位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ) +35”
6位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +36”
7位 ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)
8位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) +37”
9位 イヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ) +43”
10位 ディラン・ファンバーレ(オランダ、チームスカイ) +44”
ポイント賞
1位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 64pts
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) 44pts
3位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 41pts
チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ 61h44’41”
2位 サンウェブ +40”
3位 ボーラ・ハンスグローエ +1’03”
text:So.Isobe
photo:CorVos

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