7月7日に開幕を迎える第105回ツール・ド・フランス。ヴァンデ県で開幕し、チームタイムトライアルやブルターニュの丘陵ステージ、ルーベにフィニッシュする石畳ステージなど、多くの危険要素を含む前半ステージのコースを紹介します。



7月7日(土)第1ステージ → コースマップ
ノワールムティエ〜フォントネー=ル=コント 201km


ツール・ド・フランス2018第1ステージツール・ド・フランス2018第1ステージ photo:A.S.O.グランデパール(開幕地)はフランス西部ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏のヴァンデ県。同地域圏でツールが開幕するのは史上10回目。第1ステージはタイムトライアルではなく通常のロードステージで、大西洋に浮かぶノワールムティエ島をスタートする。当初は「パサージュ・デュ・ゴワ」を通過する予定だったが、サッカーFIFAワールドカップとの日程重複を避けるため例年よりも1週間開幕が遅らされた結果、潮の満ち引きの関係で名物の「干潟の道」はコースから外されている。195kmのコースのうち実に110kmが海沿いのオーシャンロード。そのため海から吹き付ける風が総合争いに響くような集団分裂を引き起こすかもしれない。

スプリンターが大会最初のマイヨジョーヌを争うのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が勝利した2016年以来2年ぶり。ツール初登場のフォントネー=ル=コントの街で、ステージ優勝とマイヨジョーヌ着用を狙うフレッシュなスプリンターたちが高速バトルを繰り広げる。



7月8日(日)第2ステージ → コースマップ
ムイユロン=サンジェルマン〜ラ・ロッシュ=シュル=ヨン 182.5km


ツール・ド・フランス2018第2ステージツール・ド・フランス2018第2ステージ photo:A.S.O.第105回ツールに設定されたスプリンター向きの平坦ステージは合計8ステージ。初日の第1ステージに続いて再びスプリンターに活躍のチャンスが与えられる。どのチームも開幕前から第1ステージと第2ステージのフィニッシュレイアウトを入念にチェックして勝負に挑むはずだ。

今大会から新しい試みとして、フィニッシュ地点のボーナスタイムに加えて、3秒、2秒、1秒のボーナスタイムを獲得できるボーナスポイント(高低図のB表示)が第1ステージから第9ステージまでのロードステージに導入された。逆に、従来のスプリントポイントでのボーナスタイムは廃止されている。この日は残り14km地点にボーナスポイントが設定されており、マイヨジョーヌ着用を狙うスプリンターチームは早めに逃げを吸収して貴重なボーナスタイムを狙ってくるはず。しかしここで踏みすぎると約15分後の最終スプリントに影響するかもしれない。



7月9日(月)第3ステージ → コースマップ
ショレ〜ショレ 35.5km(チームTT)


ツール・ド・フランス2018第3ステージツール・ド・フランス2018第3ステージ photo:A.S.O.2年間ツールから姿を消していたチームタイムトライアルが復活。最後にヴァンデ県で開幕を迎えた2011年にもチームTTが開催されている。

いくつかの登りを含む35.5kmコースを、5分ごとに、1チーム8名のメンバーが隊列を組んで走る(予想平均スピードは54km/h)。チームの成績として総合成績に反映されるのは4番目にフィニッシュラインを切った選手のタイム。ここで総合争いの決定的なリードは奪えないが、致命的な遅れを被るクライマー系選手は出てくるかもしれない。

なお、1995年からショレの市長を務めるジル・ブルドゥレックス氏は大会ディレクターを務めるクリスティアン・プリュドム氏の義理の兄弟であり、ショレの街は10年に1度の頻度でツールに登場している。1998年にはフェスティナ事件で2名の逮捕者が出た地であり、2008年の登場時のステージ優勝者はその後ドーピングで失格処分を受けるステファン・シューマッハーで、リカルド・リッコの陽性反応が検出された場所でもある。つまりツールの歴史上あまり縁起の良い街ではない。



7月10日(火)第4ステージ → コースマップ
ラ・ボール〜サルゾー 195km


ツール・ド・フランス2018第4ステージツール・ド・フランス2018第4ステージ photo:A.S.O.ツールは開幕から3日間をホストしたペイ・ド・ラ・ロワール地域圏を離れてお隣のブルターニュ地域圏へ。195kmコースは概ね平坦だが、ブルターニュらしい細かいアップダウンに苦しむ選手も出てくるかもしれない。残り38.5kmという早めのタイミングで登場するボーナスポイントは登り基調であり、スプリンター以外にもボーナスタイムに興味を示す選手が出てくるかもしれない。

フィニッシュ地点サルゾーでは今大会3回目の集団スプリントが繰り広げられるはず。残り4kmを切ってからはフィニッシュラインまでひたすら直線路が続く。終盤にかけて海の近くを走るため、海風による集団分裂には注意が必要だ。なお、ツール初出場のサルゾーは、何を隠そう現職のUCI会長であるダヴィ・ラパルティアン氏が市長を務める街。ツールの誘致の裏にラパルティアン会長の存在があったことは想像にたやすい。



7月11日(水)第5ステージ → コースマップ
ロリアン〜カンペール 204.5km


ツール・ド・フランス2018第5ステージツール・ド・フランス2018第5ステージ photo:A.S.O.ブルターニュらしさが詰まった204.5kmの丘陵コースでピュアスプリンターが勝負に残る可能性はかなり低い。丘を縫うように走り、合計5つのカテゴリー山岳が詰め込まれたステージ後半はまさに登りと下りしかない。ブルターニュの名物峠である残り45kmの3級山岳メネケルク(全長3km/平均6.2%)と3級山岳モンターニュ・ド・ロクロナン(全長2.2km/平均5.9%)、そしてその後のボーナスポイントの登り(全長700m/平均9%)で集団は人数を減らすはずだ。

仮にピュアスプリンターが集団内に生き残ったとしても、残り1kmを切ってから平均勾配4.8%を駆け上がる登りフィニッシュが設定されているため、ペテル・サガン(スロバキア)やグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)に代表されるパンチャーたちにチャンスが回ってくる。コースの細さも相まって、総合狙いの選手も前に前にとポジション取りし、チャンスがあれば動きを見せてくるだろう。



7月12日(木)第6ステージ → コースマップ
ブレスト〜ミュール・ド・ブルターニュ 181km


ツール・ド・フランス2018第6ステージツール・ド・フランス2018第6ステージ photo:A.S.O.ツールはミュール・ド・ブルターニュを2度登る。白黒のブルターニュ旗が振られる3日間を締めくくる第6ステージは、ブルベの最高峰「パリ〜ブレスト〜パリ」の中間地点ブレストをスタート。ツールのプロトンは引き続き起伏のあるコースを走る。勝負が始まるのはフィニッシュまで残り20kmを切ってからだ。

まず3級山岳ミュール・ド・ブルターニュ(全長2km/平均6.9%)を越えてフィニッシュラインを一旦通過。そこからボーナスポイントの登り(全長1.3km/平均6.4%)を経て、再び3級山岳ミュール・ド・ブルターニュにアタックする。前半に10%ほどの勾配を刻み、残り1kmから勾配が緩むブルターニュの名物坂がツールに登場するのは3回目。過去2回はマイヨジョーヌ候補たちがアルプスやピレネーの脚試しのごとく動きを見せている。これが合計5つある山頂フィニッシュの1つ目。パリまでの全行程を見るとまだ序の口に過ぎないが、第3ステージのチームTTで苦戦した選手たちがタイム挽回のため動いてくるだろう。



7月13日(金)第7ステージ → コースマップ
フジェール〜シャルトル 231km


ツール・ド・フランス2018第7ステージツール・ド・フランス2018第7ステージ photo:A.S.O.今大会最長の231kmステージは、ちょうど中盤に4級山岳が設定されているものの、ほぼ平坦なピュアスプリンター向きのレイアウトであると言っていいだろう。前半から集団スプリントに向けたレースが展開されると思われるが、1チームの出場メンバーが9名から8名に減った今、スプリンターチームに以前のような圧倒的な支配力はない。

この日の敵は登りではなく風だ。「特に残り40kmを切ったところから風に注意」とクリスティアン・プリュドム氏が喚起するように、エシュロンを誘発するような平野を吹き抜ける風に警戒する必要がある。フラムルージュ(残り1kmアーチ)から先、シャルトルのフィニッシュラインまでは勾配4%ほどの登り。スプリント開始のタイミングを忍耐強く待った選手がチャンスをつかむことになりそうだ。



7月14日(土)第8ステージ → コースマップ
ドルー〜アミアン 181km


ツール・ド・フランス2018第8ステージツール・ド・フランス2018第8ステージ photo:A.S.O.ツール前半戦最後のフラットステージ。この日ももちろん注目はピュアスプリンターたちだ。開幕からすでに1週間が経過し、この頃には最終的なマイヨヴェール候補が見えてくるはず。南風(追い風)が吹くことの多いエリアだけに、平均スピードは必然的に高くなる。斜め後ろから風が吹けば、集団はエシュロンを形成しながら分裂していくかもしれない。予想外の脱落者が生まれる展開に備えて、総合狙いのチームはクライマーだけでなく大柄なルーラーをしっかりとメンバー入りさせている。

フィニッシュ地点はフランスのエマニュエル・マクロン大統領の故郷アミアン。過去にマリオ・チポッリーニ(イタリア)やアンドレ・グライペル(ドイツ)がステージ優勝を飾っているオー=ド=フランス地域圏の街で誰よりも勝ちたいと願っているのは地元出身のアルノー・デマール(フランス)だろう。残り6kmを切ってから登場する5つの直角コーナーを抜けて、スプリンターチームが先頭でトレインを走らせる。



7月15日(日)第9ステージ → コースマップ
アラス〜ルーべ 156.5km


ツール・ド・フランス2018第9ステージツール・ド・フランス2018第9ステージ photo:A.S.O.長い1週目を締めくくる前半戦のクライマックスがこのルーベにフィニッシュする第9ステージ。ど平坦な156.5kmのコースには、パリ〜ルーベにも登場する「モンサン・ペヴェル」など、実に15カ所・合計21.7kmのパヴェ(石畳)区間が含まれている。軽量なクライマーたちは断続的に登場する荒れたパヴェに苦戦することになるだろう。

前回ツールにパヴェが登場したのは2015年の第4ステージ。当時はパヴェ区間が7カ所で合計13.3kmだった。その前年の2014年第5ステージにも登場しているが、パヴェ区間は9カ所・合計15.4km。つまり今回はパヴェの全長&難易度ともにアップしており、後半のレイアウトはパリ〜ルーベ並みの厳しさだと言われる。特にパリ〜ルーベで難易度4つ星に指定されている残り17km地点の第2セクター「カンファン・アン・ペヴェル(全長1,800m)」と、残り8km地点の最後の第1セクター「ヴィレム〜エム(全長1,400m)」でルーラー揃いのチームが攻撃を仕掛けてくるだろう。

同日に行われるFIFAワールドカップの決勝戦との重複を避けるため、いつもより早めの午後4時半ごろにレースはフィニッシュする。なお、フィニッシュ地点は名物のベロドローム横の大通り。パリ〜ルーベのようにベロドロームを周回することはない。



7月16日(月)休息日




text:Kei Tsuji in Le Roche-sur-Yon, France

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