驚異の80km逃げを成功させたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら、激動の総合争いを戦った選手たちのコメントを紹介。「苦戦を強いられていたので、何かクレイジーなことをやり遂げる必要があった」とフルームは語っている。



マリアローザを奪い取ったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)

マリアローザに初めて袖を通したクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)マリアローザに初めて袖を通したクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:LaPresse
このジロでは苦戦を強いられていたので、何かクレイジーなことをやり遂げる必要があった。これまでのキャリアの中で、残り80km地点でアタックしてそのまま独走で逃げ切るなんて初めての経験。まずはサイモン・イェーツを置き去りにし、トム・デュムランを引き離す作戦だった。チームのお膳立ては完璧だったよ。

総合4位から総合1位まで順位を上げるには、最後の登り(バルドネッキア)でアタックしても十分なタイム差を奪えない。だからフィネストレ峠は完璧なアタックポイントだった。アフリカに住んでいた頃の未舗装路を思い出したよ。調子自体はとても良かったので今アタックするしかないと思ったんだ。

フィネストレ峠は試走済みだったし、独走に持ち込んでからは正しいペースを刻み続けた。後方の総合ライバルたちはアシストを失った状態だったので、彼らも同様に自らの力で踏まなければならない状況だった。計算の上での走りだった。

明日も非常に厳しいステージが待っているけれど、コンディションは良く、脚の状態もステージを走るごとに上がってきている。今日はアタックした後、ずっと自分の限界に達しないようにペーシングをしていた。明日にうまく繋げることができれば良いと思う。

総合2位、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)

追走グループを率いて走るトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)追走グループを率いて走るトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) (c)CorVos
本当にクレイジーな1日だった。チームスカイは立場的にも何か仕掛けてくるだろうとは思っていた。自分自身調子が良かったので全力で追走したけれど、余りにもフルームは強すぎた。追走グループの中で最も牽く義務があるのは自分だと分かっていたし、他選手が協力してくれなかったことも理解できる。今の時点では少し悲観的になっているので明日朝起きた時にもう一度状況を整理したい。明日も難しい1日になりそうだ。

総合3位にジャンプアップしたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)

セブ(ライヘンバッハ)がいなければ間違いなく総合成績を落としていた。どれだけ彼に感謝しても足りないよ。デュムランとは上手く協調できたけど、他の2人(ロペスとカラパス)は全く協力しなかった。僕の考えるロードレースとは全く違う動きだったのでなるべく自分のレースに集中しようと努めていた。今日はセブ、デュムラン、そしてフルームの3人が最強だった。

フルームのアタックには驚かされたし、全くもってクレイジーだと思う。でもそんなクレイジーなジロで総合表彰台を獲ることが僕の目標で、自分のコンディションが上がっていることが明確に分かった。ずっと記憶に残るようなステージだったよ。良い結果を得られたので今日はぐっすり眠れそうだ。

総合4位に上がったマリアビアンカのミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)

マリアビアンカをキープしたミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)マリアビアンカをキープしたミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) (c)CorVos
なんてステージだ。ものすごくタフな1日だったよ。コンディション自体はよくて強豪勢に食らい付いていけたし、ライバル数人にタイム差を付けて総合ジャンプアップできたので良かった。デュムランとピノ、そしてカラパスのグループに入れたものの最終盤までアタックする可能性は見出せず、バルドネッキアでは数回攻撃したけれどピノを引き離すことはできなかった。フィニッシュではカラパスに数秒先行されてしまったけれど、マリアビアンカをキープできたので嬉しく思う。

今日のような厳しいステージでは誰にもバッドデイに陥る可能性がある。明日も誰かが大きく遅れることがあるだろうけれど、どうなるかなんて誰にも分からない。今日の自分の走りには満足しているけれど、今は何よりも脚の疲れを取ることが最優先だ。

総合5位となったリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)

ライバルを引き離してフィニッシュするリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)ライバルを引き離してフィニッシュするリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) (c)CorVos
コースを楽しめたし、気分も良かった。自分にとって美しい1日になったよ。これまで準備してきたことが形となって、今日ベストコンディションを発揮することができた。このまま調子をキープして明日のマリアビアンカ争いに臨みたいと思う。何としてもエクアドルにジャージを持ち帰りたいし、そのために僕はジロを走っているんだ。ローマのフィニッシュラインを切るまでチャンスを見出して攻撃していきたい。

総合6位に落としたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)

ゴールに向かうドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)ゴールに向かうドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) (c)CorVos
残念だけど今日はバッドデイだった。今年のジロで初めて不安を感じた。ただしそれでも大失速には繋がらなかったのでひとまずは良かったと言える。フィネストレで苦しい状態になってしまったけれど、最後は徐々に復活できていたんだ。僕の入った集団内で協調できなかったのも痛かった。フルームの走りはただただアンビリーバブルだ。

総合11位→9位のジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)

トップ10に戻ってきたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)トップ10に戻ってきたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) (c)CorVos
スタートから絶好調ではないなと感じていたよ。フィネストレ山頂時点でピノグループからは35秒遅れだったのに、自分とポッツォヴィーヴォしか積極的に前を追いかける選手はいなかった。下りや平坦区間で30km以上に渡ってフルスロットルで追走したので力を使い切ってしまい、最後はもう踏める脚は無かった。

ボーラの選手数人が合流してくるのを待ったけれど協調体制を組むことはできず。それぞれがそれぞれのレースをしてしまった。今日はフィネストレでピノグループに合流できなかったのが悔やまれる。総合9位に上がったけれど、もっと上を目指していたので自分にとっては残念賞って感じだ。明日も厳しい山岳ステージだから遅れる選手がいるはず。今日は単純に自分のフィジカルが足りていなかったので、トレーニングを重ねてレベルアップしたい。

総合18位にまで脱落したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)

無表情でフィニッシュしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)無表情でフィニッシュしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) (c)CorVos
スタートした時点では何も悪い兆候は出ていなかった。ただ疲れていて、リミットに達してしまったんだ。残念だけれどこれがロードレース。なるべく差が広がらないように努めたかったけれど、もはや何もできることはなかった。あれが僕の全力で、全力で走った結果。でも僕は必ずこの舞台に戻ってくる。残念なことになってしまったけれど、僕がジロで総合優勝するにはこれまでの(攻めの)走りが必要だった。自分の走りをしたことには満足しているし、これからもそのスタイルは変わらないと思う。

text:So.Isobe
Amazon.co.jp