カナディアンバイクブランド、サーヴェロよりエアロロードSシリーズのセカンドモデル「S3」をピックアップ。TTバイク然としたエアロフォルムで空力性能を高め、極細のシートステーによって快適性も担保したハイパフォーマンスな1台をインプレッションした。



サーヴェロ S3サーヴェロ S3 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
1995年創業、カナダのトロントに拠点を置き、タイムトライアルバイクに起源を持つレーシングブランドがサーヴェロだ。エアロダイナミクスとカーボン素材において業界随一のノウハウとテクノロジーを持ち、常に最速を目指したハイパフォーマンスバイクを開発し続けてきた。創業者であるフィル・ホワイト氏とジェラルド・ヴルーメン氏が作り出した高性能バイクはアスリートの間でたちまち評判となり、現在に至るまで幾多のプロライダーに愛用されてきた。

ロードレースシーンにおいては、2000年台前半にはイヴァン・バッソやファビアン・カンチェラーラも所属したチームCSCをサポート。その後サーヴェロ・テストチームやガーミン・シャープなどを経て、現在はディメンションデータに機材供給を行うなど、常に世界トップクラスのチームとともにプロレースを駆けてきた実績を持つ。

Rシリーズのテクノロジーを応用した極細のシートステーが振動吸収性を強化Rシリーズのテクノロジーを応用した極細のシートステーが振動吸収性を強化 翼断面形状を各チューブに採用しエアロダイナミクスを強化翼断面形状を各チューブに採用しエアロダイナミクスを強化 エアロ形状のブレードを採用したやや太めのフロントフォークエアロ形状のブレードを採用したやや太めのフロントフォーク

そんなサーヴェロを代表するバイクと言えば、プロ選手からの使用率も高いエアロロードバイク「S」シリーズだろう。チームCSCの活躍を支えたレーシングモデル、ソロイストカーボンの後継モデルとして2008年に登場したモデルとなる。それまで評価の高かったソロイストシリーズの優れたエアロダイナミクスと、軽量オールラウンドモデルの「R」シリーズ特有の振動吸収性を掛け合わせた設計とすることで、よりハイパフォーマンスな走行性能を実現したバイクとして生み出された。

デビュー当時はS3とS2という2車種だった同シリーズも、2011年には最高峰モデルS5を追加し現行ラインアップの形に。その中でも「S3」はセカンドモデルながらプロスペックのレーシング性能を有したバイクとして開発されており、選手によってはS5がリリースされた後も好んで同バイクをチョイスするほど。デヴィッド・ミラーやタイラー・ファラーといった有名選手らもS3の愛用者であった。

フレームに内蔵される臼式のシートクランプで空力性能に配慮フレームに内蔵される臼式のシートクランプで空力性能に配慮 サーヴェロオリジナルのアルミステムがアセンブルされるサーヴェロオリジナルのアルミステムがアセンブルされる
チェーンステーにモデル名ロゴを配置。リアエンドまでフルカーボン成形されるチェーンステーにモデル名ロゴを配置。リアエンドまでフルカーボン成形される 独自のBBright規格がボリュームある造形を生み出しパワー伝達性を向上させる独自のBBright規格がボリュームある造形を生み出しパワー伝達性を向上させる

同社エンジニアリング部門の”プロジェクトカルフォルニア”による、空力性能やフレーム素材・形状の研究から得られた最先端のテクノロジーを随所に反映させることで、他社ハイエンドモデルに勝るとも劣らない性能を獲得しているS3。Sシリーズに最大の特徴であるTTバイク然としたボリュームあるフレームデザインとしながらも、フレーム重量は約1,000gほどと軽量で、かつ万人が扱いやすいライドフィールも両立している。

前方からの風を受けるフロントフォークやダウンチューブ、シートチューブは翼断面状のエアロフォルムを纏い、風を切り裂く優れたエアロダイナミクスを発揮する。加えてヘッドチューブも前方投影面積を減らすため中央にくびれを設けるとともに、シートチューブは後輪に沿った形状にカットオフすることで整流効果を生み出している。

シフトケーブルはダウンチューブ両側から、リアブレーキケーブルはトップチューブ下部からアクセスシフトケーブルはダウンチューブ両側から、リアブレーキケーブルはトップチューブ下部からアクセス 25Cに対応するタイヤクリアランスを確保25Cに対応するタイヤクリアランスを確保

前三角とは対照的に華奢な造形に仕上がったリアトライアングルには、同社Rcaで培った快適性に長けるウルトラ・シン・シートステーの技術を導入し、細身の扁平形状チューブが振動吸収性と路面追従性を高める。またタイヤクリアランスも主流となった25Cに対応し、乗り心地向上に貢献している部分だ。

もちろんレーシングバイクとして剛性の最適化にも余念はない。サーヴェロ独自のBB規格であるBBrightは左右非対称デザインによってドライブ側にボリュームを持たせることができ、従来モデルと比較して16%の剛性アップを果たしており、効率的なペダリングパワーの伝達を可能とする。フロントフォークも形状を見直すことでエンドのねじれ剛性が23%向上しており、いかなるシーンでも安定したハンドリングを実現している。

専用のエアロシートポストはつぶしを入れてしなりを生み出し快適性を高める専用のエアロシートポストはつぶしを入れてしなりを生み出し快適性を高める BBに近づくにつれて形状変化していくエアロなダウンチューブのデザインBBに近づくにつれて形状変化していくエアロなダウンチューブのデザイン 前方投影面積を減らすために中央を窪ませたヘッドチューブ前方投影面積を減らすために中央を窪ませたヘッドチューブ

完成車モデルでは2018年ラインアップから新たに、ヤグラ付近につぶしを入れたSP17シートポストを採用しており、しなりを生み出すことで路面からの突き上げをいなすよう工夫されている。専用のエアロシートポストは空力性能を考慮し、クランプパーツが外部に露出しない臼式によって固定される。

ケーブルルーティングも考え抜かれた配置で最適化されている他、フレームは機械式/電動式のコンポーネントに対応。R8000系・R8050系アルテグラで組まれた完成車2種類と、フレームセットにて販売される。レッド/ブラックとグレー/ブラックの2カラー展開で、48、51、54、56の4サイズがラインアップ。今回は機械式アルテグラコンポーネントで、ホイールにトーケンのKONAX PROをアセンブルした試乗車仕様にてテスト。それでは、インプレッションに移ろう。



― インプレッション

「エアロロードらしい鋭い切れ味のある加速感が特長」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

コーナリングや踏んだ時の反応性など、バイク全体の挙動が鋭い切れ味を持っており、レースバイクらしいアグレッシブな走りが特徴的です。踏んだ瞬間にスパンスパンと刃物で物を切るような、瞬間的な加速をしていく様が気持ちよくて、つい踏んでしまいます。コーナリングもエアロフレームながら切れ込む印象で、鋭角に攻めた走りも可能です。

「エアロロードらしい鋭い切れ味のある加速感が特長」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)「エアロロードらしい鋭い切れ味のある加速感が特長」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) フレームはトップモデルほどでないにしろ硬めの印象です。そのため、このバイクのターゲットスピードゾーンとなる35km/h以上で走るようなパワーをかけていくと気持ち良い加速感が味わえます。低めのパワーでもノーマルに進むのですが、ある一定のパワー値から急にスピードが伸びていく印象です。ですので、低速でサイクリングを楽しむというよりは、常に強い力をかけて踏んでいく走り方のほうが楽しめるでしょう。

エアロダイナミクス性能は、しっかりと体感できるレベルですね。エアロロードによくある、なんとなくエアロっぽいかな?という印象ではなく、フレーム剛性によるパワー伝達性とは別の加速感を感じます。踏み込んだ分以上に進む感覚で、特に高速域や風の強いシチュエーションでは顕著にそのエアロ性能を感じます。

エアロロードというと、幅広のチューブデザインもあり縦剛性が高く、扱いづらさを感じるバイクも存在しますが、このS3はそういったことはありません。例えば登りでダンシングするようなシーンでもバイクを振りづらいといったこともなく、ニュートラルな印象です。コーナリングも鈍重になることなく、鋭い挙動で曲がる事ができます。

また、シートステーが非常に細く出来ているので、リアセクションの柔軟性も高く、振動吸収性も優れています。エアロロードなのに突き上げが激しくないので、多少のロングライドもこなすことができるでしょう。その上、しなやかなシートステーは路面追従性の向上にも一役買っており、リアタイヤが常に路面に接しているため、荒れ道でもトラクションが掛かりやすいです。

これでセカンドグレードということですが、その位置づけ以上の性能を持っています。パワーをかけてペダルを踏むのが楽しくなってしまうバイクです。もちろん平坦が得意ですが、登りであっても緩やかな勾配であれば十分楽しめると思いますね。そう考えるとアップダウンのあるコースでレースを行う時には最適なバイクになるのではないでしょうか。

「想像以上の快適性、ニュートラルなハンドリングも好印象」坂本聡(スポーツサイクル サカモト)

エアロロードらしい空力性能の良さによるスピードの伸びを顕著に感じるバイクですね。スピードが乗ってきてから更に加速していく感覚はまさにエアロロードといった加速感で、空気を切り裂きながら進んでいく印象を受けます。サーヴェロというエアロロードのパイオニアブランドという先入観も多少あるのかもしれないですが、それを差し置いてもエアロ感をしっかり感じます。

「想像以上の快適性、ニュートラルなハンドリングも好印象」坂本聡(スポーツサイクル サカモト)「想像以上の快適性、ニュートラルなハンドリングも好印象」坂本聡(スポーツサイクル サカモト)
オールラウンドロードによくある初速から伸びる加速というよりは、2漕ぎ3漕ぎ目からスピードが上がっていく印象です。そこから徐々に加速をしていって、35km/h以上で巡航に入るような走り方がベストです。その分脚力は必要になってくるので、ある程度走れるような脚力があるとより楽しめるでしょう。

フレームの剛性感は見るからに縦剛性が高そうなルックス通り、しっかりと硬めな印象です。ホビーレーサーには十分すぎるほどの剛性を持っていますので、踏みすぎると脚に疲労が溜まりやすいと思いますね。このS3でここまでの剛性を持っているとなると、S5はどのような踏み味なのか、好奇心が湧きますね。ただ多くの人はこのS3で必要十分以上だと思います。

また、振動吸収性も思った以上に良いですね。路面からの突き上げが和らいでいるようで、嫌な感じはしません。恐らく細身のチェーンステーが上手くしなり、振動をいなしているのだと思います。エアロロードとしては想像以上に快適に走れるので、ロングライドに使用しても良いかもしれません。

エアロロードというとその特徴的なフレーム形状ゆえにハンドリングに違和感を感じるものが少なくないですが、このバイクはオーバーでもアンダーでもなくニュートラルな感覚です。コーナリングでも操舵の不安感なくバイクを自在にコントロールすることができるので、扱いやすいですね。クリテリウムに使用しても良いと思います。

快適性も反応性もありますので、ツール・ド・おきなわのようなロングロードレースには良いですね。また速いペースのロングライドやサーキットエンデューロでも活躍すると思います。それなりの価格ではありますが、サーヴェロに憧れている人にとっては良い買い物になること間違いなし。所有満足度は高いと思いますね。

サーヴェロ S3サーヴェロ S3 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ S3
メインコンポーネント:シマノULTEGRA Di2/シマノULTEGRA
ヘッドセット:FSA IS2 1-1/8 x 1-3/8”
ホイール:マヴィック Cosmic Elite
ハンドル:Cervélo Aero AB06(ULTEGRA Di2仕様)/FSA Energy Compact(ULTEGRA仕様)
ステム:Cervélo Ultra Light Alloy
サイズ:48、51、54、56
カラー:レッド/ブラック、グレー/ブラック
価 格:シマノ ULTEGRA Di2 完成車 700,000円(税抜)
    シマノ ULTEGRA 完成車 570,000円(税抜)
    フレームセット 380,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。

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坂本聡(スポーツサイクル サカモト)坂本聡(スポーツサイクル サカモト) 坂本聡(スポーツサイクル サカモト)

60年以上続く新潟県三条市のプロショップ、スポーツサイクル サカモトの3代目代表を務める。ロードはゆったり楽しみたいロングライド派で、MTBやトライアスロン、小径車など幅広くスポーツサイクルを嗜む。お客さんにはむやみに安い製品は売らず、高くても良いものをオススメすることを重視。人との繋がりや家族との時間を大事にすることが自身のポリシー。

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ウェア協力:シマノ

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photo:Makoto.AYANO

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