石畳セミクラシックとして知られる第49回ル・サミンでクイックステップフロアーズがレースを支配。メンバー全員で集団を破壊し、そのまま先頭グループでレースを展開したベルギーチームのニキ・テルプストラとフィリップ・ジルベールがワンツー勝利を飾った。


圧倒的な数でレースを支配したクイックステップフロアーズ圧倒的な数でレースを支配したクイックステップフロアーズ photo:CorVos

ル・サミン2018コース高低図ル・サミン2018コース高低図 photo:Le Samynル・サミンはベルギー南部のワロン地域を走るワンデークラシック。1968年にGPフェイ・ル・フランとして開催されたが、翌年に事故死した第1回大会の優勝者ジョゼ・サミンを偲んで現在の名称に改められている。今年で開催49回めで、2012年からは女子レースも併催されている。

フラマン語(オランダ語)が話されるフランドル地域ではなくフランス語が話されるワロン地域が舞台で、フランス国境近くを通過するコースはカレニョンから野外フェスの開催地として知られるドゥールに至る200km。

レースの名物は、前半に登場する4つの急坂ではなく、難易度3つ星の「ヴィオリー」と「ベル・ヴュ」を含む4ヶ所の石畳区間が詰め込まれた周回コースだ。後半にかけてこの25km周回を4周するため、選手たちは合計16ヶ所の石畳区間をこなすことになる。パリ〜ルーベと開催地域が近いこともあり、「リトル・パリ〜ルーベ」と呼ぶ地元メディアも。実際に多くの選手が「北の地獄」で投入予定の石畳用機材をこのル・サミンでテストした。

最高気温がマイナス1度という寒さの中、UCIワールドツアー3チーム(アージェードゥーゼール、クイックステップフロアーズ、ロット・スーダル)を含む21チームがスタートを切った。カンタン・ジョレギ(フランス、アージェードゥーゼール)やダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー)ら9名が逃げグループを形成し、前半の4つの急坂を越えていく。

レースが動いたのは、石畳区間が登場する前の、フィニッシュまで120kmを残した横風区間だった。クイックステップフロアーズがメンバー7名全員を揃えてペースアップを開始すると集団は分裂。クイックステップフロアーズのティム・デクレルク(ベルギー)、フロリアン・セネシャル(フランス)、ダヴィデ・マルティネッリ(イタリア)、ファビオ・ヤコブセン(オランダ)、ゼネク・スティバル(チェコ)らが献身的にペースを上げ続け、前を走る逃げグループに追いつくとともに後続集団を引き離す。クイックステップフロアーズがリードする16名の先頭集団は、後続集団から40秒のリードで後半の周回コースに入った。

石畳を走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)石畳を走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos

石畳区間を含む周回コースを進むうちに先頭集団は絞られ、やがてクイックステップフロアーズのフィリップ・ジルベール(ベルギー)とニキ・テルプストラ(オランダ)、トッシュ・ヴァンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)、アレックス・キルシュ(ルクセンブルク、WBアクアプロテクト)、ゴダンという5名に絞られる。石畳区間でジルベールとテルプストラが作るハイペースに対応できたのはゴダンだけだった。

遅れたヴァンデルサンドとキルシュには最終周回で前年度覇者ギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)、アドリアン・プティ(フランス、ディレクトエネルジー)、ゲディミナス・バグドナス(リトアニア、アージェードゥーゼール)らが追いついたものの、先頭を走る3名とのタイム差40秒が縮まらない。3名の逃げ切りが濃厚となる中、残り18kmを切ると優勝をかけたアタックが始まった。

ゴダンを振り切るために最初に仕掛けたのは、ロンド・ファン・フラーンデレン覇者ジルベール。氷点下の寒さにもかかわらず素手で走るジルベールが引き戻される瞬間に、テルプストラのカウンターアタックが決まる。当然ジルベールはゴダンに協力せず、独走に持ち込んだテルプストラのリードが広がっていく。

付き位置で力をセーブしたジルベールも石畳区間でゴダンを振り切ることに成功。テルプストラとジルベールがワンツー体制を築き、それぞれ独走でフィニッシュした。優勝したテルプストラのSTRAVAにGPSログによると、最終周回の平均スピードは39.8km/h(気温は常にマイナス3度を指している)。

独走でフィニッシュするニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)独走でフィニッシュするニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos

「寒さでエネルギーが奪われる厳しいレースだった。レースを続けるのが難しいと思うようなコンディションだったけど、チームとして最高の走りができたと思う。序盤に形成された逃げグループが強力だったので、チームは最初から集団コントロールのイニシアティブをとっていたし、フィニッシュまで距離があったけど横風区間でペースアップ。チーム全体で全開走行して、次々と選手が脱落していくエリミネーションレースのような展開に持ち込めた。最後は教科書通りの戦略で、数の利を生かしてジルベールと交互にアタック。美しい勝利を手にすることができたよ」と、2016年に続く2度めのル・サミン勝利を果たしたテルプストラ。

2位に入った2008年大会の覇者ジルベールは「横風区間でのペースアップで集団が分裂した時、メンバー全員が前に残るという夢のようなシナリオになった。チームの走りを誇りに思うし、今日のパフォーマンスは次なるレースへの自信になる。レースはとにかくハードで、最後は強力なゴダンを引き離すために完璧な走りだったと思う。大好きなレースの一つである(3月3日の)ストラーデビアンケに向けて良いコンディションを確認できたよ」とコメント。クイックステップフロアーズの強さが際立つ結果となった。

同じドゥールの周回コースにフィニッシュする103kmで行われた女子レースのタイトルは、終盤に独走に持ち込んだヤネケ・エンシング(オランダ、アレ・チポッリーニ)の手に。男女ともに完走者が半分に満たないサバイバルレースとなった。

2位フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、1位ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)、3位ダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー)2位フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、1位ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)、3位ダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー) photo:CorVos
女子レースを制したヤネケ・エンシング(オランダ、アレ・チポッリーニ)女子レースを制したヤネケ・エンシング(オランダ、アレ・チポッリーニ) photo:CorVos
ル・サミン2018結果
1位 ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ) 4:47:48
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 0:00:04
3位 ダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー) 0:00:46
4位 アドリアン・プティ(フランス、ディレクトエネルジー) 0:01:18
5位 ゲディミナス・バグドナス(リトアニア、アージェードゥーゼール)
6位 アレックス・キルシュ(ルクセンブルク、WBアクアプロテクト) 0:01:21
7位 ブノワ・ジャリエ(フランス、フォルトゥネオ・サムシック) 0:01:59
8位 ニコ・デンツ(ドイツ、アージェードゥーゼール)
9位 フレデリック・バカールト(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
10位 アレクサンドル・ピショ(フランス、ディレクトエネルジー) 0:02:02

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