「本当に信じられない勝利だ。まだほとんど実感がない。子供の頃からの憧れだったコンタドールを下して勝利した意味は大きい」とは、積極策を勝利に繋げたワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)。様々な思いが交錯した第13ステージを選手たちの言葉で振り返る。



ステージ優勝を飾ったワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)

ステージ優勝を飾ったワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)がマイヨアポワを着るステージ優勝を飾ったワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)がマイヨアポワを着る photo:Tim de Waele / TDWsport
本当に信じられない勝利だ。まだほとんど実感がない。子供の頃からの憧れだったコンタドールを下して勝利した意味は大きい。日曜日には過酷な山岳ステージが迫っているものの、サンウェブとして自信を持ってステージ序盤から積極的に攻撃に出た。最初の登坂をクリアした後に”今日は絶対に諦めない”と自分に言い聞かせていたよ。フィニッシュでは残り800m地点で一度ライバルたちの顔色を伺って、誰がアタックするかを理解していた。コンタドールの動きをリードアウトに使って、全力でスプリントしたんだ。

ここまで惜しいところで逃してきたチャンスがたくさんあって、それら失敗を取り返すだけの勝利を挙げることができた。信じられないし、フランス独立記念日のステージ優勝はさらに特別にしてくれているよ。わざと総合順位を落としていると批判されることもあるけど、5月には(ツール・ド・ロマンディでの骨盤骨折で)病院のベッドにいた。その影響でフレッシュな状態で挑んだ今回のツール。ロマン・バルデが総合で好位置につけている今、アルプスで手伝えることがあればフランス人の総合優勝に力添えしたい。

序盤から逃げたアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)

自分にとって今年のツールはグランデパールからとても難しいものになっていて、特に2日前は酷いバッドデイだった。昨日もただ他の総合勢に付いていくだけの展開で、最後には千切れてしまった。だからこそ今日は何かスペシャルな作戦に打って出ようと考えた。ファンにとって美しい1日になったと思うし、自分にとってもよかった。

アタックしたアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)をミケル・ランダ(チームスカイ)がマークしてアニェス峠を行くアタックしたアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)をミケル・ランダ(チームスカイ)がマークしてアニェス峠を行く photo:Makoto.AYANOメイン集団から飛び出したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)とミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)メイン集団から飛び出したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)とミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)


101kmというショートステージはハードな展開となるに違いないと感じたけれど、OK、何かやってやろう。集団の中にい続けるの好きじゃない、と思っていた。ランダが合流してくれたことは良かったし、距離を重ねる毎に彼との協調体制は強固なものになっていた。チームスカイが僕らの後ろでどう走っていたかは知らなかったけれど、彼らにとってもランダを先頭に送り込んだことは総合争いの上でパーフェクトな状況だった。

でもナイロとワレンが合流してきた後、協調を維持するのが難しくなってしまった。ワレンは非常に強い選手で、逃げ切りに向けてかなり働いてくれた。彼は出し抜いて勝つような選手じゃない。もちろん僕がステージ優勝できればより良かったけれど、彼の走りは勝利に値するものだった。自分は登りの最終盤にアタックするのが常だが、今回は違った。良い1日になったし、落車のダメージが残っていることを考えれば満足だよ。アルプスでも良い走りができれば良いと思う。

今回のツールでは何度か精神的にいっぱいいっぱいになることがあった。信じられないような厳しい練習を重ねてコンディションを上げ、トレーニング中にホームコースのヒルクライムレコードを更新したのにも関わらず、序盤で酷い落車を負ってしまったら、どう思うだろうか。今の総合順位は自分が望んだものじゃない。でも、僕は毎日ツールを楽しみたい。アルプスの前に少し回復に時間を当て、最終週にも攻撃に打って出たいと思っている。今考えているのは、自分のために力を尽くしてくれているチームのために出しきりたいということ。最終日まで戦うつもりだ。

1級山岳ミュール・ド・ペゲールを先頭で登るミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)1級山岳ミュール・ド・ペゲールを先頭で登るミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) コンタドールと逃げたミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)

コンタドールは共に逃げるのに最高の選手。今日のような厳しいステージでは特にそう思う。ステージ優勝も考えていたけれど、難しかった。昨ステージでもよく働くことができたし、ステージを狙いこそしなかったけれど、自分の走りには満足しているんだ。自分がクリス(フルーム)より強いかって?そうは思わない。彼はツールで3回総合優勝している。ここから更に厳しいステージとTTが控えている。クリスは僕無しでも勝てる選手だ。

バルギルと前を目指すナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)バルギルと前を目指すナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:CorVosバルギルと合流したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)

コンディションが良くてできる限りのことをしたけれど、最後はガス欠状態だった。これからまた脚が戻ってくれば良いと思う。集中力を失ってはいないし、今日のような展開にもう2,3ステージ持ち込みたい。僕らはハートとソウルでレースを戦っている。1日調子が悪かったからと言って全てを失ったわけじゃない。経験があれば再び勝負の最前線に戻ってくることができるんだ。このままの調子を閉幕まで維持していきたい。

マイヨジョーヌグループから抜け出したサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)

最後の登りでのペースは物凄く速く、間違いなく誰もが苦しんでいた。自分も脚が限界で、頂上までは自分のリズムで走っていたんだ。再び先頭に戻ることができて良かったし、ダウンヒルで逃げることもできた。ダン(マーティン)とはフィニッシュまで一緒に働くことができた。短距離ステージはポジティブなレース展開を生み出すね。

マイヨジョーヌグループから抜け出したサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)とダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)マイヨジョーヌグループから抜け出したサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)とダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos
イェーツと抜け出したダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)

スタートからアタックが続く信じられないような1日で、登りがキツかった。今年の選手たちはみんなアグレッシブで、ツールを面白くしてくれる。山岳で先頭を率いたのはライバルたちにアタックさせないため。アタック合戦がつづてストップ&ゴーの展開となれば自分が苦しんだはず。昨日よりも調子は良く、物事は良い方向に進んでいるけれど、まだ100%の状態には遠いんだ。ピレネーに入る前よりもマイヨジョーヌが近づいたのでハッピーだ。体調的にもこのまま調子が上がっていけばと願っている。

マイヨジョーヌをキープしたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

マイヨジョーヌを守ったファビオ・アル(イタリア、アスタナ)マイヨジョーヌを守ったファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele / TDWsport
すべてのアタックに反応していると自滅してしまうので、総合で危険な選手を選別しながらアタックに反応した。3分遅れのランダに先行を許したけど、もうこれ以上彼を逃すわけにはいかない。結果には満足している。フランスの観客からこれほど大きな声援を受けるとは思わなかった。明日は明日のレースが続くので、集中してこなしていきたい。

総合2位、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)

チームとして戦略的に動いた。日は昨日よりも感触がよかった。ランダが逃げて総合成績を上げる展開はチームにとって理想的。ランダは最終的なマイヨジョーヌ候補でもある。彼と2人でまたレースを動かしたい。

ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)が遅れるジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)が遅れる photo:CorVos遅れたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)

体調が十分ではなかった。作戦としては集団内に残り続けることで、コンディションも序盤はすごく良いと思っていた。けれど急勾配区間でバッドモーメントが訪れたんだ。今日のような展開で一人遅れてしまうと、後は何もできることは無かった。落ち込んでいるけれど、ツールはまだ8日間残っている。ガリビエかイゾアールは全力で攻めていきたい。これから回復に努めて、再び山岳ステージで戦えるようにコンディションを上げていく。

2箇所の骨折を抱え、途中でレースを降りたヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)

全力を尽くしたけれど、身体の左半身が言うことを聞かなかった。集団に残る力さえ無く、スタート直後からハイペースを刻む集団内でマイペースを保っていたけれど、最後の登りを前にしてもう無理だと気付かされた。もうギブアップするしかない。チーム、そしてツールを去るのは簡単じゃないけれど、僕にできることは何もない。今のタスクは回復に全力を傾けることだ。

序盤のアタック合戦に加わった新城幸也(バーレーン・メリダ)

1級山岳アニェス峠を登る新城幸也(バーレーン・メリダ)1級山岳アニェス峠を登る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Makoto.AYANO
逃げに乗るために積極的に動き、もう少しで決まるかと思うところまで行ったのだが、集団が最初の登りで追いついてきて、そこで今日は逃げれないと察知した。そこからは時間制限内にゴール出来るように走った。 明日はアマチュア時代のチームブラニャックがスタート地点。知り合いもたくさん応援に来てくれるので、チームから逃げの許可が出たら、逃げたいね!

text:So.Isobe