マヴィックがUSTを用いたロード用チューブレスシステムを発表。チューブレスが慢性的に抱えていた問題をマヴィックならではのテクノロジーで克服し、クリンチャー同等の整備性とチューブラーに迫る走り心地を得たという、同社ホイールラインアップの流れを変える意欲作だ。



満を持して登場したUSTを用いたロード用チューブレスシステム。幅広い製品レンジが出揃っている満を持して登場したUSTを用いたロード用チューブレスシステム。幅広い製品レンジが出揃っている
マヴィックのロードチューブレスシステムが発表されたのは、6月20日に東京都内で行われたメディア・ショップ向け新製品展示会において。2017年にマヴィックがロードUSTを発表したニュースは、驚きをもって受け入れられた。なぜ今なのか、なぜチューブレスなのか。そこにはWTS(ホイールタイヤシステム)を運用するマヴィックだからこそ成し得るテクノロジーの裏付けがあった。

マヴィックがチューブレスの開発に着手したのは1999年のこと。タイヤ業界のビッグ2であるミシュラン、ハッチンソンと共同開発が行われ、MTB用は今にも続く源流を作ったものの、ロードに関してはクリンチャーの作業性とチューブラーの乗り心地を共に獲得することは当時の技術では難しく、日の目を見ることはなかった。

現在は各社からロード用チューブレス/チューブレスレディホイールやタイヤが発売され、チューブが無いことによる優れた乗り心地や転がり抵抗、パンクリスクの低減など各種メリットこそ一般に知れ渡ったものの、タイヤ脱着の煩わしさが原因となりユーザーが増えていかない現状がある。

東京都内で開催されたメディア向け展示説明会東京都内で開催されたメディア向け展示説明会 フランス本社のプロダクトマネージャー、マキシム・ブルナン氏とSkypeを繋いで質疑応答が行われたフランス本社のプロダクトマネージャー、マキシム・ブルナン氏とSkypeを繋いで質疑応答が行われた

精密に設計されたリム。マヴィックが誇るハイレベルな製造技術が製品化に結びつけた精密に設計されたリム。マヴィックが誇るハイレベルな製造技術が製品化に結びつけた
それら全ての問題を解決し、タイヤ交換が容易で、安全かつ軽い乗り心地のタイヤとホイールをもう一度目指せないものか。そうして2000年代初期では形となっていなかった技術をフル投入して完成を見たのが、今回披露された特許取得のマヴィックロードUSTシステム。ホイールとタイヤを開発できる利点を生かし、そのマッチングを限りなく高めることが至上命題だったという。

ビード直径はETRTO(エトルト)規格の621.95±0.50mmに適合するものだが、マヴィックは誤差をETRTOよりも厳しい±0.35mmに設定。この詳細値に合わせてリムサイドウォール高を5.2mmにすることで気密性を一躍高めたほか、タイヤを装着しやすくするためにリムセンターグルーブ(溝)の深さやアールを、不意な衝撃やパンク時に外れにくくするためにはグルーブ両側に設けたハンプの高さをコンマmm単位で徹底的に追及している。これはSUP、FORE、ISMなど独自のアルミ整形技術を煮詰めてきたマヴィックだからこそ成し得た精密な数値であり、開発においては数十ものプロトタイプを製作し、R&Dを繰り返したという。

キャノンデール・ドラパックの一部選手が個人TTで実戦投入したComete Pro Carbon SL USTキャノンデール・ドラパックの一部選手が個人TTで実戦投入したComete Pro Carbon SL UST カーボンモデルにはリムテープが使われるカーボンモデルにはリムテープが使われる

ずらりと揃ったUSTホイール。カーボンからアルミまで様々なニーズに応えるラインアップが揃うずらりと揃ったUSTホイール。カーボンからアルミまで様々なニーズに応えるラインアップが揃う 「従来のチューブレスとは全く違う、非常に使いやすく優秀なシステムになっています」「従来のチューブレスとは全く違う、非常に使いやすく優秀なシステムになっています」


また、チューブレスはチューブドに対して空気を充填すると、スポークテンションのずれ幅が大きいというデメリットがあるため、それを前提にテンションを高めてホイールを組んである。これによって運用時のずれ幅を最小限にキープできるのだ。

マヴィックのロードUSTはエアロ系のComete、ファスト&ライトのCosmic、エンデュランス系のKsyrium、そしてオールロードシリーズ、更にはOpen Proと多岐にわたって登場しており、今後はプロ選手御用達のハイエンド品Cosmic Ultimateなどにも波及していくという。なおカーボンモデルにはFOREテクノロジーが用いられていないため、リムテープが必要だ。

携帯用ポンプでも簡単にビードが上がった。チューブレスは運用が難しいというイメージを覆す存在に成りうる携帯用ポンプでも簡単にビードが上がった。チューブレスは運用が難しいというイメージを覆す存在に成りうる 比較のために用意された各社のチューブレス対応ホイールとタイヤ比較のために用意された各社のチューブレス対応ホイールとタイヤ

小笠原崇裕さんの注目はKsyrium Pro Disc UST。「MTBライダーならチューブレスのメリットは良く分かっているはず。ネックは使いづらさのみだったので、そこを解消したマヴィックのロードUSTシステムは大きな可能性を秘めていると思います」小笠原崇裕さんの注目はKsyrium Pro Disc UST。「MTBライダーならチューブレスのメリットは良く分かっているはず。ネックは使いづらさのみだったので、そこを解消したマヴィックのロードUSTシステムは大きな可能性を秘めていると思います」
対を成すタイヤとしては「YKSION PRO UST」1種類がデビューしている。こちらもホイールとの密着度を上げるべく、ビード寸は他ブランドよりも誤差を少なく、かつビード剛性を上げたことが特徴。コンパウンドはハッチンソンとの共同開発品であり、既存のYKSION PROよりもソフトにすること、そしてチューブレスならではのメリットを組みわせることで転がり抵抗と乗り心地の改善を見た。

また、従来は前後専用タイヤだったが、新素材や新技術を投入することでバランスを高めたため、前後共通仕様に変化したことも話題の一つ。トータル性能が高くなったことで空気圧設定がシビアとなり、17cリムでは上限7bar、19cリムでは上限6bar、最低5barとなっているため使用上は注意したい。展開サイズは25mmと28mmの2種類だ。

スペイン発祥で東京にも店舗を構えるキャンディーショップ「papabubble」の特注品スペイン発祥で東京にも店舗を構えるキャンディーショップ「papabubble」の特注品 マヴィックロゴのプチケーキも用意されたマヴィックロゴのプチケーキも用意された


会場では実際に、ロードUSTシステムを体感できる展示が行われた。筆者も手にとってみたが、タイヤの脱着はおおよそ一般的なクリンチャーと変わらないほど簡単で、ビード上げ作業にしてもコンプレッサーやタンク式チャージャーは一切不要。ビードをきちんと落とし込めば一般的なフロアポンプで十二分だし、携帯式ミニポンプでも2〜2.5barほどまで充填すれば問題なくビードが上がり、大変驚かされた。

これならば出先でのパンク修理を気にすることがないし、クリンチャーと比べて予備チューブを持たずに、もしくは本数を抑えることができるというメリットも受けられるだろう。今回は試乗が叶わなかったものの、試乗用ホイールが届き次第インプレッションを行うため、続報を楽しみにしておいて欲しい。ショップには7月中旬以降デリバリーが開始される予定だ。



マヴィック ロードUST対応ホイール
アルミモデル:

Ksyrium Pro Disc
Ksyrium Pro
Ksyrium Elite Disc
Ksyrium Elite
Allroad Pro Disc
Allroad Elite Disc
Allorad Elite UB
Open Pro UST
Open Pro Disc

カーボンモデル
Comete Pro Carbon SL Disc
Comete Pro Carbon SL
Cosmic Pro Carbon SL Disc
Cosmic Pro Carbon SL
Cosmic Elite Disc
Cosmic Elite
Ksyrium Pro Carbon SL Disc
Ksyrium Pro Carbon SL

初回発売モデル
Ksyrium Pro UST(ペア重量1420g、ペア価格130,000円)
Ksyrium Elite UST(ペア重量1490g、ペア価格85,000円)

マヴィック YKSION PRO USTタイヤ
タイヤ幅:25mm、28mm
ケーシング:127TPI、ナイロン耐パンクブレーカー、USTレディ
重量:260g(25mm)、290g(28mm)
価格:7,500円(税抜)

text&photo:So.Isobe
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