6月4日にクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)が開幕する。フルームやポート、コンタドールといったマイヨジョーヌ候補の他、別府史之や新城幸也も出場するツール前哨戦をプレビューします。



ラルプデュエズを含む後半の3連続難関山岳ステージで決着

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017 image:A.S.O.一般的に「ドーフィネ」として呼ばれるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、2010年からツールと同じA.S.O.(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)が主催している8日間のステージレース。「クリテリウム」の名前がついているものの、レース形式はクリテリウムではない。

1947年に第1回大会が開催され、長年地元新聞紙のドーフィネ・リベレ社によって運営されてきた。その名の通りレースの舞台はフランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)で、「ミニ・ツール」と形容されるほど内容の濃いステージレースだ。

何しろ2012年と2013年、2015年、2016年はこのドーフィネの総合優勝者がツールの総合優勝に輝いており、マイヨジョーヌ争いを占う最高のリハーサルの場となる。ツールの前哨戦と呼ばれるだけに、オールラウンダーたちの脚試しに最適な山岳ステージや個人タイムトライアルが用意されているのが特徴だ。

2017年の第69回大会はロワール県のサンテティエンヌをスタート。初日は終盤にかけて3級山岳ロシュタイエ(全長3.4km/平均5.4%)を含む15kmの周回コースを3周する。残り7km地点でピークを迎えるこの3級山岳で生き残ったスプリンターもしくは登りで飛び出したアタッカーによるリーダージャージ争奪戦になるはずだ。

スプリンター向きの第2ステージと第3ステージを経て、第4ステージの23.5km個人タイムトライアルでリーダージャージはTTスペシャリストの手に渡るだろう。プロフィールを見ると一見平坦コースだが、前半と後半にそれぞれ高低差100mほどの登りがある。スプリンター向きの第5ステージが終わると、残る3ステージはアルプスの山岳地帯を走る難関山岳コースだ。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第4ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第4ステージ image:A.S.O.クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第6ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第6ステージ image:A.S.O.
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第7ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第7ステージ image:A.S.O.クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第8ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第8ステージ image:A.S.O.

第6ステージの残り15km地点に登場する超級山岳モン=デュ=シャ(全長8.7km/平均勾配10.3%)は今大会最強の登りと言っていい。平均勾配が10%を超え、中盤にかけてコンスタントに14%や15%の急勾配区間が登場する難関峠であり、山頂フィニッシュではないものの集団は完全に破壊されるだろう。

そして第7ステージには、ドーフィネには2010年以来2回目の登場となるラルプデュエズの山頂フィニッシュが設定されている。ラルプデュエズと言えばスイッチバックが連続する南側からの登坂が有名だが、今回は超級山岳サレンヌ峠(全長15.3km/平均6.9%)を経て東側からアプローチする新たなレイアウトだ。サレンヌ峠と言えば、ラルプデュエズを2回登った2013年ツール・ド・フランス第18ステージに下り区間として登場している。大会コースディレクターのジル・マニャン氏は「ラルプデュエズの山頂フィニッシュの話が持ち上がった際、サレンヌ峠から登る新しいフォーマットを試すことでレースに新たな風を吹かすことができると思った。スイッチバックが続く正面からのラルプデュエズ登坂ではなくサレンヌ峠を経由することで、全長19kmもの長い登りが生まれる。勾配が変化するためリズムを掴みにくい登りだ。慣れ親しんだ残り4km地点からの登りが始まるまでには下り区間もあり、伝統的な登りよりも難易度は高いと自信をもって言える」と語っている。残り30kmを切ってからサレンヌ峠の長い登りが始まり、頂上通過後のアップダウンを経て2級山岳ラルプデュエズ(全長3.7km/平均7.2%)でフィニッシュを迎える。

8日間の大会を締めくくる第8ステージには、距離が115kmと短いものの、4つの難関峠が登場。1級山岳セジー峠、2級山岳アラヴィ峠、1級山岳コロンビエール峠を立て続けにクリアし、最後は超級山岳プラトー・ド・ソレゾン(11.3km/平均9.2%)を駆け上がる。マニャン氏が「平坦区間が1メートルもない濃度の高い山岳ステージであり、混沌とした戦いになるのは間違いない」と自信を見せるこのアルプスステージで第69代チャンピオンは誕生する。


クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017ステージリスト
6月4日(日)第1ステージ サンテティエンヌ〜サンテティエンヌ 170.5km
6月5日(月)第2ステージ サンシャモン〜アルラン 171km
6月6日(火)第3ステージ ルシャンボン=シュル=リニョン〜チュラン 184km
6月7日(水)第4ステージ ラトゥール=デュ=パン〜ブルゴワン=ジャイユー 23.5km(個人TT)
6月8日(木)第5ステージ ラトゥール=ド=サルヴァニー〜マコン 175.5km
6月9日(金)第6ステージ ヴィラール=レ=ドンブ〜ラモット=セルヴォレックス 147.5km
6月10日(土)第7ステージ アオスト〜ラルプデュエズ 168km
6月11日(日)第8ステージ アルベールヴィル〜プラトー・ド・ソレゾン 115km


フルームやポート、コンタドール、バルベルデ、バルデら勢揃い

スタートラインに並ぶのは18あるUCIワールドチームにデルコ・マルセイユKTM、ディレクトエネルジー、コフィディス、ワンティ・グループグベルトのワイルドカード枠UCIプロコンチネンタルチームを加えた合計22チーム。

注目は何と言っても2013年、2015年、2016年にドーフィネとツールを制しているクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)だ。ドーフィネ3連覇とツール3連覇がかかったフルームは総合18位に終わった4月のツール・ド・ロマンディ以来のレース出場。テネリフェで高地トレーニングを行っていたフルームは「この時期になるといつも本格的な仕事が始まる気持ちになる。チームメイトたちとテネリフェでの内容の濃いトレーニングを積み、夏のチャレンジに向けて準備は整っている。トレーニングの成果を出す時がきた」とコメントしている。

「今年のドーフィネは例年以上に強力なライバルが揃っているので、大きなチャレンジになるのは間違いない」とフルームが警戒する通り、第69回大会にはフルーム以外にもトップレーサーが集結する。フルームが「最も警戒する相手」と名指しているのが元チームメイトのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)だ。ツール・ド・ロマンディで総合優勝を飾っているポートもフルーム同様に長いトレーニング期間を経て久々のレース出場となる。

クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji

ツール制覇に闘志を燃やすアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)は、今シーズン出場した5つのステージレース(アンダルシア、アブダビ、パリ〜ニース、カタルーニャ、パイスバスコ)で総合2位を4回経験。34歳になった今も全盛期のフォームを維持しているが、あと一歩のところで勝てないレースが続いている。

コンタドールより3つ年上の37歳アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は今シーズン絶好調。今シーズン3つのステージレースで総合優勝し、ラ・フレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで優勝。ドーフィネでは2008年と2009年に総合優勝を飾っている。ツールにはジロ総合2位のキンタナとダブルエース体制で挑む予定だ。

アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo: TDWsportアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:TDWsport

マイヨジョーヌに最も近いフランス人選手とされる昨年ドーフィネ総合2位&ツール総合2位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)や昨年ドーフィネ総合3位ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)も総合優勝候補。昨年グランツールレーサーとしてブレイクしたエステバン・チャベス(コロンビア)とロマンディ総合2位サイモン・イェーツ(イギリス)を揃えるオリカ・スコットも強力だ。膝の故障でジロをパスしたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がこのドーフィネでレースに復帰する。

前半の平坦ステージではアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)やソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)らが火花を散らす。もちろん地元フランスのナセル・ブアニ(コフィディス)、ブライアン・コカール(ディレクトエネルジー)、アルノー・デマール(エフデジ)の御三家が海外勢に待ったをかけるだろう。

日本からは別府史之(トレック・セガフレード)と新城幸也(バーレーン・メリダ)が出場する。ベルギーツアーからの連戦となる別府は2013年から毎年欠かさず出場しており、これが5回目の出場。タイでの個人トレーニング合宿を終えた新城は2009年と2011年に続く3回目の出場だ。

アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) photo:TDWsportアルノー・デマール(フランス、エフデジ)アルノー・デマール(フランス、エフデジ) photo: TDWsport
別府史之(トレック・セガフレード)別府史之(トレック・セガフレード) photo:TDWsport新城幸也(バーレーン・メリダ)新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:TDWsport

レースの模様は連日Jsports4にてライブ中継される。詳しくはJsports放送予定ページ(外部リンク)へ。

text:Kei Tsuji

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