アドリア海を見下ろす丘の上の町ペスキチにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第8ステージは4名が逃げ切る展開。フィニッシュに至る登りで逃げメンバーを突き放したゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)がステージ優勝に輝いた。



モルフェッタの港に置かれたスタート地点モルフェッタの港に置かれたスタート地点
ジロ・デ・イタリア2017第8ステージジロ・デ・イタリア2017第8ステージ image:RCSsportジロはイタリア半島の東に広がるアドリア海に出た。189kmコースの前半は真っ平らだが、後半は山がちな半島をぐるりと回るためアップダウンの連続。2級山岳モンテ・サンタンジェロ(全長9.6km/平均6.1%)と4級山岳コッパ・サンタテクラ(全長7.6km/平均4.2%)を経て、最後はアドリア海を見下ろす崖の上に作られたペスキチの町を駆け上がる。難易度3つ星の中級山岳ステージは逃げ向きであり、今大会ここまでの中で最も激しいアタック合戦が繰り広げられた。

どのチームも少なくともメンバー1名を逃げに送りたいため、最初の1時間の平均スピードは53.8km/hをマークする。長時間に及んだアタックとカウンターアタックの末に形成されたのは13名の大きな逃げグループだった。

ヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・ハンスグローエ)やアレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)、クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)、ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)、イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)を含む13名の逃げグループには、遅れてルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)、グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)がジョイン。こうして先頭は16名に人数を増やし、メイン集団を引き離しにかかる。

しかし逃げに選手を送り損ねたガスプロム・ルスヴェロが抵抗したためメイン集団のペースは落ちず、タイム差が2分以下に押さえ込まれた状況でレースは進む。ハイスピードのまま2級山岳モンテ・サンタンジェロの登りが始まると逃げグループは崩壊し、先頭ではLLサンチェスが独走を開始した。

ハイスピードなアタック合戦の末に形成された16名の逃げグループハイスピードなアタック合戦の末に形成された16名の逃げグループ 逃げグループを牽引するイーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)逃げグループを牽引するイーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
2級山岳モンテ・サンタンジェロを登るメイン集団2級山岳モンテ・サンタンジェロを登るメイン集団
2級山岳モンテ・サンタンジェロを先頭で登るルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)2級山岳モンテ・サンタンジェロを先頭で登るルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) カウンターアタックで飛び出したクレメン・シェヴリエ(フランス、アージェードゥーゼール)カウンターアタックで飛び出したクレメン・シェヴリエ(フランス、アージェードゥーゼール)
クイックステップフロアーズがメイン集団をコントロールするクイックステップフロアーズがメイン集団をコントロールする
アドリア海を見下ろ2級山岳モンテ・サンタンジェロをLLサンチェスが快調に登りきったその後方では、メイン集団内でカウンターアタックが連発する。メイン集団から新たに飛び出したクレメン・シェヴリエ(フランス、アージェードゥーゼール)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)、ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、イヴァン・ロフニー(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)らが、オリジナル逃げメンバーを吸収しながら追走グループを形成し、2級山岳の下り区間で先頭LLサンチェスを吸収。こうして15名の逃げグループが再編成されると、ようやくレースは落ち着きを見せた。

逃げグループとメイン集団のタイム差が4分を超えたため、暫定的にマリアローザは総合2分10秒遅れのコンティの手に。しかしクイックステップフロアーズの集団コントロールによってタイム差は縮まり、残り30kmの時点で3分まで縮小。先頭ではセレクションがかかり、ヴィスコンティ、LLサンチェス、ミュールベルガー、コンティ、イサギレの5名に絞られる。

その後もタイム差は縮小を続け、残り20km地点でタイム差が2分を切ったためマリアローザは暫定でボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)の手に戻る。総合成績には影響しないが、逃げ切りステージ優勝が濃厚となった先頭5名。イサギレとヴィスコンティのアタックによってミュールベルガーが脱落したものの、コンティとLLサンチェスは千切れない。先頭4名(ヴィスコンティ、コンティ、イサギレ、LLサンチェス)のままフィニッシュ地点ペスキチの町に差し掛かった。

クイックステップフロアーズの集団コントロールによってタイム差は広がらないクイックステップフロアーズの集団コントロールによってタイム差は広がらない
先頭グループを形成するゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)ら3名先頭グループを形成するゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)ら3名 アタックを仕掛けて飛び出すヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)とゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)アタックを仕掛けて飛び出すヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)とゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)
ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)の落車とともに先頭に立つゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)の落車とともに先頭に立つゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)
残り1.5km地点から始まる登りは平均勾配5.7%で、最終ストレートは最大12%のパンチの効いたもの。登り始めから積極的にペースを上げたコンティだったが、残り1kmアーチを切ってすぐの鋭角コーナーで前輪を滑らせて落車してしまう。代わって先頭に出たイサギレがダンシングでペースを上げると、LLサンチェスとヴィスコンティとの距離は広がっていった。

ヴィスコンティの追い上げも届かず、最後まで軽快なダンシングを続けたイサギレが独走でフィニッシュラインに飛び込んだ。グランツール初勝利を飾ったバスク出身の29歳は「ハイスピードでとても厳しいステージだったけど、逃げる作戦が吉と出た。ヴィスコンティが最も危険な存在だと思っていたので、彼を振り切ることができて良かったよ。今日自分に巡ってきたチャンスを逃さず、しっかりとものにできたことを嬉しく思う」とコメントする。イサギレはバーレーン・メリダに所属する弟ホン・イサギレとともに山岳を得意とするオールラウンダーで、今年パリ〜ニース総合4位。ジロ後半の山岳ステージではナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)の重要なアシストを担う。

残り1kmで仕掛けたゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)が勝利残り1kmで仕掛けたゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)が勝利
白壁が美しいペスキチの町並みを進むメイン集団白壁が美しいペスキチの町並みを進むメイン集団

一方のメイン集団は、残り6km地点の登りを利用してミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)がアタックを仕掛けて飛び出す展開。一時的に15秒のリードを得たランダだったが、エフデジを中心にした総合系チームの追撃によって吸収される。エフデジが登りでハイペースを作り、最後はマイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)を先頭に12秒遅れでフィニッシュした。マリアローザのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)を含め、総合上位陣はタイムを失うことなく中級山岳ステージを走り終えている。

12秒遅れの集団前方でフィニッシュするボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)ら12秒遅れの集団前方でフィニッシュするボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)ら
ステージ優勝を飾ったゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)ステージ優勝を飾ったゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター) マリアローザを着てブロックハウスに挑むことになったボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)マリアローザを着てブロックハウスに挑むことになったボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)


ジロ・デ・イタリア2017第8ステージ結果
1位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)                4h24'59"
2位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)        +05"
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)               +10"
4位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)             +12"
5位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
6位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
9位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)
10位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)

マリアローザ 個人総合成績
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     38h21'18"
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                 +06"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)                +10"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
6位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
9位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)

マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)     191pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)      160pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             129pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)           44pts
2位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)       23pts
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)              18pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)     38h21'18"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)               +10"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)

チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ      115h04'41"
2位 モビスター              +27"
3位 キャノンデール・ドラパック      +30"

text&photo:Kei Tsuji in Peschici, Italy